2026年3月期の四半期及び中間決算上の留意事項

2026年3月期の四半期及び中間決算上の留意事項


情報センサー2025年7月 会計情報レポート


EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 大竹 勇輝
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 久保 慎悟

品質管理本部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事している。


Ⅰ はじめに

2026年3月期においては、グローバル・ミニマム課税制度が適用2年目となり、また、防衛特別法人税についてはまだ適用されていませんが、翌年度である2026年4月1日以降に開始する年度から適用されるため、これらの税制に関連する会計処理等について留意が必要となります。加えて、企業会計基準委員会(以下、ASBJ)の年次改善プロジェクトにより改正された複数の企業会計基準等が原則適用となることから、会計処理等について留意が必要になります(第Ⅳ章参照)。さらに、各国政府における関税の賦課等の動きがあり、これによる会計処理等の影響も留意が必要です(第Ⅴ章参照)

なお、ベンチャーキャピタルファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いを見直す改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」、及びリースの借手に係る会計処理等が大きく変更となる企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(関連して改正となる複数の会計基準等を含む)については、2026年3月期から早期適用可能となることから、仮に早期適用した場合には会計処理等について留意が必要になります。

本稿では、これらを中心に2026年3月期における四半期及び中間決算で留意すべき検討ポイントについて解説します。

本文中で使用する会計基準等の略称及び適用開始時期は<表1>のとおりです。

なお、文中の意見にわたる部分は筆者らの私見であることをあらかじめお断りします。
 

表1 会計基準略称及び適用時期の一覧

適用開始時期

会計基準等の名称等

略称

2026年3月期の期首から原則適用

ASBJの年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正

改正企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」

改正包括利益会計基準

改正企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」

改正株主資本等適用指針

改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」

改正法人税等会計基準

改正企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

改正税効果適用指針

改正実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」

改正実務対応報告第10号

2027年3月期の期首から原則適用
2026年3月期の期首から早期適用可能

ベンチャーキャピタルファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの見直し

改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」

改正金融商品会計実務指針

2028年3月期の期首から原則適用
2026年3月期の期首から早期適用可能

借手のすべてのリースを基本的にオンバランスすることになるリース関連会計基準等の改正

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」
企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」 他

新リース会計基準等


Ⅱ グローバル・ミニマム課税制度に係る四半期及び半期における取扱い

2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20カ国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework on Base Erosion and Profit Shifting)」において、当該枠組みの各参加国により合意が行われた第2の柱「グローバル・ミニマム課税」には、所得合算ルール(IIR : Income Inclusion Rule )、軽課税所得ルール(UTPR : Undertaxed Profits Rule )及び国内ミニマム課税(QDMTT : Qualified Domestic Minimum Top-up Tax )の3つのルールがあります。

日本においては、2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)において、グローバル・ミニマム課税制度が創設され、前記の3つのルールのうちIIRに係る取扱いが定められました。当該IIRに係る取扱いは、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされています。また、2025年3月31日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第13号)において、UTPR及びQDMTTに係る取扱いが定められ、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用することとされています。
 

1. 当四半期会計期間等を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等

実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下、実務対応報告第46号)では、四半期(連結)財務諸表及び中間(連結)財務諸表において、当面の間、当四半期会計期間及び中間会計期間等を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができるとされています(実務対応報告第46号第7項)。

このため、2025年3月期の四半期及び半期と同様に、2026年3月期の四半期及び半期においても、2026年3月期に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しない代替的な取扱いを適用することができます。

一方、2025年3月期は、グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度であり、以下の理由から当該代替的な取扱いを適用した場合でも、四半期財務諸表等において、当該代替的な取扱いを適用した旨の開示は求められていませんでした(実務対応報告第46号第15項、BC33項)。

グローバル・ミニマム課税制度は2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されることとなるが、当該制度に関連する法令等の公表から当該制度の適用開始までの期間が短く、また、本実務対応報告の公表から適用までの準備期間も短いことから、特に適用初年度については、当四半期会計期間等を含む対象会計年度においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が生じるかどうかの判断をすることは困難であると考えられる。

