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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 吉田 剛
2025年3月期決算において、会社計算規則において個別に開示が要求されていない注記事項の会社法計算書類における開示状況を知りたい。
金商法の規定に基づいて上場会社等に提出義務が課されている有報では、「経理の状況」と呼ばれる箇所で連結財務諸表(作成している場合)及び財務諸表が掲記される。有報の作成は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」及び「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の規定に基づいて行われ、注記については、基本的に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表している企業会計基準等と整合的に規定されている。
一方、会社法の規定に基づいて作成される計算書類は、会社計算規則(以下「会計規」という。)の規定において記載すべき注記が明確化されている(会計規98条)。同条1項には、計算書類において注記すべき項目が列挙されているが、この時点ですでに有報の注記項目との間には差異が生じている。具体的には、例えば、退職給付に関する注記や企業結合に関する注記などは、計算書類では必須の注記事項とはされていない。また、税効果会計に関する注記も、個別の計算書類のみの注記が義務付けられ(会計規98条2項4号)、さらに、個別注記表に注記されるべき事項も、有報よりも簡略化された事項のみが明示的に規定されている(会計規107条)。
このように、有報に比して必須の注記項目が少ない計算書類ではあるが、会計規において明示的に規定されていない項目であっても、会社又は企業集団の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項であると判断した場合には、「その他の注記」として計算書類に注記されることとなる(会計規116条)。
実務的には、時間的な制約なども考慮した結果、会計規に規定された最低限の項目だけを注記するようなケースもあれば、株主への情報提供という面をより重視して、会計規に明示的に規定されていない事項についても注記している例がみられる。項目によって、計算書類における注記の有無が異なることから、次項にてこの点を詳細にみていく。
ここでは、分析結果のまとめを<図表>に示している。
項目によって、多くの会社が計算書類においても任意で開示している項目、ほとんどの会社が開示を行っていない項目に分かれるが、企業結合、減損損失、追加情報といった項目は50%超の開示割合となっている。また、全体的にみると、5年前の開示割合に比して、企業結合は20ポイント、減損損失は16ポイントの増加となっており、重要な注記項目については、時間的な制約がある中でも、積極的に計算書類において開示するという近時の企業の方針がみてとれる。
<図表>連結計算書類(※1)における注記の開示状況
項目 | 有報開示会社数(※2)(A) | 連結注記表注記会社数(B) | 開示割合 (B)÷(A) | 2020年3月期 開示割合(※3) |
企業結合 | 55 | 38 | 69.1% | 49.1% |
減損損失 | 109 | 63 | 57.8% | 41.3% |
税効果会計 | 183 | 7 | 3.8% | 3.1% |
退職給付 | 183 | 8 | 4.4% | 5.2% |
資産除去債務 | 57 | 6 | 10.5% | 7.9% |
土地再評価 | 49 | 46 | 93.9% | 87.5% |
未適用の会計基準等 | 183 | 4 | 2.2% | 5.1% |
追加情報 | 97 | 72 | 74.2% | - |
税率変更 | 182 | 26 | 14.3% | - |
(※1)連結計算書類を作成していない3社については、計算書類と有報の比較分析を実施している(計算書類で注記事項とされている税効果会計を除く。)。
(※2)有報開示会社数には、見出しのみを設けて、「該当事項はありません。」などと記載している会社は含んでいない。
(※3)2020年3月期の母集団は196社であった。母集団のベースは今回と同じJPX400であるが、インデックスに組み込まれる会社は適宜異動しているため、会社単位では一致していない。なお、追加情報と税率変更は往時に分析項目となっていなかったため、「-」としている。なお、当該割合の数値については、「2020年3月期「有報」分析」(中央経済社刊、旬刊経理情報2020年10月10日号(No.1591)、兵藤伸考、加藤大輔、駒田亮、中澤範之、大竹勇輝著)から引用している。
(「Disclosure & IR」(宝印刷D&IR研究所)2026年2月号(vol.36)「会社計算規則に規定されていない注記の会社法計算書類での開示状況~今後の会社法開示の動向を含む~」から抜粋し、一部修正)
2025年3月期 有報開示事例分析
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