コーポレートガバナンス・コード ~企業のサステナブルな成長と中長期的な企業価値向上に向けた「攻めのガバナンス」へ~ 2026年7月に改訂

コーポレートガバナンス・コード ~企業のサステナブルな成長と中長期的な企業価値向上に向けた「攻めのガバナンス」へ~ 2026年7月に改訂

2026年7月のコーポレートガバナンス・コード 改訂により、プリンシプルのコンパクト化とともに、より具体的に中長期的な企業価値向上を見据えた戦略の観点から、投資と実行によるサステナブルな成長への挑戦が問われます。


要点

  • 総原則数を大幅に削減し、注力すべき主要な原則に絞り込み、単なる形式的対応から、より本質的な具体的かつ洗練されたコーポレートガバナンスにおける取組みの開示が求められている。
  • 企業の持続的成長と中長期的価値向上に資する攻めの経営基盤として位置づけ、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の適切な配分と投資から、積極的な成長戦略の推進が期待される。
  • 取締役会は株主の信任に応えるため、会社の戦略的方向性の提示や経営の監督と説明責任を担い、また取締役会を支える情報提供・支援体制の強化が必要とされる。 

1. CGCは2026年7月に3回目の改訂を実施

コーポレートガバナンス・コード(以下CGC)は、日本の金融庁と東京証券取引所において、2015年に策定された上場企業向けの指針で、企業が持続的成長と中長期的な企業価値向上を実現するための主要原則を取りまとめ、上場企業は、このコードを踏まえた報告書を提出・開示することが求められており、これにより企業統治(コーポレートガバナンス、以下ガバナンス)の透明性・公正性を高めることを目的としています。今回3回目となる改訂案が、金融庁および東京証券取引所での「有識者会議」により取りまとめられ(2026年4月10日公開)、パブリックコメントを踏まえた修正の下、2026年7月に改訂が実施されました。

お問い合わせ

この記事に関するお問い合わせは、こちらまでご連絡ください。

2. サステナブルな成長と中長期的な企業価値向上に向けた「攻めのガバナンス」

今回の改訂では、特に、日本企業では内部留保としての現預金比率が欧米企業に比べ高止まりしているとの指摘から、ROEや資本効率向上の観点からも、企業の「稼ぐ力」強化を後押しすることが中心となります。しかし、この要請は短期的な株主還元の強要ではなく、ここで求められているのは、中長期的な観点での「攻めの投資」への資源配分、すなわち、技術・研究開発などの知的資本、人的資本、ブランドなどの社会関係資本や事業の基盤となる環境・自然資本など、企業の本来の強みである、無形の非財務資本/資産に対する認識それらへの投資・活用を通じて企業がサステナブルに成長する力を高めることにあります。経営陣は自社の資本コストを意識した資本政策の下、時間軸も踏まえた上で、「成長のために、自らのアセット/キャピタルをどうアロケート(配分)するか」という課題を取締役会で絶えず議論し、実行し、投資家に透明性を持って説明するという責任に対応する体制強化が強く求められています。企業ではより資本効率を高め、自社の「稼ぐ力」(=収益性)を高める、中長期的な視点での成長戦略と具体性のある実行が必要な中、EYも、企業の強みから描くサステナブルな成長戦略を描く支援をより強化していきます。

3. 改訂案での3つの変更点

今回の2026年のCGC改訂について、大きく3つに整理し説明します。

(1) CGCスリム化と投資家との対話を促す実質的な開示

プリンシプル・ベースの精神に立ち返り、投資判断への有用性と企業負担のバランスに配慮する観点か ら、従来83あった各種原則の数を30へ大幅に削減しています。これにより、より注力すべき主要な原則に絞り込み、単なる形式的対応から、より本質的な具体的かつ洗練されたガバナンスの取組みの開示が求められています。さらに、グローバルでの投資家のアクセス性を重視し、英語による情報開示も引き続き重要視されています。特に、海外投資家比率を踏まえ、合理的な範囲で英語情報の提供を進めるべきとの原則が明示されています。また、サステナビリティ情報の国際基準(TCFDやISSB基準)と整合する日本でのSSBJ基準によるサステナビリティ情報開示の開始も見えてきている中、サステナビリティ関連の規定は統合・整理されています。

(2)「守り」から「攻めのガバナンス」へ「稼ぐ力」強化への責務明確化

2026年改訂では、「企業の持続的成長と中長期的価値向上のための攻めの経営基盤」としてガバナンスを位置づける考え方がより明確に打ち出されました。これは不祥事防止・リスク回避策の「守りのガバナンス」にとどめず、健全な企業成長を促し、そのための挑戦に対する経営判断やリスクテイクを後押しする「攻めのガバナンス」を実現するという理念が示されています。経営資源(ヒト・モノ・カネ)の適切な配分と投資、特に現金等の資産の活用による成長投資を促すことも2026年改訂の大きなテーマです。内部留保する現預金や金融資産・実物資産を成長投資に戦略的に活用しているかを取締役会主導で、検証し、説明することが新たに示されました。自社の「目指す将来の成長」を構想し、その実現に向けた成長投資(設備投資、研究開発、人的資本・知的財産などの無形資産への投資等)の計画や事業ポートフォリオ見直し等について具体的に何を実行するのかを説明し、自社の経営資源配分が戦略に照らし適切かを継続的に検証・開示・説明することが、取締役会の責務として明示されています。ガバナンスの下、透明性・公正性を確保した迅速な意思決定と積極的な成長戦略の推進を「守り」と合わせて両立して推進することが強調されています。