2026年3月期は、グローバル・ミニマム課税制度の適用2年目となることから、実務対応報告第46号第7項の代替的な取扱いを適用した場合には、その旨を注記する必要がある点に留意が必要です(実務対応報告第46号第13項)。
 

2. 前期末に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等について見積りの変更を行った場合の取扱い

グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り、損益に計上するとされています(実務対応報告第46号第6項)。

しかし、特にグローバル・ミニマム課税制度の適用初年度であった2025年3月期については、当該制度の特徴から、当該制度に係る法人税等の見積りが困難であるため、適用初年度において従来の財務諸表の作成にあたって入手している以上の情報を入手できない場合に考えられる見積りの例が、ASBJより、補足文書「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等に関する見積りについて」(以下、補足文書)として公表されており、当該補足文書も参考に見積りが行われていたと考えられます。

一方、グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度の申告及び納付期限は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年6カ月以内とされており、適用初年度の翌年度以降は、情報を入手する体制の構築等により申告に向けて入手可能となる情報が増加する場合もあると考えられます。

このため、仮に当四半期会計期間及び中間会計期間等において、前期末において見積ったグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等について、新たな情報が入手できたことで、当該見積りを変更することも考えられます。この場合、前期末において財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積っている限り、当該差額は誤謬(ごびゅう)にはあたらず、当期の損益として処理することになると考えられます(実務対応報告第46号BC11項参照)。


Ⅲ 四半期及び中間特有の処理を採用した場合の防衛特別法人税が及ぼす影響

1. 税制の概要

防衛特別法人税の額は、法人税額から500万円を控除した額を課税標準とし、当該金額に4%の税率を乗じて計算した金額とするとされています。また、防衛特別法人税は、2026年4月1日以後開始する事業年度から課せられます。

3月決算の会社については、2026年3月期の年度決算において、当該防衛特別法人税の影響を加味した上で、繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を算定していたと考えられます。四半期及び中間決算において、年度決算と同様の方法により税金費用を計上している場合には、2026年3月期の年度決算と同様に、防衛特別法人税の影響を加味することに繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を算定することになります。

一方、四半期及び中間特有の会計処理を適用している場合、防衛特別法人税の影響をどのように織り込むのか、以下で解説します。
 

2. 四半期及び中間特有の会計処理に及ぼす影響

(1) 基本的な取扱いについて

四半期及び中間特有の会計処理による場合、四半期会計期間及び中間会計期間を含む事業年度の税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益及び税引前中間純利益に当該見積実効税率を乗じて税金費用を計算することとされています(企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」第14項ただし書き、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」第18項ただし書き)。

また、適用する税率が単一である場合には、一時差異の変動は、税引前四半期純利益に対する税金費用(法人税等と法人税等調整額の合計)に影響を与えないため、見積実効税率を算定する際の予想年間税金費用の見積りにあたっては、(予想年間税引前当期純利益±一時差異等に該当しない項目)×法定実効税率の算式により計算されます(企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、四半期適用指針)第19項、企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、中間適用指針)第18項、企業会計基準適用指針第29号「中間財務諸表における税効果会計に関する適用指針」(以下、中間税効果適用指針)第12項)。

一方、2026年3月期の法定実効税率については、防衛特別法人税の影響は加味されませんが、防衛特別法人税の適用に伴い、2027年3月期以降の法定実効税率については、防衛特別法人税の影響が加味されることになり、複数の税率が生じることとなります。この場合、当該期間中に発生した一時差異等の一部を、防衛特別法人税を含まない法定実効税率で繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する結果、事業年度の法人税等調整額及び税効果適用後の実効税率に影響が生じる場合があります。

この点、既に廃止された実務対応報告ではありますが、実務対応報告第29号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い」(以下、実務対応報告第29号)における考え方が参考になると考えられます。

ここで、実務対応報告第29号では、適用される税率が複数のときは、中間税効果適用指針第12項に準じて見積実効税率を算定することが示されており、次の算式により見積実効税率を算定することが考えられます。

