新リース会計基準の貸手の会計処理及び開示の解説

新リース会計基準の貸手の会計処理及び開示の解説


情報センサー2025年2月 会計情報レポート


EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 宮﨑 徹

品質管理本部 会計監理部において、日本の会計基準に係る会計処理及び開示に関して相談を受ける業務、並びに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事するとともに、これまでリース業、製造業などの監査業務に従事。主な著書(共著)に『会社法決算書の読み方・作り方(第18版)』(中央経済社)がある。

EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 石川 仁

会計処理及び開示に関する相談業務、並びに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事するとともに、不動産業や機械製造業の会計監査業務に従事している。


Ⅰ はじめに

本稿では、2027年4月1日以後開始する年度から原則適用(2025年4月1日以後開始する年度から早期適用可)となる企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下、リース会計基準)及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下、リース適用指針。また、「リース会計基準」と「リース適用指針」を合わせて、「リース会計基準等」)における貸手の会計処理及び開示について解説します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者らの私見であることをあらかじめ申し添えます。

リース会計基準等は、国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(以下、IFRS第16号)及び米国財務会計基準審議会(FASB) Accounting Standards CodificationのTopic 842「リース」(以下、Topic 842)の公表により、現行のリース取引に係る会計基準である企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下、企業会計基準第13号)等と取扱いに特に差異が生じていた借手の負債認識に関して、国際的な比較可能性を高めるために、公表されました。この点、貸手の会計処理については、IFRS第16号及びTopic 842ともに抜本的な改正が行われていないため、次の点を除き、基本的に、企業会計基準第13号の定めを踏襲することとされています。

  • 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識会計基準)との整合性を図る点(ファイナンス・リース取引に係る会計処理の1つである、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法〈いわゆる第2法〉が廃止される点)

  • リースの定義及びリースの識別

リース会計基準等の適用に当たっては、まずリースを識別する必要がありますが、リースの定義及び識別については借手と貸手で同様の定めとなっているため、本稿では触れません。詳細は借手の会計処理及び開示を解説した情報センサー2024年12月「新リース会計基準の概要の解説」をご参照ください。


Ⅱ 貸手のリース期間

貸手のリース期間の決定については、継続して適用することを条件として、<表1>にあるいずれかの方法を選択することとされています。(1)の方法はIFRS第16号と整合的な方法ですが、借手による延長オプション又は解約オプションの行使可能性が合理的に確実か否かを評価することができる場合に借手のリース期間と同様に決定することを妨げる特段の理由がない等の理由から、(1)の方法も選択可能とされました。一方、(2)の方法は企業会計基準第13号のリース期間の定めを踏襲した方法です。
 

表1 貸手のリース期間

(1)借手のリース期間と同様に決定する方法

(2)借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間(事実上解約不能と認められる期間を含む)にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法


なお、(2)の方法に関して、リース会計基準では、日本における再リースの一般的な特徴として、「再リースに関する条項が当初の契約において明示されており、経済的耐用年数を考慮した解約不能期間経過後において、当初の月額リース料程度の年間リース料により行われる1年間のリースであることが挙げられる」とされています。

また、リースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかか否かを考慮するに当たって、借手のリース期間におけるオプションの行使可能性と同レベルの評価は求められないと考えられます。


Ⅲ 貸手におけるリースの分類

貸手の会計処理については、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めが踏襲されています。このため、借手と異なり、貸手においては、引き続きリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類することとなります。

ファイナンス・リースの定義(<表2>参照)やフルペイアウトの具体的な判定方法(<表3>参照)については、企業会計基準第13号の定めが踏襲されています。

表2 ファイナンス・リースの定義

ファイナンス・リースとは、次の(1)及び(2)のいずれも満たすリースをいう。

(1) 契約期間の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリース(解約不能のリース)

(2)借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース(フルペイアウトのリース)


表3 フルペイアウトの判定方法

次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リースと判定される。 

(1) 現在価値基準
貸手のリース料(リース会計基準第23項)の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90%以上であること

