EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYパルテノンは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
要点
EYパルテノンができること
CEOやビジネスリーダーは、この変革の時代に、ステークホルダーにとっての価値を最大化するという任務を負っています。私たちは常識に疑問を投げかけ、収益性と長期的価値を向上させる戦略を構築し、実行します。
続きを読む事業のディスラプション(創造的破壊)が進んだこの5年間に勝ち組として浮上してきたのは、オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチに舵を切って競争優位を維持し、ケイパビリティを⾼める⼿段としてこの戦略を活⽤してきた企業ではないでしょうか。
なぜオルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチが、M&Aで企業がより良い成果を上げるために有効な事業運営上の⼿段として推奨されているのかを私たちは調べました。M&A市場における戦略的アプローチは、クラシックとオルタナティブに⼆分することができます。ほぼすべての企業がこの2つを組み合わせたアプローチをとっていますが、今回の分析では、取引頻度からその企業が好むアプローチを割り出し、それに応じて企業をセグメント別に分類しました。オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチは、⼤きな価値の取り込みにつながり、ディスラプションが続く厳しい今の時代に企業の有効なリスクヘッジ策となる可能性があります。さらには、クラシック型のM&Aを上回る成果をもたらすかもしれません。
EYの調査から、この5年間で、イノベーションを持続させるためのリスク選好度と機敏性を備え、オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチを活⽤してきた企業の株価収益率が上昇し、成⻑性を⽰したことが分かりました。これらの企業は、特別な場合だけに多額の資⾦を投じる「ビッグバン型」のトランザクションよりも、頻繁に買収を⾏う⽅が増分価値を取り込めると考えるようになっています。この戦略で、資源と資本の基盤の柔軟性を維持できるかもしれません。地政学的に不安定な状況、政府の介⼊、マクロ経済の混乱など外部の逆⾵を乗り越えなければならないようなとき、このような柔軟性が役⽴ちます。
今回は、上場企業約800社の業績を調査・分析しました。これらの企業は2015年から2019年までの5年間に約2,500件の取引を実施し、取引額が1兆3,000億⽶ドルに上ります。対象となる企業は、イノベーションとディスラプションが活発であることと、取引データを⼊⼿できることから、TMT(テクノロジー、メディア、テレコム)セクターと消費財セクターから選定しました。
今回の調査およびオルタナティブ型のアプローチによるM&Aの効果について詳しく知りたい場合は、「選ばれざる道︓オルタナティブ型のM&A戦略について」(PDF)をご覧ください。
オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチは全体的に⾒て、クラシック型より業績向上に寄与する可能性が⾼いと考えられます。中でも特に注⽬すべきはTSR(Total Shareholder Return – 株主総利回り)です。オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチを活⽤する企業は他社に格段の差をつけており、クラシック型のM&A中⼼の企業に⽐べ、TSRが1.5倍近く⾼いことが分かりました。
EYの調査で、オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチを進める企業が、クラシック型のM&A戦略をとる企業に業績で勝る理由の⼀端を⽰す共通項が7つあることが分かりました。
オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチで実際に価値を得ることは簡単ではないかもしれません。多様なディール全体を成功させるためにはイノベーション、総合的な価値創造と堅固なインフラの整備への注⼒が必要となる場合があります。オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチ戦略を進め、トップクラスの業績を上げる企業は概して、以下の6つの⽅策を講じて、オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチ戦略を効果的に実施しています。
オルタナティブ型のM&Aアプローチを中核に据えることは、レジリエントなポートフォリオを構築し、新たな成長機会を生み出すことにつながるため、パンデミック後のビジネス界で生き残るためのコーポレート戦略の策定・展開に際しての有効な手段となります。
オルタナティブ型のM&A戦略を中核に据えたコーポレート戦略を成功させるには、事業投資・M&Aのトランザクションにおいて、常に事業価値を念頭に置いた包括的な視点を持つことが必要です。このアプローチでは、ビジネスモデルの統合とトップライン(売上)シナジーを特に重視し、顧客と製品に関する領域から着⼿する傾向にあります。この戦略の実⾏では、対象企業の選定からデューデリジェンス、買収後の統合までを迅速かつ効率的に推進できる体制を備え、⼗分な調査・準備を実施できる能⼒を持ったコーポレートデベロップメント部⾨が主導することは少なくありません。
今回の分析の結果を見ると、オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチがクラシック型を逆転する様子がうかがえます。(オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチは、)優れたM&Aの成果をもたらしているだけでなく、ディスラプションを起こす原動力にもなっていると言えるのではないでしょうか。
今回の調査ではAsh Panda氏、Isaac Hung氏、Rahul Bajaj氏、Ranjan Rath氏が中心となって協力し、この記事の共同執筆者にもなってくださいました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。
オルタナティブ型のM&A戦略に基づく、M&Aへのアプローチは、ニューノーマルに対応する効果的な手段になる可能性を有しています。適切な方策を講じて、オルタナティブ型のM&A戦略に基づくアプローチを成功させれば、クラシック型のM&Aに対して業績面で勝ることもできます。