2026年3月期 有報開示事例分析
第12回 内部統制報告書の改正2年目の開示分析

EY新日本有限責任監査法人
大山 文隆

Question

2026年3月期決算に係る内部統制報告書に関連する基準改正2年目の開示の状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2026年8月
  • 調査対象期間:2026年3月期
  • 調査対象書類:内部統制報告書
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する189社
    ① 2026年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ② 3月31日決算である
    ③ 2026年6月30日までに内部統制報告書を提出している
    ④ 日本基準を適用している

【調査結果】

1. 解説

2025年3月期決算から改訂後の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下「改訂内部統制実施基準」という。)が適用されることとなり、内部統制報告書の記載内容について開示の拡充が求められていた。具体的には次の事項について、決定の判断事由を含めて記載することが求められている(「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」Ⅱ-4-(4)①)。

  • 重要な事業拠点の選定において利用した指標(以下「重要な事業拠点の選定指標」という。)とその一定割合
  • 評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関わるものとして選定した勘定科目(以下「事業目的勘定」という。)
  • 個別に評価対象に追加した事業拠点及び業務プロセス(以下「個別評価プロセス」という。)

また、2026年3月27日に金融庁から「令和7年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等」(以下「有報レビュー」という。)が公表されている。有報レビューにおいては、2025年3月31日以降に終了する事業年度に係る内部統制報告書の審査結果として以下が記載されている。

  • 内部統制報告書の「財務報告に係る内部統制の評価の範囲」の記載について、改正内部統制府令ガイドラインで定められている事項について「決定した事由」の記載がない又は不明瞭である

そこで、改訂内部統制実施基準の適用から2年目となった2026年3月期の内部統制報告書を対象に、各社の記載状況について開示事例の調査を行った。


2. 重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合

① 重要な事業拠点の選定指標

調査対象会社(189社)について、2026年3月期の内部統制報告書の「重要な事業拠点の選定指標」を調査した結果が<図表1>のとおりである。

<図表1>重要な事業拠点の選定指標
 

指標会社数(注1)調査対象会社に占める比率
売上高(注2)18798.9%
総資産2211.6%
税引前利益179.0%
棚卸資産63.2%
売上原価63.2%

(注1)例えば、売上高と税引前利益を重要な事業拠点の選定指標としている会社については、売上高と税引前利益それぞれに1社として集計している
(注2)売上収益、経常収益、営業収益も含む
(注3)調査結果のうち、該当する会社数が多い選定指標の上位5件を記載している

調査対象会社(189社)のうち、重要な事業拠点の選定指標に売上高を記載している会社が187社(98.9%)であり最も多かった。2025年3月期から選定指標を変更した会社はみられなかった。

次に、調査対象会社(189社)について、2025年3月期と2026年3月期の内部統制報告書の「重要な事業拠点の選定指標における決定の判断事由」の記載内容を調査した。調査結果は<図表2>のとおりである。

<図表2>重要な事業拠点の選定指標における決定の判断事由
 

記載内容2025年3月期2026年3月期
会社数比率会社数比率
事業内容や事業の特性を踏まえ、事業規模、経営成績等を示す指標として適切13269.8%14476.2%
指標毎に決定の判断事由を記載126.3%115.8%
経営管理上、重視している指標であるため94.8%94.8%
財務報告への金額的影響等の観点から決定84.2%84.2%
各事業拠点の利益水準に乖離がない84.2%73.7%
事業拠点毎の利益率や利益水準が異なるため、売上高が適切42.1%31.6%
財務報告への金額的影響が重要21.1%10.5%
その他21.1%21.1%
記載なし126.3%42.1%
合計189100.0%189100.0%

事業内容や事業の特性を踏まえ、事業規模、経営成績等を示す指標として適切であることを決定の判断事由としている会社が最も多く、2025年3月期は132社(69.8%)、2026年3月期は144社(76.2%)であった。2026年3月期の144社のうち、2025年3月期は決定の判断事由を記載していなかったが2026年3月期は記載した会社が8社(5.6%)、2025年3月期よりも記載内容を拡充又は変更した会社が12社(8.3%)であった。これらの会社は有報レビューの審査結果や基準改正1年目の開示事例を踏まえ、記載を見直したものと考えられる。

② 重要な事業拠点の選定指標の一定割合

調査対象会社(189社)について、2026年3月期の内部統制報告書の「重要な事業拠点の選定指標の一定割合」を調査した結果、改訂内部統制実施基準において例示されている一定割合である「概ね3分の2程度」を判断基準としている、又は判断基準に含めている会社が173社(91.5%)と最も多かった。