(2) 経済的耐用年数基準
貸手のリース期間(リース会計基準第16項)が、原資産の経済的耐用年数の概ね75%以上であること(ただし、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等を勘案すると、現在価値基準の判定結果が90%を大きく下回ることが明らかな場合を除く)


また、ファイナンス・リースについては、<表4>のいずれかに該当する場合、所有権移転ファイナンス・リースに分類し、いずれにも該当しない場合、所有権移転外ファイナンス・リースに分類することになります。この点についても企業会計基準第13号が踏襲されています。
 

表4 所有権移転ファイナンス・リースに該当する場合

以下(1)から(3)のいずれかに該当する場合、所有権移転ファイナンス・リースに分類する。

(1) 契約上、契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース

(2) 契約上、借手に対して、契約期間終了後又は契約期間の中途で、名目的価額又はその行使時点の原資産の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利(割安購入選択権)が与えられており、その行使が確実に予想されるリース

(3) 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース


Ⅳ 貸手のリースの会計処理

1. ファイナンス・リースの会計処理

(1) 基本となる会計処理

貸手のファイナンス・リースについて、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行うとされている点は、企業会計基準第13号と同様です。一方、収益認識会計基準において対価の受取時にその受取額で収益を計上することが認められなくなったことを契機としてリースに関する収益の計上方法を見直した結果、企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下、企業会計基準適用指針第16号)で定められていた3つの方法のうち、「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」(いわゆる第2法)は廃止されることとなりました。

リース適用指針では、貸手の基本となる会計処理について、<表5>のとおり定めています。

表5 ファイナンス・リースの基本となる会計処理

 

事業の一環で行うリース

事業の一環以外で行うリース

製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース

製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース

所有権移転外ファイナンス・リース

①リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上する。また、原資産の帳簿価額により売上原価を計上する。原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を売上原価に含める*1

②各期に受け取る貸手のリース料(以下、受取リース料)を利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、後者をリース投資資産の元本回収額として会計処理を行う

①リース開始日に、原資産の現金購入価額(原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める)により、リース投資資産を計上する

②受取リース料の会計処理は、左記②と同様とする

①リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額と原資産の帳簿価額との差額を売却損益として計上し、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額でリース投資資産を計上する。原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を含めて売却損益に計上する*2

②受取リース料の会計処理は、左記②と同様とする

所有権移転ファイナンス・リース

所有権移転外ファイナンス・リースの場合の会計処理と同様とする(この場合、上記の「リース投資資産」は「リース債権」となる)。また、割安購入選択権がある場合、当該割安購入選択権の行使価額を貸手のリース料及び受取リース料に含める

 

*1  ただし、売上高と売上原価の差額(以下、販売益相当額)が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、原資産の帳簿価額(付随費用がある場合はこれを含める)をもって売上高及び売上原価とし、販売益相当額を利息相当額に含めて処理することができる。

 

*2  ただし、当該売却損益が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、当該売却損益を利息相当額に含めて処理することができる。

(2) 利息相当額の各期への配分

リース会計基準等では、利息相当額の各期への配分に関して、原則的な取扱い及び簡便的な取扱いのいずれも現行と同様の取扱いとすることとされています(<表6>参照)。

表6 貸手の利息相当額の配分方法

 

所有権移転外
ファイナンス・リース

所有権移転
ファイナンス・リース

原則的な取扱い

利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に利息法により配分する。

同左

簡便的な取扱い

貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合、利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができる。ただし、リースを主たる事業としている企業は、当該取扱いを適用できない。

上記の「貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合」とは、未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が、当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10%未満である場合をいう。

簡便的な取扱いは設けられていない。


2. オペレーティング・リースの会計処理

貸手のオペレーティング・リースについては、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うとされ、貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で収益に計上することとされています。ただし、貸手のリース期間について、<表1>の(2)の方法を選択して決定する場合に当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額(ただし、将来の業績等により変動する使用料を除く)について契約期間にわたり計上することとされています。

なお、上記の無償賃貸期間には、いわゆるフリーレント※1(契約開始当初数カ月間賃料が無償となる契約条項)やレントホリデー(数年間賃貸借契約を継続する場合に一定期間賃料が無償となる契約条項など)が含まれます。

