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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之
2026年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の米国関税に係る開示状況を知りたい。
【調査範囲】
【調査結果】
2025年1月に、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任し、「アメリカファーストの貿易政策」と題する大統領覚書に署名がされた。この大統領覚書には、「米国の貿易赤字の原因の調査、全世界に対するベースライン関税の導入を含む、適切な措置の勧告」等の関税に関する項目が含まれており、米国と貿易を行っている国々は輸出時に付加される関税が増える見込みとなっていた。このような状況であったものの、2026年3月に、米国国際貿易裁判所(CIT)が、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の対象として申告された未精算の全輸入申告について、関税を適用せずに精算するように米国税関国境警備局(CBP)に命じたことから、関税が還付されることになった。
こうした背景から、2025年1月以降の米国関税政策の動向は、米国向けに輸出を行う会社等にとって業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。このため、これらの会社等では、米国関税政策の動向が繰延税金資産の回収可能性や固定資産の減損などの重要な会計上の見積りの注記の記載内容にも影響していることが考えられる。また、関税の還付については、在外子会社の決算日が12月末であることなどにより、前述の関税に関する動向や還付金の受領が後発事象となることで、2026年3月期の有報において重要な後発事象の注記を行うことも考えられたため、米国関税の開示状況について事例分析を実施した。
【調査結果】
調査対象会社(2,178社)を対象として、重要な会計上の見積りの注記の記載内容を分析した。<図表1>のとおり、2025年3月期に米国の追加関税を記載した会社は30社であった。特に、将来の業績について不確実性が高いという理由から、繰延税金資産の回収可能性や固定資産の減損など将来業績が影響する見積項目の記載が多かった。これに対して、米国関税の還付されることとなった2026年3月期においては、重要な会計上の見積りの注記において、米国関税に関する記載が11社まで減少していた。
また、米国関税に関する重要な会計上の見積りの注記を業種別に分析した結果は、<図表2>のとおりである。2025年3月期は銀行業、金属製品、次いで米国へ自動車の輸出産業に属する輸送用機器が多数を占めた。一方で、2026年3月期は、業種を問わず全体的に減少していた。
さらに、2026年3月に米国関税の還付が決まったことから、重要な後発事象として注記している会社を調査した。その結果、重要な後発事象に米国関税の還付について記載している会社は3社であった。この3社はいずれも後発事象の期間に還付手続を行った旨の記載がされており、そのうち2社は還付金の一部を受領済みであると記載していた。
<図表1>重要な会計上の見積りの注記における米国関税に関する見積項目の開示状況
| 見積項目 | 2025年 会社数 | 2026年 会社数 |
|---|---|---|
| 繰延税金資産の回収可能性 | 11社 | 5社 |
| 固定資産の減損 | 8社 | 3社 |
| 貸倒引当金 | 6社 | 1社 |
| 関係会社投融資等の評価 | 2社 | - |
| 貸出金等の評価 | 1社 | - |
| 棚卸資産の評価 | 1社 | - |
| 輸出関税に係る引当金 | 1社 | - |
| 関税引当金 | - | 1社 |
| 投融資の評価 | - | 1社 |
| 合計 | 30社 | 11社 |
<図表2>米国関税に関する業種別分析
| 業種 | 2025年 会社数 | 2026年 会社数 |
|---|---|---|
| 銀行業 | 6社 | 1社 |
| 金属製品 | 5社 | 2社 |
| 輸送用機器 | 4社 | 1社 |
| 卸売業 | 3社 | - |
| 情報・通信業 | 2社 | 1社 |
| 電気機器 | 2社 | - |
| その他製品 | 1社 | 2社 |
| 鉄鋼 | - | 2社 |
| その他 | 7社 | 2社 |
| 合計 | 30社 | 11社 |
(旬刊経理情報(中央経済社)2026年9月20日号 No.1787「2026年3月期「有報」分析」を一部修正)
2026年3月期 有報開示事例分析
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