EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之
2025年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税に関する会計基準」(以下「改正法人税等会計基準」という。)等に関する会計方針の変更の開示状況を知りたい。
企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)では、2018年2月に企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等(以下「企業会計基準28号等」という。)を公表し、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のASBJへの移管を完了した。その審議の過程では、次の2つの論点について、企業会計基準第28号等の公表後に改めて検討を行うこととしていた。ASBJへの移管完了後、これらについて審議を行い、2022年10月28日にASBJより改正法人税等会計基準等が公表された。
調査対象会社(186社)のうち、会計方針の変更に注記している会社を分析した。会計方針の変更の注記において、改正法人税法会計基準等及び実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第46号」という。)が注記されていたが、このうち、改正法人税等会計基準等に関する注記を行っている事例130社を対象に、当該会計基準等が財務諸表に与える影響に関する事項の開示状況を調査した。その結果が<図表1>のとおりであり、法人税等の計上区分及び子会社株式等の売却に係る税効果について、内容を記載しているが金額的影響はなしとする会社が大半を占めていた。このうち、調査対象会社において2024年3月期に早期適用の注記を記載している会社はなく、56社は注記を省略していると推測される。
また、改正法人税等会計基準等について注記を行っている事例130社に対して、2024年3月期(前期)の未適用の会計基準を記載しているかどうか、会社の重要性による注記の省略状況を調査した。その結果は、<図表2>のとおりであり、2025年3月期に会計方針の変更の注記を記載している事例のうち、全体で93.1%の会社が改正法人税会計基準等を2024年3月期(前期)において未適用の会計基準の注記として記載していた。
なお、会計方針の変更に関する注記に実務対応報告第46号を記載している会社は20社であったが、そのうち1社は具体的な影響額を記載していた。
分類 | 影響額 | 合計 | ||
金額あり | 軽微 | 影響なし(注2) | ||
①法人税等の計上区分のみ記載 | 1社 | 2社 | 4社 | 7社 |
②子会社株式等の売却に係る税効果のみ記載 | - | 1社 | - | 1社 |
①、②ともに記載 | 11社 | 4社 | 95社 | 110社 |
分類の記載なし | 1社 | 1社 | 10社 | 12社 |
合計 | 13社 | 8社 | 109社 | 130社 |
(注1)調査対象会社(186社)のうち、個別財務諸表のみ開示している3社は、個別財務諸表の注記を参照して集計した。
(注2)影響なしには、影響額への言及がなかった1社を含む。
2025年3月期の分類 | 2025年3月期に会計方針の変更の注記を記載)(①) | 左記のうち、2024年3月期に未適用の会計基準等の注記を記載(②) | 未適用の割合 | |||
評価中 | 軽微 | 影響なし | 小計 | |||
軽微 | 8社 | 8社 | - | - | 8社 | 100.0% |
金額あり | 13社 | 9社 | 2社 | - | 11社 | 84.6% |
影響なし | 109社 | 92社 | 5社 | 5社 | 102社 | 93.6% |
合計 | 130社 | 109社 | 7社 | 5社 | 121社 | 93.1% |
(旬刊経理情報(中央経済社)2025年9月20日号 No.1754「2025年3月期「有報」分析」を一部修正)
2025年3月期 有報開示事例分析
会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。