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EY新日本有限責任監査法人
兵藤 伸考
2026年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の資産除去債務に係る見積りの変更における「会計上の見積りの変更の注記」及び「資産除去債務関係の注記」について、インフレに関連する開示の状況を知りたい。
【調査範囲】
【調査結果】
2026年3月期は、日経平均株価の上昇、金融政策の正常化に伴う金利の上昇、円安や労務費の上昇による物価上昇など、国内の経済環境に大きな変化が生じた。これらの経済環境の変化は、2026年3月期決算の有報における資産除去債務関係の開示内容にも影響を及ぼしているものと考えられる。
そこで、資産除去債務の見積りの変更における会計上の見積りの変更の注記及び資産除去債務関係の注記の開示状況について、インフレに関連する項目を分析した。
2025年3月期決算の上場会社(日本基準)2,087社及び2026年3月期決算の上場会社(日本基準)1,996社について、会計上の見積りの変更の注記において、資産除去債務の見積りの変更の開示状況を分析した結果は、<図表1>のとおりである。
<図表1>資産除去債務に係る会計上の見積りの変更の注記
| 内容 | 2025年3月期決算 | 2026年3月期決算 |
|---|---|---|
| 会社数 | 会社数 | |
| 見積りの金額を変更した旨を注記している事例 | 45社 | 62社 |
| 資産除去債務関係の注記を参照している事例 | 1社 | 2社 |
| 合計 | 46社 | 64社 |
(※)資産除去債務を新たに計上した事例や償却期間を変更したのみの事例は集計していない。
2026年3月期決算において、会計上の見積りの変更の注記に見積りの金額を変更した旨を注記している事例及び資産除去債務関係の注記を参照している事例は合計64社であり、2025年3月期決算の46社と比較して18社増加していた。物価や労務費の上昇傾向は2025年3月期決算以前からみられたものの、引き続き上昇していることから、2026年3月期決算においても重要な会計上の見積りの変更を行っている会社が多かったものと考えられる。
会計上の見積りの変更の注記において見積りの金額を変更した旨を注記している事例について、見積りの増減の状況を分析した結果は、<図表2>のとおりである。2026年3月期決算において見積りの金額を変更した旨を注記している事例及び資産除去債務関係の注記を参照している事例64社のうち、63社(98.4%)は見積りの金額が増加したことにより注記を行っており、ほとんどの会社において物価や労務費の上昇により、資産除去債務における将来の工事費用等の見積りの金額が増加したものと考えられる。
<図表2>会計上の見積りの変更における見積りの金額の増減状況
| 増減 | 2025年3月期決算 | 2026年3月期決算 | ||
|---|---|---|---|---|
| 会社数 | 比率 | 会社数 | 比率 | |
| 増加 | 45社 | 97.8% | 63社 | 98.4% |
| 減少 | 1社 | 2.2% | 1社 | 1.6% |
| 合計 | 46社 | 100.0% | 64社 | 100.0% |
調査対象会社について、資産除去債務関係の注記において見積りの変更の開示状況を分析した結果は、<図表3>のとおりである。
<図表3>資産除去債務関係の注記に係る見積りの変更の開示状況
| 内容 | 2025年3月期決算 | 2026年3月期決算 |
|---|---|---|
| 会社数 | 会社数 | |
| 見積りの金額を変更した旨を記載している事例 | 108社 | 113社 |
| 会計上の見積りの注記を参照している事例 | 7社 | 16社 |
| 小計 | 115社 | 129社 |
| 見積りの金額を変更した旨を記載していないが、増減表において見積りの変更金額を記載している事例 | 50社 | 57社 |
| 合計 | 165社 | 186社 |
資産除去債務関係の注記においても、見積りを変更した旨を記載している事例及び会計上の見積りの変更の注記を参照している事例は129社と、2025年3月期決算と比較して14社増加していた。事例数は大きくは増加していないものの、会計上の見積りの変更の注記と同様に増加傾向にある。
また、資産除去債務関係の注記において見積りを変更した旨を記載していないが、資産除去債務の総額の増減表において見積りの変更金額を記載している事例は57社と、2025年3月期決算の50社と比較して7社増加していた。これらの事例は見積りの変更内容を記載するほどの重要性はないものの、変更金額のみを記載していたものと推察される。
資産除去債務関係の注記において見積りの金額を変更した旨を注記している事例について、見積りの変更の金額の増減状況を分析した結果は、<図表4>のとおりである。
<図表4>資産除去債務関係の注記における見積りの変更の金額の増減状況
| 増減 | 2025年3月期決算 | 2026年3月期決算 | |
|---|---|---|---|
| 会社数 | 会社数 | ||
| 見積りの金額を変更した旨を記載している事例 | 増加 | 92社 | 106社 |
| 減少 | 16社 | 7社 | |
| 合計 | 108社 | 113社 | |
| 見積りの金額を変更した旨を記載していないが、見積りの変更金額を記載している事例 | 増加 | 45社 | 49社 |
| 減少 | 5社 | 8社 | |
| 合計 | 50社 | 57社 |
見積りの金額を変更した旨を記載している事例数を比較すると、108社から113社へと5社増加していた。また、そのうち、見積りの金額が増加している会社は92社から106社と14社増加しており、資産除去債務における将来の工事費用等が増加するとして見積りの金額を変更した会社が多かったものと考えられる。
資産除去債務関係の注記において見積りの金額を増加した旨を記載している会社106社を対象に、2025年3月期決算と2026年3月期決算の割引率の変動を比較した結果は、<図表5>のとおりである。なお、106社のうち31社は資産除去債務関係の注記に具体的な割引率の記載がなかった。
割引率が上昇していた会社は47社(62.7%)であった。将来の工事費用等が増加するとして割引前の将来キャッシュ・フローが増加する場合には、その時点の割引率を適用することになる。そのため、2026年3月末の利付国債等の流通利回りは上昇しており、多くの会社で適用する貨幣の時間価値を反映した無リスクの割引率も上昇したものと推察される。割引率が変動していない事例も23社(30.7%)あったが、割引率について主な利率として利率のレンジを記載する事例も多く、レンジの上限及び下限に変化がなかったことから2025年3月期決算と同じ割引率を記載していた会社もあったと推察される。
<図表5>資産除去債務関係の注記における割引率の変動状況
| 変動状況 | 会社数 | 比率 |
|---|---|---|
| 上昇 | 47社 | 62.7% |
| 下落 | 5社 | 6.7% |
| 変動なし | 23社 | 30.7% |
| 合計 | 75社 | 100.0% |
(※1)「●%~●%」と記載している事例については上限値と下限値の単純平均値に基づき比較している。
(※2)国内会社と在外子会社を区分している事例は国内会社の割引率を集計している。
(旬刊経理情報(中央経済社)2026年9月20日号 No.1787「2026年3月期「有報」分析」を一部修正)
2026年3月期 有報開示事例分析
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