2026年3月期 有報開示事例分析
第1回:総会前提出①(提出状況の分析)

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之

Question

2026年3月期決算において、定時株主総会前に有価証券報告書(以下「有報」という。)を提出した会社について知りたい。

Answer

1. 総会前提出の状況(前期比較含む)

【調査範囲】

  • 調査日:2026年8月
  • 調査対象期間:2026年3月期
  • 調査対象書類:有報
  • 調査対象会社:2026年3月31日決算の上場会社
     

【調査結果】

2026年3月期決算の上場会社2,178社を対象として、定時株主総会前の有報提出(以下「総会前提出」という。)状況を調査した。<図表1>のとおり、定時株主総会前に2026年3月期の有報を提出した会社は、1,928社(88.5%)と9割近くに達しており、2025年3月期に続き大幅に増加した。2024年3月期までは定時株主総会と同日又は翌日に有報を提出した会社が大半であったが、2年をかけて多くの会社が有報提出時期を定時株主総会前に前倒しした結果、総会前提出が大部分を占めるようになったことがわかる。なお、定時株主総会前に2025年3月期の有報を提出した会社1,310社が、2026年3月期に有報提出時期をさらに前倒ししたかを調査した結果は、<図表2>のとおりである。2025年3月期と2026年3月期の前倒し日数が変わらない会社が769社と最も多く、次いで多いのは1日前倒し日数が増えた158社であった。一方、有報提出時期を後倒しした会社も59社(4.5%)あるが、<図表1>のとおり、全体として定時株主総会前に有報を提出している会社が増えていることがわかる。

<図表1> 定時株主総会開催日と有報提出時期
 

有報提出時期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
会社数比率会社数比率会社数比率
定時株主総会開催より前42社1.8%1,310社57.9%1,928社88.5%
定時株主総会開催と同日1,119社48.7%462社20.4%121社5.6%
定時株主総会開催の翌日882社38.3%288社12.7%58社2.7%
定時株主総会開催の2日後47社2.0%22社1.0%7社0.3%
定時株主総会開催の3日後145社6.3%144社6.4%38社1.7%
その他(※1)65社2.8%38社1.7%26社1.2%
合計2,300社100.0%2,264社100.0%2,178社100.0%

(※1)定時株主総会開催の4日後以降に提出した会社及び調査時点で定時株主総会未開催の会社を含めている。
(※2)調査時点で有報未提出の会社は集計に含めていない。

<図表2> 前期に総会前提出した会社の前倒し日数
 

前倒し日数(※1)会社数比率
1日以上後倒し59社4.5%
前倒し日数変わらず769社58.7%
1日前倒し158社12.1%
2日前倒し91社6.9%
3日前倒し52社4.0%
4日前倒し41社3.1%
5日以上前倒し92社7.0%
その他(※2)48社3.7%
合計1,310社100.0%

(※1)たとえば、2024年3月期は総会6日前、2025年3月期は総会7日前に有報を提出した場合、1日前倒しとしている。
(※2)非公開会社への変更、集計時に有価証券報告書を未提出等の会社を含む。

2. 総会前提出の日数分析①

【調査範囲】

  • 調査日:2026年8月
  • 調査対象期間:2026年3月期
  • 調査対象書類:有報
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する1,928社(2025年3月期は1,310社)
    ① 3月31日決算である
    ② 2026年6月30日までに有報を提出している
    ③ 上場会社である
    ④ 総会前提出をしている

【調査結果】

調査対象会社が、定時株主総会の何日前に有報を提出したかを分析した結果は、<図表3>のとおりである。2026年3月期では、定時株主総会の前日に有報を提出した会社が958社(49.7%)と最も多く、定時株主総会の前日、2日前又は3日前に有報を提出した会社を合計すると約76%に達することから、ほとんどの会社では有報提出から定時株主総会までの日数は数日以内であった。ただし、定時株主総会の1週間(7日)以上前に有報を提出した会社は、202社(10.5%)まで増加しており(前期は44社)、8日前以上の会社も62社まで増えていることから、積極的に有報の提出を前倒ししている会社が増えていることがわかる。なお、定時株主総会開催の14日以上前に有報を提出した会社の一覧は、<図表4>のとおりである。

