EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
先日、青山学院大学で生成AIをテーマに組織的な活用促進施策についてお話をする機会がありました。そこでBusiness Partner(BP:伝道師、エバンジェリスト等)の重要性を示したところ、「BPには何が必要か」という質問をいただきました。実際、企業の皆さまからも全員がプロ級にテクノロジーを使いこなすのが難しいことは理解しているが、とは言え組織的活用も進める必要があり、良い方法が見えないという迷いを伺うことも多々あります。そこで今回はデジタルテクノロジー活用に必要な能力について、その動向をご紹介します。
当たり前ながら、テクノロジーは専門知識を知っているだけでは使いこなせません。コンピューターが世に出始めた頃からそのことは広く認識されており、専門知識に加えてリテラシー(基礎力)の必要性が語られてきました。そして技術革新のスピードが加速した現在、リテラシー以上に重要視されつつあるのがFluency(流暢性)です。これは例えばある自社システムに精通し、さまざまな価値を創出している人がいたとしても、生成AIのような技術革新が起きた時に新技術をすぐ使いこなせなければ時代についていけない、という危機感を表していると考えられ、人事の70%が自組織におけるDigital Fluencyの重要性が高まっていると回答したとの報告もあるほどに注目が高まっています。
ではDigital Fluencyとは何なのでしょうか。現在、Digital Fluencyの概念は、Cognitive、Ethical(またはSocial)、Technologicalという3要素で構成されているとする考え方が多いようです。共通定義がある訳ではないため提唱者により若干の差異はありますが、おおむねCognitiveが情報やデータにアクセスし、必要な軸で取捨選択の判断をする力、Ethicalはサイバー空間で自己と他者を尊重してコラボレートする力、Technologicalは柔軟に専門知識を吸収し、問題解決に応用する力、といったところです。より具体的な例としてEUは2013年にDigCompという形でデジタル・コンピタンスを全市民に必要なものと定め、それを5つの要素(上述のCognitiveに該当するものが1項目、EthicalとTechnologicalがそれぞれ2項目)に分類、定義しています。また、UNESCOはAI CompetencyとしてEthicalとTechnologicalをベースとした4コンピテンシーフレームワークを提唱しています。
ここでのポイントは、Digital Fluencyがスキルではなくコンピテンシーだという点です。コンピテンシー評価を採り入れておられる企業の方であればご認識があると思いますが、コンピテンシーはただでさえ評価が難しいものです。その上、複数コンピテンシーが組み合わさったものとなると、「評価は困難」と言い切る学者もいるほどです。とは言えその評価手法も研究はされており、アンケート形式で設問に答えるとスコアが出るタイプの検査を使うことが多いようです(採用時の性格検査のようなものですが、設問が90問前後、少なくとも40問とそれなりに量があり、実用化は少し先になりそうです)。
また、育成・開発の手法もさまざまな研究が世界中で進められています。原則論としてはコンピテンシーを定義し、現状を測定し、トレーニングを提供し、効果を検証するという通常の開発ステップを踏むこととなります。ただ、自記式の調査だけでは全容把握が難しいということもあり、包括的な評価のために、AIを用いた対立課題の解決提案、シナリオに基づくルール策定、タスクに基づくツール作成などのアクティビティベースの課題を提示しているものもあります。これらは能力開発においても有用な手法と考えられますので、ぜひ今回の参考文献なども活用しながら自社にあったDigital Fluencyを定義し、開発に取り組んでいただければと思います。
参考文献 ※内容はアクセス当時のものとなります。
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