見積実効税率

*1 予想年間納付税額は、年間の課税所得を見積り、当期の税率により計算する。
*2 予想年間法人税等調整額は、繰延税金資産及び繰延税金負債の増減を見積ることにより計算される、年間ベースの法人税等調整額の予想額である。

上記の取扱いによる場合、当期末に予想される一時差異等を見積る必要がありますが、四半期適用指針及び中間適用指針の定めに従い、<表2>の簡便的な取扱いを適用することができます。
 

表2 簡便的な取扱い

項目

簡便的な取扱い

当年度の期首の一時差異等

一定の状況にある場合*

前年度末における繰延税金資産の回収可能性の検討において使用した将来の業績予測、タックス・プランニング、一時差異等のスケジューリングを利用することができる。

一定の状況にない場合

前年度末の検討において使用したものに、経営環境の著しい変化又は一時差異等の大幅な変動による影響を加味したものを使用することができる。

一時差異等の見積り

財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、重要な項目に限定する方法によることができる

*  一定の状況にある場合とは、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境に著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合である。

上記の取扱いについて、具体的な数値例を用いると<設例>のとおりとなります。

設例

前提条件

① 当第1四半期会計期間に係る税引前四半期純利益は1,000、四半期会計期間中の将来減算一時差異の変動額は200(前期末残高1,500、当第1四半期末残高1,700)、交際費(損金不算入)は100であるとする。

② 四半期会計期間を含む事業年度(2026年3月期)に係る予想年間税引前当期純利益は4,000、事業年度中の将来減算一時差異の変動額は600(前期末(当期首)残高1,500、予想当期末残高2,100)、交際費(損金不算入)は400であると予想する。

③ 2025年3月期に改正税法が公布され、法定実効税率は30.62%から、2027年3月期以降は31.52%になった。

④ 当第1四半期末の将来減算一時差異1,700は、2027年3月期以降解消すると見込まれる。また、前期末の将来減算一時差異1,500は、2026年3月期に1,000、2027年3月期以降に500が解消すると見込まれる。

⑤ 前期末において、すべての将来減算一時差異等について繰延税金資産の回収可能性があると判断していた。繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、経営環境等に著しい変化は生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前期末から大幅な変動がないと認められるものと仮定する。また、当期末に予想される将来減算一時差異2,100には前期末残高から繰り越された500を含み、2027年3月期以降に全額が解消すると見込まれる。

⑥ 税金費用は、法人税等調整額を含むことに留意する。

見積実効税率の計算

① 予想年間納付税額の計算

① 予想年間納付税額の計算

② 予想年間法人税等調整額の計算

② 予想年間法人税等調整額の計算

(※)複数税率による影響:当期末に新たに生じた将来減算一時差異等1,600(前期末一時差異のうちの当期解消額1,000+将来減算一時差異の変動額600)×(31.52%-30.62%)=14

③ 見積実効税率の計算

③ 見積実効税率の計算

なお、複数税率を考慮しない場合、見積実効税率は、33.68%((予想年間税引前当期純利益4,000+交際費損金不算入400)×法定実効税率30.62% ÷予想年間税引前当期純利益4,000)となります。したがって、複数税率による影響率は、0.35%となります。

税金費用の計算

税金費用の計算

仕訳

仕訳

(2) 複数税率の影響が重要ではない場合の取扱いについて

当事業年度に新たに発生が見込まれる一時差異等が、防衛特別法人税が課せられる翌事業年度以降に解消される場合には、四半期及び中間特有の会計処理により税金費用を計算すると複数税率による影響が生じることとなります(<設例>参照)。

しかし、当事業年度に新たに発生が見込まれる一時差異等の額が重要ではない場合など、税効果会計の計算に適用される税率が複数であることによる影響が重要ではないと見込まれる場合には、実務対応報告第29号で示されていた考え方を参考にして、中間税効果適用指針第12項に準じた次の算式による見積実効税率(見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合は、法定実効税率)により税金費用を計算することができると考えられます。

