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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之
2026年3月期決算において、定時株主総会前に有価証券報告書(以下「有報」という。)を提出した会社の業種別の分析や記載箇所の分析等について知りたい。
【調査範囲】
【調査結果】
調査対象会社(1)(2,178社)を対象として、総会前提出の状況を、業種別に分析した結果は、<図表1>のとおりである。銀行業や保険業では総会前提出した会社の比率が高く、特に、銀行業ではすべての会社83社が総会前提出していた。有報提出から定時株主総会までの日数は、全体の平均が2.6日であるのに対し、銀行業の平均は6.5日と全業種の中で最も長かった。これは、銀行業83社のうち48社が定時株主総会の7日以上前に有報を提出しているため、平均日数が長くなっている。
また、総会前提出の状況を、市場区分別に分析した結果は、<図表2>のとおりである。東証プライム市場に上場している会社は、総会前提出した会社の比率が94.6%と、全体の比率88.5%よりもやや高かった。有報提出から定時株主総会までの日数は、東証プライム市場に上場している会社の平均は3.1日であり、全体の平均2.6日と比較して日数が長かった。
<図表1> 業種別の総会前提出割合
| 2026年3月期 | 2025年3月期 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 業種(※) | 調査対象会社 | 総会前提出会社数 | 調査対象会社に占める比率 | 総会前提出から総会までの平均日数 | 調査対象会社に占める比率 | 総会前提出から総会までの平均日数 |
| 銀行業 | 83社 | 83社 | 100.0% | 6.5日 | 100.0% | 3.3日 |
| 空運業 | 4社 | 4社 | 100.0% | 1.0日 | 50.0% | 1.0日 |
| 鉱業 | 3社 | 3社 | 100.0% | 2.3日 | 66.7% | 1.5日 |
| 水産・農林業 | 6社 | 6社 | 100.0% | 2.3日 | 33.3% | 1.5日 |
| 石油・石炭製品 | 6社 | 6社 | 100.0% | 3.2日 | 85.7% | 3.0日 |
| 倉庫・運輸関連 | 28社 | 28社 | 100.0% | 2.2日 | 63.3% | 1.8日 |
| 電気・ガス業 | 22社 | 22社 | 100.0% | 1.9日 | 81.0% | 1.6日 |
| その他金融業 | 30社 | 29社 | 96.7% | 3.2日 | 78.1% | 2.3日 |
| 建設業 | 103社 | 99社 | 96.1% | 3.0日 | 63.1% | 2.0日 |
| 精密機器 | 34社 | 32社 | 94.1% | 2.5日 | 51.5% | 2.8日 |
| 証券、商品先物取引業 | 28社 | 26社 | 92.9% | 3.7日 | 80.0% | 2.2日 |
| 食料品 | 82社 | 76社 | 92.7% | 2.5日 | 57.8% | 2.2日 |
| ガラス・土石製品 | 39社 | 36社 | 92.3% | 2.4日 | 50.0% | 2.0日 |
| 不動産業 | 52社 | 48社 | 92.3% | 1.9日 | 52.8% | 1.6日 |
| ゴム製品 | 12社 | 11社 | 91.7% | 1.6日 | 53.8% | 1.1日 |
| 輸送用機器 | 71社 | 65社 | 91.5% | 3.0日 | 60.5% | 1.7日 |
| 保険業 | 11社 | 10社 | 90.9% | 5.3日 | 90.0% | 5.1日 |
| その他 | 1,564社 | 1,344社 | 85.9% | 2.5日 | 56.9% | 1.7日 |
| 総計 | 2,178社 | 1,928社 | 88.5% | 2.6日 | 57.9% | 1.9日 |
(※)総会前に有報を提出した会社の割合が高い業種順に記載している。
<図表2> 市場区分別の総会前提出割合
| 2026年3月期 | 2025年3月期 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 市場区分(※) | 調査対象会社 | 総会前提出会社数 | 調査対象会社に占める比率 | 総会前提出から総会までの平均日数 | 調査対象会社に占める比率 | 総会前提出から総会までの平均日数 |
