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NVIDIAと語るAIプロジェクト成功の要諦


2025年3月開催のFIN/SUM 2025において、EY JapanとNVIDIAの連携による「NVIDIAと語るAIプロジェクト成功の要諦」と題したワークショップを開催しました。

今回は生成AIや3Dアプリケーション分野の支援を強化するためアライアンスを組んでいるNVIDIAと、AIプロジェクトに不可欠とされるマインドチェンジ、カルチャー変革、ソリューションについてディスカッションを行いました。


要点

  • 国内のAIプロジェクトは、効率化やコスト削減など短期的に目に見える形で効果が出やすいところに焦点が当たりがち。
  • まずは技術的な面が取り沙汰されるAIプロジェクトにおいて、推進の鍵を握るのは組織のカルチャー変革やプロジェクトを推進するメンバーのマインドチェンジ。
  • 生成AIを業務で使うなら、生成AIの結果を判断する現場のリーダーシップが不可欠。


業務効率化やコスト削減に焦点が当たりがちなAI導入

日本で生成AI取り組み状況は進んでいるものの、国内大手企業のうち、積極的なAI導入や検証を実施しているのは全体の3割ほどにとどまっています。一方、昨秋にメガバンクは500億円に上る大規模なAIへの投資を表明するなど、フロント業務や営業支援といった、マネタイズに直接響くところにAIプロジェクトにも注力していく傾向が見て取れます。

EY 宮下 隆義
EY 鷹取 宏

目に見える形で効果が出やすい守り(リスク・ガバナンス・業務効率化)に焦点が当たりがちですが、今後は攻め(顧客提供価値向上・新しいビジネスの創造)と守りのバランスを取っていくことがポイントになっていきます。

 

AIはあくまでもツールであり、人がどのような知見や知識をAIに注入できるかがポイントになっていきます。これまで暗黙知とされてきた人のノウハウや独自性、あるいは創造性などは、言語化が難しいとされてきました。「しかし、それらを言語化し、AIとインタラクションしながら、形式知化してレバレッジを効かせていくループを創り出せると、金融機関としての強みやオリジナリティが出てくると考えられます」と、EYの宮下 隆義は述べました。

 

この強みやオリジナリティの出し方に関しては、NVIDIAの平畠 浩司氏にご紹介いただいた海外の大手金融機関によるAI導入事例にもヒントがあるようです。例を挙げると、NVIDIA DGX SuperPODをオンプレで導入したケースでは、その規模に対応できるケイパビリティを持つかたが社内にいるからこそ、それほどの投資が可能になったという見解が示されました。また、米大手銀が自社開発したエンジンにエヌビディアのソフトウェアを使ったことで、パフォーマンスの精度が35%も向上した実例も明らかにし、「国内の金融機関でも同じように適用できるところがある」と、平畠氏は見解を示しました。

 

こうした事例紹介を受け、EYの鷹取 宏は、クレジットカード会社で活用されている、数十万件の不正検知をコンマ数秒で処理するNVIDIAのシステムを引き合いに出し、「その物理的なすごさを踏まえてアライアンスを組んだ」と、EYとNVIDIAのアライアンスに基づいた協業体制について説明しました。

 

AIプロジェクトの推進においては技術より文化の要素が強い

NVIDIA 平畠 浩司氏

NVIDIAのテクノロジー、ひいてはEYとの連携が指し示すのは、海外から遅れがちな日本においても、生成AIの取り組みにおける「守りと攻め」のバランスを改善できるソリューションのキーとなるのが、マインドチェンジであり、カルチャー変革の必要性であるというのが登壇者全員の一致した見解でした。

平畠氏は、「AIの話をするとき必ず起こるのは、AIが人の仕事を奪うという議論です。しかし、外れることが少ないと言われる人口動態の推計でも、将来人口が減るとされている日本では、人口が減っても経済を上げていく術を考えなければなりません」と発言。そこで欠かせない要素がテクノロジーであるものの、そこへの民間企業のAIに対する投資が海外の先進国と比べて遅れていると指摘し、自身が担当するヘルスケア領域で集めた企業アンケートから、カルチャー変革の重要性を認識するとともに、危機感を持っているとの見解を示しました。

AI開発を積極的に進めるために必要なファクターをたずねたアンケート結果によると、技術的な要素より人間関係や上司のコミットメントといった、組織のカルチャーに関する回答が寄せられたとし、「AIの話は、技術的な側面に偏りがちですが、AIプロジェクトの推進においては技術に加えて文化の要素も強いので、トップからカルチャー変革を始め、会社として実態を捉えていかないと、なかなか成功には結び付かないのではないか」と付け加えました。


 