見積実効税率

* 予想年間税金費用=(予想年間税引前当期純利益±一時差異等に該当しない差異)×法定実効税率

Ⅳ ASBJの年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正

2024年11月、ASBJは、2024年4月1日を基準日として既に公表している企業会計基準等の要変更事項の検出作業を実施し、当該作業により検出された事項及び当該作業後の企業会計基準の開発の過程で検出された事項について、変更後の記載及び「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」に基づいて必要とされる手続を検討した上で、複数の企業会計基準等の改正及び修正を公表しました。なお、これら一連のプロセスを2024年年次改善プロジェクトと呼称しています。

当該2024年年次改善プロジェクトにより改正された会計基準等は以下のとおりです。

<包括利益の表示に関する改正>
・改正包括利益会計基準
・改正株主資本等適用指針

<特別法人事業税の取扱いに関する改正>
・改正法人税等会計基準
・改正税効果適用指針

<種類株式の取扱いに関する改正>
・改正実務対応報告第10号


1. 包括利益の表示に関する改正

(1) 改正の背景

企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」は、公表された当初より、個別財務諸表には適用しないこととされていることから、包括利益の開示は連結財務諸表においてのみ行われています。一方で、その他の包括利益の内訳項目(例えば、その他有価証券評価差額金)については、包括利益の連結財務諸表における開示が行われる以前から、個別財務諸表と連結財務諸表を区別せずに、会計基準等により会計処理や用語が定められていました。そして、当該会計基準等については、包括利益の開示が連結財務諸表において行われることとなった以後も、当該連結財務諸表上の取扱いに即した用語を追加すること等は行われていませんでした。そこで、その他の包括利益の取扱いに関して、既に公表されている複数の会計基準等で使用されている用語の一部を、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現とするべく、改正包括利益会計基準及び改正株主資本等適用指針において用語の見直しが行われました。

(2) 改正の内容(改正包括利益会計基準第16項及び第42-3項、改正株主資本等適用指針第11-2項及び第21-2項並びに設例3から設例5)

改正包括利益会計基準では、既に公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上においては「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるものとされました。改正株主資本等適用指針では、連結株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額を主な変動事由ごとに表示する場合の例として、「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されていたため、用語について見直しが行われました。

なお、用語の見直しにあたっては、同様の区分により内訳を示している改正包括利益会計基準と用語の統一を図ることで、連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書と連結株主資本等変動計算書の連携が理解しやすくなると考えられるため、「組替調整額」及び「当期発生額」という用語に変更することとされました。

(3) 改正による影響

① 改正包括利益会計基準

本改正は従前の取扱いを維持することを明確化するものであり、改正の対象となる用語(例えば、「純資産の部に直接計上」)については、改正前より、多くの連結財務諸表作成者において、適当な意味を有する用語(例えば、「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」)に読み替えられて運用されてきたものと考えられます。このため、本改正による2026年3月期の四半期決算及び中間決算への影響は極めて限定的であると考えられます。

② 改正株主資本等適用指針

本改正により、連結株主資本等変動計算書について、株主資本以外の各項目の主な変動事由及びその金額を表示する方法を採用している場合には、その他の包括利益累計額に属する項目の変動事由の記載が変更になる可能性があります。具体的には、例えば、連結株主資本等変動計算書において、その他有価証券評価差額金の変動事由として「その他有価証券の売却による増減」や「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」の記載をしていた場合には、それぞれ「当期発生額」や「組替調整額」に変更する必要があると考えられます。ただし、四半期において連結株主資本等変動計算書は開示されず、半期においても第一種中間連結財務諸表には連結株主資本等変動計算書は含まれないため、第二種中間連結財務諸表を作成する企業の場合にのみ、2026年3月期の中間決算において影響が生じることになります。
 

2. 特別法人事業税の取扱いに関する改正

(1) 改正の背景

改正前の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより特定して会計処理及び開示について定めていましたが、「特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律」(平成31年法律第4号)における特別法人事業税の取扱いについては個別の定めが設けられていませんでした。このため、改正法人税等会計基準では、特別法人事業税の取扱いの明確化を図るための改正が行われるとともに、改正税効果適用指針では、税効果会計における特別法人事業税の取扱いについても所要の改正が行われました。