| 東証プライム | 1,062社 | 1,005社 | 94.6% | 3.1日 | 69.6% | 2.0日 |
| 東証スタンダード | 894社 | 751社 | 84.0% | 2.1日 | 47.5% | 1.6日 |
| 東証グロース | 161社 | 124社 | 77.0% | 2.2日 | 41.0% | 1.7日 |
| その他 | 61社 | 48社 | 78.7% | 1.9日 | 47.3% | 1.7日 |
| 合計 | 2,178社 | 1,928社 | 88.5% | 2.6日 | 57.9% | 1.9日 |
(※)東証と他の取引所に重複上場している場合は、東証の市場区分で集計している。
調査対象会社(2)(189社)のうち、総会前提出した会社は179社あり、それらの会社の当該定時株主総会又はその直後に開催が予定される取締役会の決議事項に係る有報の記載箇所を分析した結果は、<図表3>のとおりである。なお、2026年2月20日の「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)の改正により、2026年3月期から自己株式の取得と剰余金の配当にのみ記載が要求されるようになっており、この観点からも分析している。
2026年3月期は、総会前提出を行った179社のうち、「配当政策」に配当の決議案を記載した会社は134社であった。差分の45社は、配当を取締役会決議事項としていることから、定時株主総会予定日の記載がなかったものと考えられる。また、「主要な経営指標等の推移」、「(連結)株主資本等変動計算書関係注記」に配当の決議案を記載している会社は、ともに133社であった。
なお、開示府令で記載が求められていない「役員の状況」については146社(81.6%)が定時株主総会の役員選任の決議案を記載していた。2025年3月期の会社数より減少したものの、一定数の会社が記載している要因として、開示府令により、有報に記載しない場合、半期報告書での記載が求められることも理由となっているのではないかと考えられる。
また、その他の項目は、会社が必要に応じて記載の有無を判断していると考えられるが、特に「コーポレート・ガバナンスの概要」の記載が、144社(95.4%)から119社(66.5%)へ減少した理由は、記載の要件から外れたことが理由の1つと考えられる。
<図表3> 総会前提出に係る有報記載箇所
| 2025年3月期(※1) | 2026年3月期(※2) | |||
|---|---|---|---|---|
| 記載箇所 | 会社数 | 比率 | 会社数 | 比率 |
| 役員の状況 | 151社 | 100.0% | 146社 | 81.6% |
| 配当政策 | 113社 | 74.8% | 134社 | 74.9% |
| 主要な経営指標等の推移 | 112社 | 74.2% | 133社 | 74.3% |
| (連結)株主資本等変動計算書関係注記(※3) | 112社 | 74.2% | 133社 | 74.3% |
| コーポレート・ガバナンスの概要 | 144社 | 95.4% | 119社 | 66.5% |
| 役員の報酬等 | 48社 | 31.8% | 67社 | 37.4% |
| 監査の状況 | 81社 | 53.6% | 58社 | 32.4% |
| 株式等の状況 | 15社 | 9.9% | 35社 | 19.6% |
| その他(※4) | 18社 | 11.9% | 26社 | 14.5% |
| 対象の会社数 | 151社 | 100.0% | 179社 | 100.0% |
(※1)調査対象会社のうち総会前に有報を提出した151社について、複数の記載がある場合には、それぞれ1社としてカウントしている。
(※2)調査対象会社のうち総会前に有報を提出した179社について、複数の記載がある場合には、それぞれ1社としてカウントしている。
(※3)単体のみ開示している会社は、株主資本等変動計算書関係注記の記載を含む。
(※4)「その他」としては、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「サステナビリティに関する考え方及び取組」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、「重要な後発事象」や「追加情報」などにおける記載がみられた。
(旬刊経理情報(中央経済社)2026年9月20日号 No.1787「2026年3月期「有報」分析」を一部修正)
2026年3月期 有報開示事例分析
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