例えば、リース期間3年のうち当初6カ月の賃料が無償で、残り2年6カ月は毎月12のリース料が発生するケースでは、3年間のリース料合計360(=12×30カ月)をリース期間36カ月で割ると10となるので、リース期間を通じて毎月10を収益に計上することになります(<図1>参照)。

図1 フリーレント期間がある場合

図1 フリーレント期間がある場合
出所:EY作成

※1 現行の実務においても、フリーレント期間がある場合には、リース料総額についてフリーレント期間を含む契約期間にわたって均等に按分して収益を認識していることが多かったと考えられるが(会計制度委員会研究報告第13号「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号『収益』に照らした考察-」のケース48参照)、リース適用指針においてフリーレントの取扱いが明確化された。


Ⅴ サブリース取引

1. 基本となる会計処理

リース会計基準等では、「サブリース取引」とは、原資産が借手から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手の間のリースが依然として有効である取引と定義されています。また、当初の貸手と借手の間のリースを「ヘッドリース」、ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」、中間的な貸手と第三者の間のリースを「サブリース」と定義した上で、サブリース取引について、IFRS第16号と同様にヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うこととされています(<図2>参照)。

リースを事業の一環として行っている貸手においては、その事業の一形態としてサブリース取引を行っていることも考えられるため、貸手を中心としている本稿において解説します。

図2 サブリース取引の基本的な会計処理

図2 サブリース取引の基本的な会計処理
出所:リース適用指針を基にEY作成

IFRS第16号においては、本会計処理に対する例外は設けられていませんが、リース会計基準等では、サブリース取引の例外的な定めとして、「中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合」の取扱いと「転リース取引」の取扱いを定めています。
 

2. 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合

中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合については、<表7>のとおり、一定の要件を満たした場合に例外的な会計処理ができるとされています。

これは、我が国の不動産取引において、法的にヘッドリースとサブリースがそれぞれ存在する場合であっても、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行い、貸借対照表において資産及び負債を計上することが取引の実態を反映しない場合があるとの意見が聞かれたことを受けて、ASBJで審議された結果、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で、我が国における例外的な取扱いを定めることとされたものです。

表7 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の要件及び会計処理

要件

中間的な貸手において、次の要件をいずれも満たす取引

(1)中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払いを受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない

(2)中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である

(3)中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない

①サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む)

②サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法

会計処理

ヘッドリースにおける使用権資産及びリース負債を貸借対照表に計上せず、サブリースにおいて受け取るリース料の発生時又は当該リース料の受領時のいずれか遅い時点で、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上することができる

3. 転リース取引

転リース取引とは、サブリース取引のうち、ヘッドリースの原資産の所有者から当該原資産のリースを受け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引とされています。企業会計基準適用指針第16号における転リース取引の取扱いについては、主に機器等のリースについて仲介の役割を果たす中間的な貸手の会計処理として実務に浸透しているため、<表8>のとおり、リース会計基準等では、当該取扱いをサブリース取引の例外的な取扱いとして、企業会計基準適用指針第16号の定めを変更せずに認めることとされています。

表8 転リースの要件及び会計処理

要件

中間的な貸手において、転リース取引のうち、貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当するとき

会計処理

(1)貸借対照表上、リース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上する

(2)損益計算書上、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で計上する


*リース債権又はリース投資資産とリース負債は利息相当額控除後の金額で計上することを原則としつつ、利息相当額控除前の金額で計上することもできるとされている。


Ⅵ 開示

1. 表示

貸手の会計処理について、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲しており、貸手の表示についても、<表9>のとおり、企業会計基準第13号を踏襲しています。

表9 貸手の表示

貸借対照表

表示
区分

当該企業の主目的たる営業取引により発生したものである場合

リース債権及びリース投資資産について、流動資産に表示する

当該企業の主目的たる営業取引以外の取引により発生したものである場合

リース債権及びリース投資資産について、貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に入金の期限が到来するものは流動資産に表示し、入金の期限が1年を超えて到来するものは固定資産に表示する