(2) 改正の内容

① 改正法人税等会計基準(改正法人税等会計基準第4項(4-2)、第5項、第9項、第13項、第14項、第15項、第29-11項、第29-12項、第40-2項及び第40-3項)

改正法人税等会計基準では、特別法人事業税の地方税法の規定により計算した所得割額(税率については地方税法に規定する標準税率による)によって課すもの(以下、特別法人事業税(基準法人所得割))について、事業税(所得割)と同様の取扱いを行うこととなることを明確化するための変更が行われました。

また、開示に関する定めについて、「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例を示していることがより明確となるように表現の変更が行われました。

② 改正税効果適用指針(改正税効果適用指針第4項(11)、第46項、第74-2項及び第150-2項並びに設例10及び設例11)

改正税効果適用指針では、法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることが明確化されるとともに、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めに関して、特別法人事業税は国税であるため、特別法人事業税(基準法人所得割)について法人税及び地方法人税と同様の取扱いが行われることが明確化されました。

(3) 改正による影響

本改正は法人特別事業税(基準法人所得割)について事業税(所得割)と同様に取り扱うことを明確化したものであることから、改正前において、法人特別事業税(基準法人所得割)を事業税(所得割)と異なる取扱いにしていた場合には、本改正による影響は一定程度生じると考えられます。具体的には、従前、「法人税、住民税及び事業税」等の科目以外の科目に計上していた法人特別事業税(基準法人所得割)について、「法人税、住民税及び事業税等」の科目に含めることになると考えられ、また、繰延税金資産および繰延税金負債の算定の基礎となる法定実効税率にも反映することになると考えられます。そして、適用上の経過措置の定めはあるものの、適用初年度における累積的影響額を算定し、原則として、比較年度の財務諸表から反映する必要があります。

一方で、改正前において、法人特別事業税(基準法人所得割)を事業税(所得割)と同様に取り扱っていた場合には、本改正による影響は生じないと考えられます。なお、改正前においては、法人特別事業税に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しなかったと考えられることから、法人特別事業税(基準法人所得割)を事業税(所得割)と同様に取り扱っていたことは、会計基準等の定めが明らかでない場合において採用した会計処理方法の1つとして整理されると考えられます。
 

3. 種類株式の取扱いに関する改正

(1) 改正の背景

改正前の実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(以下、改正前実務対応報告第10号)では、適用対象となる種類株式に関する定めについて、会社法の施行に伴い削除された商法(以下、旧商法)の条文を参照したままとなっており、会社法の施行後においても適用対象となる種類株式の定義について修正等は行われていませんでした。このため、適用対象となる種類株式の定義を、会社法第108条第1項を参照する形に変更されました。

(2) 改正の内容

改正実務対応報告第10号では、当該実務対応報告の適用対象となる種類株式について、会社法第108条第1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準となる株式以外の株式として定義することとされました。

この点、会社法第108条第1項では、旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能とされ、旧商法で認められていた種類の株式についても設計の柔軟化が図られているため、会社法第108条第1項を参照する定義とすることにより、改正実務対応報告第10号の適用対象は、改正前には想定されていなかった種類株式に拡大することとなります。

(3) 改正による影響

本改正は種類株式の貸借対照表価額に関する取扱いについて対象範囲を拡大するものであることから、改正前において、改正前実務対応報告第10号において明示的に種類株式とされていたもの以外の株式について、改正前実務対応報告第10号の定めとは異なる会計処理を行っていた場合には、本改正による影響が一定程度生じると考えられます。一方で、改正前において、改正前実務対応報告第10号において明示的に種類株式とされていたもの以外の株式についても改正前実務対応報告第10号の定めを参考にして会計処理していた場合には、本改正による影響は生じないと考えられます。なお、改正前において、改正前実務対応報告第10号において明示的に種類株式とされていたもの以外の株式について改正前実務対応報告第10号の定めを参考にして会計処理を行っていたとしても、経済的実態をより忠実に表現する会計処理である場合には、当該会計処理は否定されないと考えられます。