サステナビリティ(環境・社会)や人的資本・無形資産(知的資本・社会関係資本など自社の強み)に関する取組みも、ガバナンスにおける重要事項として明確化されました。従来散在していたサステナビリティ関連規定が整理され、中長期的視点からサステナビリティ課題に能動的に取り組み、基本方針を策定・実行することが明記されています。また、企業内のジェンダーや多様性確保なども踏まえた人的資本、人的資本に連動した知的財産・無形資産などの拡充に資する投資とそれらの活用は成長戦略の重要要素として、適切な情報開示と説明が求められます。企業がサステナブルな成長に不可欠な人材・技術・ブランド等の無形資産に対する投資と活用を成長戦略につなげるガバナンスの一環として、サステナビリティの視点を経営に取り入れる重要性が明確化されています。

(3) 取締役会の役割・独立性強化と説明責任・事務局機能の強化

取締役会の責務と機能の強化は、2026年改訂の重要な柱の1つです。取締役会は受託者として株主の信任に応えるため、会社の戦略的方向性の提示や経営の監督など中核的な役割を果たすべきことが再確認され、取締役会関連の規定の主要部分を原則として格上げし、監督機能を具体的に強化するよう示されました。特に独立社外取締役の「質」と「量」両面での充実、独立性の担保など独立性を高める点が、強調されています。より、独立社外取締役の経営に対する質的貢献や客観的監督が重要視されてきています。また、取締役会を支える「事務局(コーポレートセクレタリー)」の機能強化が初めて明文化され、取締役への情報提供・支援の中枢を担う組織の強化と実質的な審議活性化が期待されます。 

株主との建設的な対話は、CGCの基本原則の1つ、さらには目的としても一層重視されます。経営陣や取締役(社外取締役を含む)は、株主の懸念・関心に耳を傾け、経営方針を丁寧に説明し理解を得る努力を行うことが本改訂でも繰り返し強調されています。議案が可決された場合でも、株主総会で相当数の反対があった会社提案議案に対し、理由を分析し、対話により経営の改善策や方針について説明を検討する必要があります。特に少数株主との利益相反リスクがあるケースなどでは、懸念への対応方針を公表するなど、少数株主の意見を真摯(しんし)に受け止め、適切に説明するガバナンスが求められます。

4. 求められる本質的な対応はサステナブルな成長戦略の説明

CGCの特徴として、法規制ではなく、原則主義(プリンシプルベース)により、各企業が「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守もしくは説明)」の観点から主体的に情報開示と建設的な投資家との対話を通じて健全な経営を促す仕組みとなっています。CGCに法的強制力はないものの、会社法とは補完的な関係にあり、法律で定める最低要件に対し、法令を上回る自主的なベストプラクティスを示し行動を促す指針として提供され、経営の質的向上を促すことで法律を補完する役割を果たします。また、CGCはスチュワードシップ・コード(機関投資家向けの行動原則)と並び、資本市場における日本のコーポレートガバナンス改革の柱とされ、投資家と企業の双方に向けたコードが適切に機能することで、中長期での企業成長の観点から、両者の建設的対話による健全な資本市場の形成を担っています。

今回のCGCの改訂は2026年7月に実施され、上場企業は遅くとも提出期限の2027年7月末日までに、改訂に対応したコーポレートガバナンス報告書を提出することが求められる想定です。ただし、単なる開示にとどまらず、本改訂では、企業のサステナブルな成長の視点が求められ、特に直近で大きく価値が見直された日本の資本市場に、熱い期待を寄せる海外投資家も含めて、いかに日本の企業が経営の質を高め、企業価値の持続的向上に資する成長への「攻めのガバナンス」を実行できるかという点で、今後一層「経営」の手腕に対し注目を集めることになるでしょう。

参考文献

サマリー 

CGCの3回目の改訂により、企業のガバナンス)の強化による、企業の持続的成長と中長期的企業価値の向上に軸足を置いた「攻めのガバナンス」による積極的な企業成長に向けた戦略を打ち出すことが求められます。

お問い合わせ
この記事に関するお問い合わせは、以下までご連絡ください。

この記事について


EY Japan Assurance Hub

EY新日本有限責任監査法人が経営・経理・財務に携わる方に向けて企業会計・サステナビリティ開示情報の解説や経営インサイトをお届けします。