2026年3月期 有報開示事例分析 
第11回 インフレ関連の開示分析③(子会社為替換算)

EY新日本有限責任監査法人
兵藤 伸考

Question

2026年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の在外子会社等の収益及び費用の換算方法の開示状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2026年8月
  • 調査対象期間:2026年3月期
  • 調査対象書類:有報
  • 調査範囲:
    (1) 調査対象会社:以下の条件に該当する189社
    ① 2026年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ② 3月31日決算である
    ③ 2026年6月30日までに有報を提出している
    ④ 日本基準を適用している
    (2) 調査対象会社:以下の条件に該当する1,996社(2025年3月期は2,087社)
    ① 東京証券取引所、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所に上場している
    ② 3月31日決算である
    ③ 2026年6月30日までに有報を提出している
    ④ 日本基準を適用している

【調査結果】

1. 解説

連結財務諸表において、在外子会社等の収益及び費用は原則として期中平均相場による円換算額を付するが、決算時の為替相場による円換算額を付することも妨げないとされている(「外貨建取引等会計処理基準」三3)。

近年では、日米間の金利差の変動、各国の金融政策の方向性や為替介入等により為替相場の変動が大きく、特に、在外子会社等の収益及び費用について決算時の為替相場による換算方法を採用する会社にとっては、決算日の為替相場の一時的な変動状況によって、在外子会社等の損益計算書における円換算額に大きな影響を及ぼすこととなると考えられる。

そこで、2026年3月期決算における在外子会社等の収益及び費用の換算方法の開示状況について開示を分析した。

2. 開示状況の調査結果

(1) 会計方針に係る事例分析

調査対象会社(1)(189社)を対象に、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」において在外子会社等の収益及び費用の換算方法の記載状況を分析した結果は、<図表1>のとおりである。なお、調査対象会社のうち80社は在外子会社等の収益及び費用の換算方法について記載がない又は連結財務諸表を作成していない会社であった。

原則的な方法である期中平均相場による換算方法を採用する会社が90社(82.6%)と多かったものの、決算時の為替相場による換算方法を採用する会社も19社(17.4%)と一定数みられた。

<図表1>在外子会社等の収益及び費用の換算方法の記載状況
 

換算方法会社数比率
期中平均相場90社82.6%
決算時の為替相場19社17.4%
合計109社100.0%

(2) 会計方針の変更に係る事例分析

調査対象会社(2)を対象に、在外子会社等の収益及び費用の換算方法について会計方針の変更の注記における記載状況を分析した結果は、<図表2>のとおりである。

<図表2>会計方針の変更の注記における記載状況
 

変更内容前連結会計年度の遡及適用2025年3月期2026年3月期
会社数会社数
決算時の為替相場から期中平均相場への変更遡及適用している1社5社
遡及適用していない2社2社
合計3社7社

2026年3月期決算において会計方針の変更の注記として在外子会社等の収益及び費用の換算方法を変更していた事例は7社であり、いずれも在外子会社等の収益及び費用の換算方法を決算時の為替相場から期中平均相場へ変更した事例であった。

また、2025年3月期決算と比較して、在外子会社等の収益及び費用の換算方法を決算時の為替相場から期中平均相場へと変更した事例は4社増加しており、一時的な為替相場の変動による損益等への影響を緩和し、在外子会社の業績をより適切に連結財務諸表に反映させるため、換算方法を変更した会社が増えたものと推察される。

また、当該変更のように会計基準等の改正に伴う会計方針の変更以外の正当な理由による会計方針の変更については、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することが求められている(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)6項(2))。ただし、当該会計方針の変更による遡及適用の原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、次の方法が認められている(企業会計基準第24号9項)。

① 当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することはできるものの、表示期間のいずれかにおいて、当該期間に与える影響額を算定することが実務上不可能な場合には、遡及適用が実行可能な最も古い期間(これが当期となる場合もある。)の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。

② 当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することが実務上不可能な場合には、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用する。

なお、財務諸表利用者の意思決定への影響に照らして重要性が乏しいと判断された場合にも遡及適用しないことができる(企業会計基準第24号35項)。

2026年3月期決算において、会計方針の変更の注記として在外子会社等の収益及び費用の換算方法を変更していた7社について遡及適用の状況を分析した結果、<図表2>のとおり、5社は前連結会計年度も遡及適用していたが、2社は影響額が軽微であることを理由に遡及適用していなかった。また、遡及適用していた5社のうち、4社は前々年度以前に遡及し、前連結会計年度の期首の利益剰余金に累積的影響額を反映しており、残りの1社は前連結会計年度の期首より前の連結会計年度については累積的影響額が軽微であるとして前連結会計年度のみ遡及適用していた。

(旬刊経理情報(中央経済社)2026年9月20日号 No.1787「2026年3月期「有報」分析」を一部修正)

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