Ⅴ 各国政府における関税の賦課等による会計処理及び開示への影響

近年、各国政府において関税の賦課に関するさまざまな動きがあり、会計処理及び開示に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられます。このような各国政府の動向は非常に流動的であり、最新の状況を常に把握することが重要と考えられます。

以下では、各国政府における関税の賦課等による会計処理及び開示への影響として考えられる主要なものを例示します。

1. 将来キャッシュ・フローの見積りへの影響

四半期又は半期においても、減損の兆候が把握された場合の固定資産の減損に係る会計上の見積りや経営環境等に著しい変化が生じた場合の繰延税金資産の回収可能性の判断に係る会計上の見積りにおいては、不確実な将来キャッシュ・フローについて一定の仮定をおいて見積っている場合があると考えられます。この点、四半期決算日又は中間決算日において将来キャッシュ・フローを見積る場合には、各国政府の立法機関等において関税の賦課に係る法律等が成立しているときは、当該関税の賦課による影響そのものを織り込む必要があると考えられます。一方、四半期決算日又は中間決算日において関税の賦課に係る法律等が成立しておらず、四半期決算日又は中間決算日後において当該法律等が成立した場合には、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税法の取扱い(「税効果会計に係る会計基準」第四4、同注解(注7)前段、改正税効果適用指針第44項参照)を準用し、四半期決算日又は中間決算日において立法機関等で成立している法律等を基準に会計処理を行う、すなわち、当該関税の賦課による影響そのものを織り込むことはできないと考えられます。

また、関税の賦課が発生している又は発生する可能性が高い等を理由にして、生産拠点の変更や商流の変更を決定している又は予定している場合には、その影響を将来キャッシュ・フローの見積りに反映することが考えられます。ただし、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性に係る将来キャッシュ・フローは、適切な権限を有する機関(取締役会等)の承認を得た業績予測(中長期計画等)の前提となった数値を基礎とすることとされていますので(企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下、減損適用指針)第36項、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」第32項)、当該機関の承認を得た業績予測等に織り込まれていることが前提となる点に留意が必要と考えられます。
 

2. 商製品の販売価格への影響

関税の賦課が発生している又は発生する可能性が高い等を理由にして、商製品の販売価格を引き下げる可能性があると考えられます。この結果、四半期決算日又は中間決算日において正味売却価額(売価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの)を見積った場合において、当該正味売却価額が取得原価よりも下落しているときは、原則として、取得原価と正味売却価額との差額を費用処理する必要がある点に留意が必要と考えられます(企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第7項)。
 

3. 投資計画への影響

関税の賦課が発生している又は発生する可能性が高い等を理由にして、四半期決算日又は中間決算日までに、生産拠点の変更について意思決定が行われる場合があると考えられます。四半期決算日又は中間決算日までに生産拠点の変更を意思決定している場合には、既存の生産拠点に係る有形固定資産等について、固定資産の減損におけるグルーピングの変更の要否や減損の兆候の有無を検討する必要があります(四半期適用指針第14項、中間適用指針第13項、減損適用指針第8項、第72項、第13項、第82項)。なお、前年度末においては生じていなかったが、四半期決算日又は中間決算日までに関税の賦課が発生している又は発生する可能性が高い等の状況に至った場合には、経営環境の著しい悪化に該当する可能性があり、四半期又は半期においても、当該関税の賦課が生じている又は発生する可能性が高い法域における資産又は資産グループの減損の兆候に該当する可能性がある点にも留意が必要です(四半期適用指針第14項、中間適用指針第13項、減損適用指針第14項、第88項)。

また、生産拠点の変更が既存設備の早期除売却を生じさせるのであれば、その意思決定により、既存設備の耐用年数等の会計上の見積りについて変更の要否を検討する必要があります(監査・保証実務委員会実務指針第81号第14項)。なお、当該既存設備が事業用の固定資産である場合には、耐用年数等の短縮により、その後の期間において増加することになる減価償却費は、営業費用として計上される点にも留意が必要と考えられます(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第55項、第56項)。


