EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2025年の幕が上がりました。100年単位で考えると21世紀の第1四半期終了、第2四半期開始直前という捉え方もできるので長期的な企業経営や人生100年時代のキャリア形成の観点から今年は節目の年として頑張りたい、何か新しいことに挑戦したいと考える方も多いかと思います。
その記念すべき年始号の冒頭で、ありがちな干支(ヘビ)の話にも触れず、季節的にも合っておりませんが今回は「うなぎのタレ」を取り上げたいと思います。
うなぎと日本人の歴史は古く、一般社団法人 全日本持続的養鰻機構によれば縄文時代の古墳や貝塚からウナギの骨が出土していることから日本人は5,000年以上も昔からウナギを食べていたと考えられます。かば焼きが定着したのは江戸時代中期以降とのこと。老舗のうなぎ屋では100年から200年以上も前から現代に至るまでうなぎのタレを継ぎ足し、継ぎ足して提供し続けています。(故伊集院静氏が選んだ各界の名士が語る『うなぎと日本人』ではうなぎの名店とうまい食べ方を知ることができます)
なぜうなぎのタレは衛生的に問題なく、継ぎ足して顧客への提供が可能なのでしょうか?
その理由は2つあるようです。1つは成分。タレには糖分と塩分が多く含まれており、その成分特性が細菌の繁殖を抑制しています。もう1つは火入れ。頻度はお店によって違うようですが1週間に1度程度火入れすることで多くの細菌が死滅する。さらには調理段階でも熱く焼いたうなぎをタレにくぐらせることを繰りかえすのでタレが加熱されて、さらなる殺菌効果があるようです。
やや強引ですがこれは100年続く企業づくりへのヒントにもなり得る示唆ではないでしょうか?企業に置き換えれば、腐りにくい成分とは人材。定期的な火入れとは変革と位置付けるのはどうでしょうか?企業の経営要素は人、モノ、金、情報と多岐にわたりますが設備や工場などの有形資産が時間とともに劣化が避けられない一方で、人材という無形資産はリスキリングなどで市場価値を維持できれば経年劣化することなく組織を健全に保つ重要な礎になり得ます。また火入れ(変革)は近年でいえば、海外事業のM&Aや撤退、アクティビスト対応、事業ポートフォリオ再編、リストラクチャリング、地政学リスク対応など安定した環境を一変させるイベントを想起できますが長期的にみると組織を活性化させる、組織を長期的に持続可能にする好機とも言えます。
なお、最後に企業変革を成功させる鍵は人材であることをEYはオックスフォード大学サイードビジネススクールとの共同研究(Humans@Center Research)で近年明らかにしています。
うなぎのタレと同様に長期的視野にたった企業経営には人材(成分)と変革(火入れ)が重要な成功要因であり、互いの密接な関係性があることを最後に申し伝えておきます。
新年早々に老舗うなぎ店で白焼きを食べながら(個人的にはうなぎはタレなしが好みです)
EY Asia-Pacific 兼 EY Japan ピープル・コンサルティングリーダー
EYストラテジー・ アンド・コンサルティング株式会社 パートナー
鵜澤 慎一郎
参考文献 ※内容はアクセス当時のものとなります。
一般社団法人 全日本持続的養鰻機構「うなぎと日本人 ウナギ資源を持続的に利用するために」、unagikiko.jp/pdf/panf001.pdf (2024年12月9日アクセス)
編:日本ペンクラブ、選:伊集院静『うなぎと日本人』(角川文庫、2016年)
TBS「うなぎ屋さんの『継ぎ足しタレ』が使い続けられる理由とは」、topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=3799(2024年12月9日アクセス)
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