EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
サプライチェーンの透明性は企業価値や市場アクセスを左右する経営課題になりつつあります。EUバッテリー規則は原材料の責任ある調達と継続的なリスク管理を求めることで、企業の管理対象を製品からサプライチェーン全体へと広げています。
要点
電池需要の拡大に伴い、企業には製品そのものの適合性だけでなく、原材料調達に伴う人権・環境リスクへの対応も求められるようになっています。
2026年10月1日にEY新日本有限責任監査法人とインターテックジャパン株式会社が共催した「EUバッテリー規則(EUBR)Due Diligence対応最前線」には、多くの企業の皆さまにご来場いただきました。セミナーでは、EUバッテリー制度におけるデューデリジェンス(Due Diligence、以下DD)要求について、制度の全体像、第三者検証への備え、日本企業に求められる実務対応の観点から議論しました。
規則の特徴は、電池製品の性能や安全性等そのものの適合性確認だけでなく、コバルト、リチウム、ニッケル、天然黒鉛の原材料調達に伴う人権・環境リスクまで管理対象とする点にあります。企業にはリスクの特定、予防・軽減、モニタリング、情報開示を含む継続的なDDプロセスの構築が求められます。
こうした要求はEU域内で電池を上市する事業者だけで完結するものではありません。これらの事業者による規制対応を通じて、サプライチェーンを構成する日本企業にも情報提供や証跡管理が求められる可能性があります。そのため、日本企業にとっても、サプライチェーン全体を意識した対応が重要となります。
企業に求められるのは単なる情報収集ではなく、調達方針、リスク評価、是正措置、モニタリング、記録管理などを業務プロセスとして運用し、その内容を第三者に説明できる状態です。
DD対応で整備されるデータや証跡は、バッテリーパスポートやカーボンフットプリントなど、他のEU規制対応に関連する情報管理の基盤となり得ることが示されました。
DD義務の適用開始は2027年8月18日に延期されていますが、サプライチェーン全体を対象とした情報収集やリスク管理体制の構築には相応の準備期間が必要となるため、日本企業にとっても早期の対応が必要です。
EUBRのDD義務への対応では、まず「自社のどの法人が対象となるのか」「どの製品・原材料が対象となるのか」「どの水準まで対応すべきか」を整理する必要があります。その上で、自社の現状と規則要求とのギャップを把握し、実装戦略やロードマップを策定していくことが重要です。
一方で、EUBRは要求事項を定めているものの、具体的な実務方法までは規定していません。そのため企業には、法令要求や関連ガイダンスを踏まえながら、自社の既存ガバナンスや業務プロセスへ落とし込むことが求められます。EUBR対応の成否は、条文を理解することではなく、法令要求を実行可能な管理プロセスとして実装できるかに左右されます。
また、EUBRにおけるDD義務は、個別の調査や監査の実施にとどまるものではありません。企業には、方針策定、組織体制、トレーサビリティ、リスク分析、是正措置、苦情処理、モニタリング、情報開示を含むDDマネジメントシステムを、一体的な仕組みとして整備・運用することが求められます。また、そのDD方針については、独立した第三者による検証が求められます。
EUBR対応で構築したマネジメントシステムは、欧州森林破壊防止規則 (EUDR)や企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)をはじめとする他のサプライチェーンDD規制への対応基盤にもなり得ます。
当日は、自動車、電池、素材、商社など幅広い業界から多くの企業関係者が参加しました。
セミナー終了後の名刺交換会では、登壇者と参加者の間で活発な意見交換が行われ、サプライヤー情報の収集範囲や既存の人権DDとの違いなど、実務対応を見据えた質問が数多く寄せられました。「Notified Bodyの役割について理解が深まった」「EUBR対応の実務的なイメージを持つことができた」といった声も聞かれ、EUBR対応に対する関心の高さがうかがえました。
多くの参加企業が関心を寄せたように、企業が直面する課題は「制度を理解すること」ではなく、「自社として何から着手するか」を判断することです。対象範囲の特定やギャップ分析を早期に行い、実現可能なロードマップを描くことが、今後の対応を左右する重要な第一歩となります。EYでは、EUBRの対象性評価、ギャップ分析、実装ロードマップ策定から、マネジメントシステム構築および運用定着まで、一貫した支援を提供しています。
【共同執筆者】
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 シニア 方 毓
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 黄 ロディ
※所属・役職は記事公開当時のものです
EUバッテリー規則は企業に対して原材料調達から情報開示までを含むサプライチェーン全体のリスク管理を求めています。日本企業にも影響が及ぶ中、EYは今後もEUBR対応を支援してまいります。
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