AI導入プロジェクトに不可欠なのは現場のリーダーシップ

AI導入プロジェクトを成功に導く上で、ポイントとなるカルチャー変革に不可欠なのは、現場のリーダーシップです。鷹取は過去の案件を例に挙げ、AIと生成AIのプロジェクトは内容が異なると述べ、AI導入プロジェクトは、AI開発者やデータサイエンティストがリーダーになるケースが多い一方、生成AIプロジェクトは、現場の方が鍵を握ると指摘。その理由として、「生成AIが導き出した結果の正否は、現場の判断によるからだ」と説明しました。生成AIを業務で使う場合、ある程度の権限を譲られた現場がリードする方が良いとし、「そうでないと、“攻めと守り”のちょうど良い平準点が見いだせない」とし、事例がうまく機能しなかった理由として、「生成AIを使って実践を」という企業トップの指示により、現場がリードできなくなり、実際に導入したのも現場が求めているものとはかけ離れていたケースがあったことから、「現場がリードしたケースは比較的成功率が高い」と付け加えました。

宮下もまた自身の経験から、必ずしも組織階級の上位がトップに立たなくても良いと考えており、使う人間の知見や知識を注入するのがAIのポイントになるものの、属人的なパワーだけに頼らず、一人一人のノウハウや知見を組織としていかに定着させていくかが求められていると発言。「とあるプロジェクト現場では、熱意を持ったかたのリーダーシップによって周囲が巻き込まれて推進が加速していくことを体験。特に生成AIプロジェクトでは、このようなリーダーシップが大事かもしれないと感じた」と語りました。

EY 島藤 孝弘
NVIDIA 呉 先超氏

パネルディスカッションのまとめで、EYの島藤 孝弘は、国内の金融機関と長く携わってきた感想として、「優秀な個人が多く、組織の力も強い日本が、世界に勝てないはずはない」と語り、どうすれば日本企業の生成AI事例が次々と紹介される世界になれるかを問いかけました。

 

「昔ながらの言葉で言えば、アニマルスピリッツ。いかに野心的に取り組むマインドを持つかが大事になってくると思う」との個人の見解に、平畠氏も賛同しました。エヌビディアが提供する金融サービス向けソリューションについて説明した呉 先超氏ら他の登壇者も一様に同意する中、宮下は「リードしていく一人の情熱が起点となりプロジェクトが促進されていくというのも、改めて肌で感じている」と付け加え、今後の日本の展開への期待を表しました。

【登壇者】

平畠 浩司 氏
エヌビディア合同会社
エンタープライズ事業本部シニアビジネスデベロップメントマネージャー

呉 先超 氏
エヌビディア合同会社
エンタープライズ事業本部 シニア・ソリューション・アーキテクト

島藤 孝弘
EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
パートナー 金融セクターリーダー

宮下 隆義
EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
パートナー 金融サービス・コンサルティング

鷹取 宏
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 
ディレクター デジタル・イノベーション AI&データ


NVIDIAと語るAIプロジェクト成功の要諦

サマリー

世界から遅れがちと指摘される日本におけるAIプロジェクト導入の取り組み。後追いになる真因は、技術面ではなく、組織を取り巻く文化にあると言えます。守りと攻めのバランスを考慮しつつ、顧客提供価値向上や新しいビジネスの創造にAIを取り入れていくには、何よりも先にカルチャー変革への取り組みが肝要となるでしょう。


EYとNVIDIAのアライアンス

EYとNVIDIAのアライアンスチームでは、AIなどの最先端テクノロジーを駆使して、企業が直面する緊急のビジネス課題の解決をサポートします。

EYのパートナー・エコシステム:戦略的リレーションシップとアライアンス

EYのパートナー・エコシステムを味方に、変革の時代に新たな価値を創造。貴社を支え、世界が直面する難題の答えを見つけるために力を合わせます。


ニュースリリース

EY、NVIDIA AIをベースに開発したEY.ai Agentic Platformをリリース 税務やリスク、ファイナンス分野含むマルチセクターの変革を推進

EYは、NVIDIAとの協業を通じて開発した人工知能(AI)であるEY.ai Agentic Platformをリリースしたことを発表しました。

2025年4月21日 EY Japan

EY Japan、NVIDIA AI Enterpriseを活用したDX支援サービスを提供開始
 - 生成AIや3Dアプリケーション分野の支援を強化 - 

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡)は本日、NVIDIA AI Enterpriseソフトウェア プラットフォーム*を活用し、仮想環境や3Dアプリケーション、生成AIといった高度かつ高速なデータ処理を要するテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する戦略構想策定・実装支援サービスの提供を開始します。

2024年11月13日 EY Japan + 1

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