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国際会計基準審議会(IASB)は、2018年6月28日にディスカッション・ペーパー「資本の特徴を有する金融商品」(FICE DP)を公表した。本DPでは、現行のIAS第32号「金融商品:表示」に基づく分類結果を抜本的に変えることなく、金融負債と資本性金融商品の分類に関する原則を明確な根拠を示したうえで確立するアプローチを開発している。また本アプローチでは、分類のみでは捕捉されない金融負債及び資本性金融商品の特徴に関する情報を、表示及び開示を通じてより良く提供しつつ、分類規定の一貫性、完全性及び明瞭性を改善するよう意図されている。
FICEプロジェクトでは、発行体(企業)の観点からの金融負債及び資本性金融商品の分類に焦点が当てられている。したがって、金融資産の保有者の会計処理を定めるIFRS第9号「金融商品」の規定は、FICEプロジェクトの範囲外となる。さらに、金融商品の認識及び測定規定は影響を受けず、従来どおりIFRS第9号が適用される。
IASBが提案するアプローチでは、以下のいずれか(又は両方)を含む金融商品が金融負債に分類される。
最初の要件は経済的資源を引き渡す義務を履行する時期を取り扱っており、2番目の要件は金額を取り扱っている。
企業の利用可能な経済的資源が変動しても請求金額が変動しない場合に、義務を負う金額は企業の利用可能な経済的資源から独立しているということになる。また、請求金額が企業の利用可能な経済的資源の変動の影響を受け、企業の利用可能な経済的資源を上回りうる場合にも、企業の利用可能な経済的資源から独立しているということになる。
逆に、企業の利用可能な経済的資源が変動すると請求金額も変動するものの、企業の利用可能な経済的資源を決して上回ることがない場合には、請求金額は企業の利用可能な経済的資源に依存するということになる。企業の資源に依存する金額の例としては、その金額が企業の資本性金融商品の公正価値に基づく場合が挙げられる。
下記表は、IASBが提案しているアプローチにおいて、どのように金融負債及び資本性金融商品に分類されることになるかを説明している。
IASBは、自己の資本に関連するデリバティブには特有の問題があるため、デリバティブ金融商品にはより一般的な原則に基づいた別個の分類原則を提案している。自己の資本に関連するデリバティブはその全体で分類される。すなわち、受払に係る個々のレッグを別個に分類せず、そのようなデリバティブは、資本性金融商品、あるいは金融資産又は金融負債に分類され得る。本DPが提案するアプローチでは、以下のいずれか(又は両方)に該当する場合に、自己の資本に関連するデリバティブは金融資産又は金融負債に分類される。
本FICE DPは、特定の負債の帳簿価額の変動を財務諸表本体に表示する新たなアプローチを定めている。すなわち、企業の利用可能な経済的資源から独立した金額に関する義務を伴わない負債に生じる公正価値の変動による利得及び損失を含む収益及び費用について、純損益ではなく、その他の包括利益(OCI)に表示し、組替調整を行わないことを提案している。これには、たとえば、非支配持分が保有する株式に対するプット・オプションに係る利得及び損失が含まれる。
また、本DPでは、純損益またOCIを企業の資本性金融商品に帰属させることを提案している。非デリバティブ資本性金融商品については、IAS第33号「1株当たり利益」に従うことになるが、帰属額は財務業績計算書本体に表示される。IASBは、資本に分類されるデリバティブについてこの帰属をどのように行うべきか、その見解を未だ固めておらず、本DPは公正価値の変動を用いるなど複数の方法を検討している。
IASBはまた、金融負債及び資本性金融商品の開示規定についても以下の改善を提案している。
IASBは、現行のIAS第32号による分類結果から大きな変更はないと見込んでいる。
たとえば、
さらに、IASBは、IAS第32号の規定は多くをそのまま引き継ぐことを提案している。
たとえば、
しかし、一部の金融商品については、分類及び(又は)表示がIAS第32号を適用したときとは異なる可能性がある。たとえば、
我々は、負債と資本の分類の基礎になる原則を強化するIASBの取組みを支持する。関係者は、この新たな原則をテストし、より革新的な商品を含む、発行済みの金融商品や検討段階にある金融商品にそれらが適切に適用できるかを評価する必要がある。
また、関係者は、資本性金融商品、特にデリバティブに関する純損益及びOCIの帰属に関する提案を詳細に検討し、実務で適用可能かどうか、その際のコストが財務諸表利用者の便益に見合うものかを評価する必要がある。
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