表示
方法

原則

リース債権及びリース投資資産のそれぞれについて、貸借対照表において区分して表示する又はそれぞれが含まれる科目及び金額を注記する

容認

リース債権の期末残高が、当該期末残高及びリース投資資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合、リース債権及びリース投資資産を合算して表示又は注記することができる

損益計算書

表示
方法

次の事項について、損益計算書において区分して表示する又はそれぞれが含まれる科目及び金額を注記する

(ⅰ)ファイナンス・リースに係る販売損益(売上高から売上原価を控除した純額)

(ⅱ)ファイナンス・リースに係るリース債権及びリース投資資産に対する受取利息相当額

(ⅲ)オペレーティング・リースに係る収益(貸手のリース料に含まれるもののみを含める)

2. 注記

(1) 開示目的

開示目的を定めることで、リースの開示の全体的な質と情報価値が開示目的を満たすのに充分であるかどうかを評価することを企業に要求することになり、より有用な情報が財務諸表利用者にもたらされると考えられるため、リースに関する情報を注記するに当たっての開示目的(借手又は貸手が注記において、財務諸表本表で提供される情報と併せて、リースが借手又は貸手の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示すること)を定めています。

(2) 貸手の注記方針

貸手の会計処理について、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲することとしたため、貸手の注記事項についても、企業会計基準第13号の定めを踏襲することが考えられました。

しかし、貸手の会計処理を基本的に変更しないとしても、国際的に貸手の注記事項が拡充する中で貸手の注記事項を拡充すべきであるとする財務諸表利用者を中心とした意見があったこと、リースの収益に関連する注記事項は、リースを本業とする企業などのリースが財務諸表に重要な影響を与える企業において重要な情報とあると考えられ、リースを適用対象外としている収益認識会計基準では、重要性のある収益に関する情報を注記することを企業に求めており、リースに関する収益が収益の一形態であることを考慮すれば、収益認識会計基準と同様の注記を求めることが有用と考えられること、収益認識会計基準と同様の内容ではないもののIFRS第16号で求められている注記事項についても、企業会計基準第13号に同様の定めがあり、リース料の支払いが通常分割して行われることを考慮した際に将来のリースのキャッシュ・フローの予測と流動性の見積りをより正確に行うことを可能とする観点で有用な情報を適用すると考えられることから、貸手の注記事項について、IFRS第16号と整合的なものとしています。

(3) 貸手の具体的な注記事項

開示目的を達成するため、貸手のリースに関する注記として、<表10>の事項を注記します。

表10 貸手の注記事項

 

注記事項

具体的な記載内容

貸手の
注記
事項

ファイナンス・リース

リース特有の取引に関する情報

リースが企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、次の事項を注記する

(ⅰ)貸借対照表において、リース料債権部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額等を区分して表示していない場合の注記(各金額)

(ⅱ)損益計算書において、リース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を区分して表示していない場合の注記(当該収益が含まれる科目及び金額)

当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する

(ⅰ)リース債権の残高に重要な変動がある場合のその内容

(ⅱ)リース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容

(ⅲ)リース債権に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

(ⅳ)リース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

オペレーティング・リース

リース特有の取引に関する情報

リースが企業の経営成績に与える影響を理解できるよう、次の事項を注記する

(ⅰ)損益計算書において、オペレーティング・リースに係る貸手のリース料に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を区分して表示していない場合の注記(当該収益が含まれる科目及び金額)

当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する

(ⅰ)オペレーティング・リースに係る貸手のリース料について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

全般
事項
  • 開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができる
  • 注記を記載するに当たり、上記の注記事項の区分に従って注記事項を記載する必要はない
  • リースに関する注記を独立の注記項目とする。ただし、他の注記事項に既に記載している情報については、繰り返す必要はなく、当該他の注記事項を参照することができる
  • 上記に掲げる注記事項以外であっても、開示目的を達成するために必要な情報は、リース特有の取引に関する情報として注記する