Ⅵ ベンチャーキャピタルファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの見直し

日本では、企業が投資する組合等※1への出資の評価に関して、当該組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下、金融商品会計基準)に従って評価し、当該組合等への出資者である企業の会計処理の基礎とするとされています(改正金融商品会計実務指針第132項)。

この点、金融商品会計基準は、市場価格のない株式については取得原価をもって貸借対照表価額とするとされていることから、企業が投資する組合等の構成資産が市場価格のない株式である場合、これらについても取得原価で評価することとなります。

当該定めに関して、近年、ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加しており、これらの非上場株式を時価評価することによって、財務諸表の透明性が向上し、投資家に対して有用な情報が開示及び提供されることになり、その結果、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されることが期待されるとして、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を時価評価するよう、会計基準を改正すべきとの要望が聞かれていました。

このような状況を受けて、ASBJは、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を中心とする範囲に限定し、企業が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に係る会計上の取扱いを見直すことを目的として、改正金融商品会計実務指針を公表しました。

※1 任意すなわち民法上の組合、匿名組合、パートナーシップ、及びリミテッド・パートナーシップ等(改正金融商品会計実務指針第132項)。組合等への出資については、原則として、組合等の財産の持分相当額を出資金として計上し、組合等の純損益の持分相当額を当期の純損益として計上する。

1. 会計処理

(1) 対象となる組合等の範囲(改正金融商品会計実務指針第132-2項、第308-3項)

改正金融商品会計実務指針では、対象となる組合等の範囲に関して、以下の要件が設けられました。

① 組合等の運営者※2は出資された財産の運用を業としている者であること
② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること

これは、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられたため、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等を直接的に定義することは行わないこととしたこと、また一方で、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するために、当該要件を設けることとされたものです。

なお、②の要件に関して、「時価をもって評価している」場合とは、組合等が適用している会計基準により市場価格のない株式について時価評価が求められている場合のほか、市場価格のない株式について時価評価する会計方針を採用している場合が含まれると考えられるとされています。また、時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、国際財務報告基準(IFRS)第13号「公正価値測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)の Topic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれると考えられるとされています。

※2 「組合等の運営者」とは、日本におけるベンチャーキャピタルファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態においては、無限責任組合員が該当すると考えられる。また、他の法形態に基づく組合等については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が該当すると考えられる。

(2) 出資者である企業の会計処理(改正金融商品会計実務指針第132-2項、第308-4項)

会計処理に関して、(1)の①及び②の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができることとされました。そして、この場合の評価差額の持分相当額は、当期の損益ではなく、「その他有価証券評価差額金」として純資産の部に計上することになります(移管指針公開草案第15号(移管指針第9号の改正案)「金融商品会計に関する実務指針(案)」に対するコメントNo.20参照)(<図1>参照)。

図1 組合等への出資の取扱いのイメージ

図1 組合等への出資の取扱いのイメージ

(3) 企業の選択に関する方針(改正金融商品会計実務指針第132-3項、第308-5項)

(1)の範囲に含まれるすべての組合等を適用対象とするか、組合等の単位で選択できるようにするかについては、組合等への出資の目的や性質が異なる場合があると考えられることから、範囲に含まれるすべての組合等について一律に適用対象とすることは必ずしも適切ではないと考えられる。このため、改正金融商品会計実務指針では、組合等への出資者である企業が改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めの適用対象かどうか決定することとされました。また、企業の意思により自由に適用を終了することを認めることは、会計処理の透明性や比較可能性の観点から適切ではないと考えられるため、改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用することとした組合等への出資の会計処理は、出資後に取りやめることはできないこととされています。

なお、企業が直接出資する組合等について改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用することを選択しており、かつ、ファンド・オブ・ファンズのように組合等が別の組合等に出資しているケースにおいては、組合等が出資する別の組合等ごとに改正金融商品会計実務指針第132-2項(1)及び(2)の要件を満たすか判定を行い、要件を満たした別の組合等についてのみ、その構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、その組合等への出資者の会計処理の基礎とすることになると考えられるとされています。