<図表3> 総会前有報提出から定時株主総会までの日数
 

有報提出時期2025年3月期2026年3月期
会社数比率会社数比率
定時株主総会開催の前日842社64.3%958社49.7%
定時株主総会開催の2日前206社15.7%309社16.0%
定時株主総会開催の3日前96社7.3%206社10.7%
定時株主総会開催の4日前75社5.7%111社5.8%
定時株主総会開催の5日前27社2.1%95社4.9%
定時株主総会開催の6日前20社1.5%47社2.4%
定時株主総会開催の7日前36社2.7%140社7.3%
定時株主総会開催の8日以上前8社0.6%62社3.2%
合計1,310社100.0%1,928社100.0%

<図表4> 総会の14日以上前に有報を提出した会社一覧
 

会社名提出日(前期)業種
株式会社アドバンテスト(※)35日前(2日前)電気機器
株式会社ソラコム(※)29日前(1日前)情報・通信業
株式会社ティラド24日前(7日前)輸送用機器
双日株式会社21日前(2日前)卸売業
株式会社ZOZO21日前(13日前)小売業
HOYA株式会社21日前(21日前)精密機器
株式会社IDホールディングス21日前(1日前)情報・通信業
西華産業株式会社19日前(7日前)卸売業
株式会社九州フィナンシャルグループ14日前(1日前)銀行業
株式会社阿波銀行14日前(7日前)銀行業
株式会社T&Dホールディングス14日前(14日前)保険業
東鉄工業株式会社14日前(1日後)建設業
SGホールディングス株式会社14日前(1日前)陸運業
玉井商船株式会社14日前(3日前)海運業

(※)株式会社アドバンテストと株式会社ソラコムは、定款変更により定時株主総会を7月に開催し、また、EDINET特例により、有報と事業報告を一体化して開示している。


3. 総会前提出の日数分析②

総会前提出が有報の提出前倒しと総会日の後ろ倒しのいずれで(又は双方で)達成されているのかを分析するために、2026年3月期に総会前提出した会社1,928社を対象に、まず2025年3月期と比較して、提出日と総会日の差が何日変動しているかという観点で会社数を集計した。そのうえで、各々の変動日数ごとの会社群で、提出日が平均何日変動しているか、総会日が平均何日変動しているか分析を行った。その結果は、<図表5>のとおりである。2025年3月期と比較して、10日以上総会日より提出日が早くなった会社は21社であった。これらの会社は、8日以上提出日を早めるとともに2日以上総会日を遅くしていた。このように、総会前提出を推進している会社は、提出日の前倒しと総会日の後倒しの双方の側面から定時株主総会の3週間前の提出を目指していることが推測される結果となった。

<図表5>総会日と提出日の変動分析 (※1)(※2)(※3)
 

前期比
①-②=③-④
提出日-総会日
2026 ①
提出日-総会日
2025 ②
提出日
2026-2025 ③
総会日
2026-2025 ④
会社数
(※4)△11~△31日△18日1日△10日9日17社
△10日△9日1日△8日2日4社
△9日△8日1日△8日1日8社
△8日△8日0日△7日1日24社
△7日△7日0日△6日1日43社
△6日△6日0日△5日1日79社
△5日△4日1日△5日0日69社
△4日△3日1日△4日0日125社
△3日△4日△1日△3日0日123社
△2日△2日0日△2日0日252社
△1日△2日△1日△2日△1日354社
0日△2日△2日△1日△1日769社
1日△3日△4日1日0日17社
3日△2日△5日2日△1日7社
5日△2日△7日3日△2日1社
小計1,912社
△2日△3日△1日△2日0日1,912社
2025年3月期は対象外の会社16社
合計1,928社

(※1)2026年3月期に総会前に有報を提出した会社1,928社を対象に2025年3月期との比較を実施している。
(※2)日付のマイナスは前倒し、プラスは後倒しである。例えば、「提出日-総会日2026=△18日」は、2026年3月期の有報提出日が株主総会日より、18日前であることを意味している。
(※3)①~④の日付は、全て平均値を記載している。
(※4)①~④は、平均値を記載している。なお、前期比(①-②=③-④)の平均値は△19日であった。

(旬刊経理情報(中央経済社)2026年9月20日号 No.1787「2026年3月期「有報」分析」を一部修正)


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