(4) 現行の企業会計基準第13号等の注記事項との主な相違点

<表10>の貸手の注記事項について、現行の企業会計基準第13号等の注記事項との主な相違点をまとめると<表11>のとおりです。

表11 現行の企業会計基準第13号等の注記事項との主な相違点

注記事項

相違点

ファイナンス・リースの貸手の注記

リース特有の取引に関する情報

新設された注記事項であり、企業会計基準第13号等では求められていなかった

当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

(ⅰ)及び(ⅱ)は新設された注記事項であり、企業会計基準第13号等では求められていなかった

(ⅲ)及び(ⅳ)は企業会計基準第13号等でも同等の注記が求められていた

オペレーティング・リースの貸手の注記

リース特有の取引に関する情報

新設された注記事項であり、企業会計基準第13号等では求められていなかった

当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

(ⅰ)について、主に以下の点で相違している

  • 企業会計基準第13号等では対象が解約不能のものに限られていたが、リース会計基準等では限定されていない
  • 企業会計基準第13号等では重要性が乏しい場合には注記不要とされており、注記に含める必要のない重要性が乏しい場合が具体的に定められていた(短期や少額なリースなど)が、リース会計基準等では全般事項として重要性が乏しい場合は注記不要とされているのみであり具体的な定めはない
  • 企業会計基準第13号等では1年以内と1年超とに区分することが求められていたが、リース会計基準等では5年以内における1年ごと及び5年超に区分することが求められている

(5) 連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項

連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、貸手の注記のうちの「リース特有の取引に関する情報」及び「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」について注記しないことが認められています。

開示に関して、リース会計基準等に基づく連結財務諸表における開示の定めと個別財務諸表及び中間財務諸表との関係は、<表12>のとおりとなります。

表12 連結財務諸表における開示の定めと個別財務諸表及び中間財務諸表との関係

項目

リース会計基準等の定め

個別
財務諸表

中間
財務諸表

表示

区分表示が求められているものに関する注記

リース会計基準第52項、第53項

注記する

注記不要*1

注記事項

リース特有の取引に関する情報

 

リース適用指針第94項、第96項、第103項~第105項、第108項

省略可*2注記不要*3

当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報

 

リース適用指針第106項~第107項、第109項

省略可*2注記不要*3


*1 中間財務諸表において表示又は注記が求められる科目は、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」の定めに基づいて判断される。

 

*2 連結財務諸表を作成している場合、注記しないことができる(リース適用指針第110項)。

 

*3 企業(集団)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要な事項となる場合には、中間会計基準においてその他の事項として注記が求められる。

Ⅶ 経過措置

1. 基本方針

リース会計基準等では、会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間すべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとの経過措置が定められています。

この経過措置を適用する場合、貸手は、適用初年度においては、リース会計基準第55項の貸手の注記は比較情報に記載せず、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に定める事項を記載することとなります。
 

2. 貸手の具体的な経過措置

貸手の経過措置は具体的には<表13>のとおりに定められています。

表13 主な貸手の経過措置

①リースの識別に関する経過措置

  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用しているリース取引に、契約にリースが含まれているか否かを判断することを行わずに会計基準を適用することができる
  • 適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第13号を適用していない契約について、当該時点で存在する事実及び状況に基づいて、契約にリースが含まれているかどうかを判断することができる

②貸手に関する主な経過措置

(ⅰ)ファイナンス・リース取引に分類していたリース

適用初年度の前期末日におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額のそれぞれを適用初年度の期首の帳簿価額とすることができる等

 

(ⅱ)オペレーティング・リース取引に分類していたリース等

適用初年度の期首に締結された新たなリースとして、会計基準を適用することができる

 

(ⅲ)サブリース取引

適用初年度の期首時点における残りの契約条件に基づいて、ファイナンス・リースに分類されたものに対し、適用初年度の期首に新たに締結された新たなファイナンス・リースとして会計処理を行う

③IFRSを適用している企業に関する経過措置

IFRSの経過措置又は初度適用の免除規定を適用し、IFRSの数値を個別財務諸表に適用できる(ただし、連結内で相殺消去されていたリースに各種の経過措置を適用することができる)



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