(4) 減損処理(改正金融商品会計実務指針第132-4項、第308-6項)

組合等の構成資産に含まれる市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする場合における組合等の構成資産である市場価格のない株式の減損処理について、改正金融商品会計実務指針では、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価評価していることを踏まえ、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(改正金融商品会計実務指針第92項)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(改正金融商品会計実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることとされています。

これらの会計処理の概要をまとめたものが<表3>となります。
 

表3 改正金融商品会計実務指針における組合等への出資の会計処理のまとめ

(1)

対象となる組合等の要件

① 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること

② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること

(2)

出資者である企業の会計処理(改正金融商品会計実務指針第132-2項)

(1)の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる。

この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上する。

(3)

企業の選択に関する方針

組合等への出資者である企業は、改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に適用対象かどうか決定する(なお、出資後に取りやめることはできない)。

(4)

減損処理

改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産である市場価格のない株式については、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(改正金融商品会計実務指針第92項)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(改正金融商品会計実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。

2. 四半期及び半期決算における注記事項(改正金融商品会計実務指針第132-5項、第308-7項)

企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下、時価算定適用指針)第24-16項は、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については時価の注記を要しないこととし、その場合、注記していない旨及び時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとしています。

改正金融商品会計実務指針では、改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等への出資については、これらの注記に併せて、以下の事項を注記することとされています。

(1) 改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用している旨
(2) 改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針
(3) 改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額※3

※3 当該事項の注記は、時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額の内数に該当すると考えられる。

これを受け、2025年6月6日に金融庁から「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等が公表され、中間(連結)財務諸表において金融商品に関する注記を記載する場合※4には、上記(1)から(3)の注記を行うことが提案されています。

※4 金融商品については、当該金融商品に関する中間(連結)貸借対照表の科目ごとに、会社(企業集団)の事業の運営において重要なものとなっており、かつ、中間(連結)貸借対照表計上額その他の金額に前事業年度(連結会計年度)の末日に比して著しい変動が認められる場合には、中間(連結)貸借対照表の科目ごとの中間(連結)貸借対照表日における中間(連結)貸借対照表計上額、時価及び当該中間連結貸借対照表計上額と当該時価との差額を注記しなければならない(中間(連結)対照表計上額と時価との差額に重要性が乏しい場合を除く)(財務諸表等規則第138条第1項、連結財務諸表規則第111条第1項)。

なお、金融商品関係の注記は、第1・第3四半期決算短信の開示にあたって開示が義務付けられている事項ではありませんが、「投資判断に有用と考えられる情報」とされています。

東京証券取引所の決算短信・四半期決算短信等作成要領等において、「四半期連結財務諸表における項目の表示に係る取扱いについては、第一種中間財務諸表等での取扱いを準用する」ものとされていることを踏まえると、第1・第3四半期決算短信においても金融商品に関する注記を記載する場合には、上記(1)から(3)の注記を同様に行うことが適切と考えられます。
 

3. 適用時期及び経過措置(改正金融商品会計実務指針第195-20項、第205-2項、第357項、第358項)

改正金融商品会計実務指針は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされ(原則適用)、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用ができることとされています。

そして、適用初年度の期首時点において、組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等を決定することとされています。

また、遡及(そきゅう)適用は求めず、適用初年度の期首から将来にわたって適用することとし、適用後の当期純利益等への影響が適切となるように、以下の経過措置を設けることとされています。

(1) 適用初年度の期首時点において、改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、適用初年度の期首時点での評価差額の持分相当額を適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する。

(2) 適用初年度の期首時点において、改正金融商品会計実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価のある有価証券の減損処理に関する定め(改正金融商品会計実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、減損処理による損失の持分相当額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。


Ⅶ リース関連会計基準等の改正

2024年9月、ASBJは、基本的に、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上することを目的とした新リース会計基準等を公表しました。新リース会計基準等は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされ(原則適用)、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することも可能とされています。

新リース会計基準等の詳細については、情報センサー2024年12月「新リース会計基準の概要の解説」をご参照ください。



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