次に、2025年3月期と2026年3月期の内部統制報告書の「重要な事業拠点の選定指標の一定割合の決定の判断事由」における記載内容を調査した。調査結果は<図表3>のとおりである。

<図表3>重要な事業拠点の選定指標の一定割合の決定の判断事由
 

記載内容2025年3月期2026年3月期
会社数比率会社数比率
全社統制の評価結果が良好7740.7%9952.4%
全社統制の評価結果が良好に加えて、その他要素を考慮10.5%63.2%
その他63.2%105.3%
特段記載なし10555.6%7439.1%
合計189100.0%189100.0%

全社統制の評価結果が良好であることを判断事由としている会社が最も多く、2025年3月期は77社(40.7%)、2026年3月期は99社(52.4%)であった。これは改訂内部統制実施基準において「全社的な内部統制の評価が良好であれば、例えば、連結ベースの売上高等の一定割合(概ね 3分の2程度)とする考え方や、総資産、税引前利益等の一定割合とする考え方もある」との記載があり、こちらを参考にした会社が多いためと考えられる。また、2025年3月期に判断事由を記載していなかった105社のうち、31社(29.5%)は2026年3月期に判断事由を記載していた。これらの会社は有報レビューの審査結果や基準改正1年目の開示事例を踏まえ記載を見直したものと考えられる。


3. 企業の事業目的に大きく関わる勘定科目

調査対象会社(189社)について、2026年3月期の内部統制報告書の「事業目的勘定」を調査した結果、2025年3月期から事業目的勘定を追加又は表現を変更している会社が9社(4.8%)みられた。

次に、調査対象会社(189社)について、2025年3月期と2026年3月期の内部統制報告書の「事業目的勘定の決定の判断事由」における記載内容を調査した。調査結果は<図表4>のとおりである。

<図表4>事業目的勘定の決定の判断事由
 

記載内容2025年3月期2026年3月期
会社数比率会社数比率
事業内容、事業の特性7640.2%8343.9%
特段記載なし5127.0%4021.2%
事業において多額に計上されること157.9%179.0%
企業の収益獲得活動に関連すること157.9%168.5%
指標ごとに決定の判断事由を記載115.8%126.3%
事業特性、売上高や総資産等に占める割合105.3%105.3%
金額的影響及び質的影響並びに発生可能性52.6%52.6%
その他63.2%63.2%
合計189100.0%189100.0%

「重要な事業拠点の選定指標」と同様に、「事業目的勘定」においても事業内容、事業の特性を決定の判断事由とした会社が最も多く、2025年3月期は76社(40.2%)、2026年3月期は83社(43.9%)であった。また、2025年3月期に判断事由を記載していなかった51社のうち、11社(21.6%)は2026年3月期に判断事由を記載していた。


4. 個別に追加した事業拠点及び業務プロセス

調査対象会社(189社)について、2025年3月期と2026年3月期の内部統制報告書の「個別評価プロセス」におけるプロセス名称の記載及び個別評価プロセスの個数を調査した。調査結果は<図表5>のとおりである。

<図表5>個別評価プロセスの開示状況
 

プロセスの名称の記載個別評価プロセスの個数2025年3月期2026年3月期
会社数比率会社数比率
プロセス名称の記載なし0個3518.5%2111.1%
プロセス名称の記載あり1個4121.7%4222.2%
2個4121.7%4423.3%
3個2915.3%3418.0%
4個2412.7%2513.2%
5個94.8%105.3%
6個52.6%73.7%
7個10.5%21.1%
8個10.5%0-
9個10.5%0-
10個21.1%42.1%
合計189100.0%189100.0%

個別評価プロセスの個数については、2025年3月期と2026年3月期ともに記載した個数が1個から4個までの会社が多かった。また、2026年3月期に個別評価プロセスを追加した会社が、調査対象会社(189社)のうち、31社(16.4%)あり、個別評価プロセスの個数は全体的に増加している。さらに、プロセス名称の記載がない会社数が2025年3月期の35社(18.5%)から2026年3月期は21社(11.1%)に減少しており、個別評価プロセスの名称を具体的に記載する傾向にあると考えられる。


(旬刊経理情報(中央経済社)2026年9月20日号 No.1787「2026年3月期「有報」分析」を一部修正)

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