銀行業 第7回:銀行業における主な経営指標

EY新日本有限責任監査法人 銀行・証券セクター
公認会計士 坂 岳人

1. はじめに

銀行業は、第2回で触れたとおり財務諸表の形式が一般事業会社のものと大きく異なることや、業種特有の規制があることから、財務諸表の分析にも銀行業特有の指標を使用します。

本稿では、銀行業の財務諸表の分析における主要な指標を解説します。なお、指標によっては様々な算出方法が存在するため、代表的なものを示しています。

2. 収益性の指標

銀行本来の業務から生じた利益を示す主な指標として、下記の4つがあります。

一般事業会社の売上総利益に相当する指標として「業務粗利益」があり、銀行本来の業務の収益である「資金運用収益」、「役務取引等収益」、「特定取引収益」及び「その他業務収益」から、対応する費用である「資金調達費用」、「役務取引等費用」、「特定取引費用」及び「その他業務費用」を控除したものです。

また、本業での業績を表すための指標として「業務純益」があり、業務純益から景気動向等に左右される一時的要因により生じた損益を除いた「コア業務純益」や、さらに投資信託の解約損益を除いた「コア業務純益(投資信託解約損益除く)」も、銀行の安定的な収益性を示す指標として一般的に使用されています。

業務粗利益=資金運用収益-資金調達費用+役務取引等収益-役務取引等費用+特定取引収益-特定取引費用+その他業務収益-その他業務費用
業務純益=業務粗利益-経費-一般貸倒引当金繰入額
コア業務純益=業務純益+一般貸倒引当金繰入額-国債等債券関係損益
コア業務純益(投資信託解約損益除く)=コア業務純益-投資信託の解約損益

3. 効率性の指標

少ない経費で利益を獲得できているかを示す指標として「OHR(経費率)」があります。

OHR=経費÷業務粗利益

また、「ROA(総資産利益率)」や「ROE(自己資本利益率)」は、資産や資本をどれだけ有効に利用し利益を獲得できているかを示す指標で、一般事業会社においても広く使用されている指標ですが、銀行業では分子の利益として当期純利益を使用するほか、業務純益やコア業務純益を使用することもあります。

また、銀行は自己資本比率規制により、リスク量に応じた自己資本を確保する必要があり、低リスクで高い収益を生む投資を行うことが重要となります。このような銀行の特徴を踏まえ、「RORA(リスクアセット利益率)」という指標も使用されています。RORAを高めることで、適正な自己資本比率を維持しながら、ROEを高めることにつながります。

ROA=利益÷総資産
ROE=利益÷純資産
RORA=利益÷リスクアセット

4. おわりに

本稿では、銀行業の財務諸表の分析における主要な経営指標について概説しました。これらの指標の多くは、各銀行のディスクロージャー誌等で投資家向けに公表されています。なお、財務諸表の分析においては、単独ではなく複数の指標を組み合わせ、各銀行のビジネスモデルや市場環境等とあわせて総合的に評価することが必要です。



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