2019.01.09
アイスランド山岳地帯の夜の眺め

気候変動の開示が明らかにするビジネスリスクと機会

執筆者

Mathew Nelson

EY Global Climate Change and Sustainability Services Leader

Leading a purpose-driven team that shares a common passion for creating positive impact. Workplace diversity and equality advocate. Engineer. Father of two boys. Australian Football League fan.

2019.01.09

EYグローバル気候変動リスク・ディスクロージャー・バロメーターで、18カ国の各種セクター企業500社超の開示状況を分析

金融安定理事会(FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」)は2017年6月、気候関連財務リスク開示に関する最終提言をまとめました。EYが今回初めて発表するEYグローバル気候変動リスク・ディスクロージャー・バロメーターでは、気候変動の影響が大きい11セクターを対象に、18カ国の500社を超える企業が2017~18年の報告期間中に開示した情報を基に世界的現状を分析しました。

本レポートの目的は、企業や各国の規制当局に、気候関連リスク報告の世界的現状を理解してもらうことにあります。また、地域やセクターごとの報告状況の違いを考察するほか、気候関連リスク開示の質と対応率の両面において改善点を提案します。

  • TCFD提言

    TCFD提言の目的は、気候関連リスクが各種企業に及ぼす影響を投資家が理解しやすくすること、および気候変動が経済にシステミックな金融ショックを与えるリスクを軽減することにあります。提言では、現行の財務報告開示と統合可能な気候関連リスク報告の枠組みを示しています。TCFDは気候の影響を以下のように定義しています。

    • 移行の影響:経済の変化に伴うリスクと機会(成長への影響、セクターの重要性の変化、その他マクロ経済的要因を含む)を意味する
    • 物理的影響:将来の事業活動に影響を与える可能性がある物理的な気候の変化(例:降雨の量、強度、時期の変化)を意味する

    また、TCFD提言では金融セクターにおける銀行、保険会社、資産保有者・資産運用会社など特定の高リスクセクター、およびエネルギー、運輸、農業・食品・林産物などその他のセクターに対する具体的なガイダンスを示しています。

    TCFD提言の採用はほとんどの国で任意となっています(ただし、フランスでは一部の要素について法制化されています)。しかし、複数の国家レベルの規制当局やグローバル投資家らは提言を公に支持し、開示における早期採用を促進しています。高リスクセクターで活動する企業に対して、提言を十分理解し、開示内容にさらなる注意を払うよう求めるアクティビスト株主も増えています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2018年10月、1.5℃の地球温暖化による影響とその目標を達成するための排出経路に関する特別報告書を公表しました。この報告書を受け、世界各国・地域の政策立案者が炭素・エネルギー政策の早期転換に向けて動き出すとともに、投資家が投資ポートフォリオへの影響を評価する必要性を認識することが予想されています。そのため、企業には気候変動の移行リスクに対する自社の回復力について、より詳しく開示することが求められるようになっています。

しかし、本レポートの結果が示すように、提言への対応状況は国やセクターによって大きく異なります。

本レポートの結果は、気候関連リスクの影響と回復力に関する開示の詳細さに対する問題を浮き彫りにしています。主な調査結果が示すとおり、開示の対応率と質の両方において明らかに改善の余地があります。これは特に戦略面において顕著です。

今後何年にもわたり、経済のほぼすべてのセクターが、気候変動による移行と気候の影響がもたらす大混乱に直面します。にもかかわらず、主要な経済圏の大半の企業がいまだにこれらのリスクに真剣に取り組んでおらず、また、潜在的な機会をものにする準備もしていません。投資家の注目が高まる中、これでは実際に影響が表れる前に企業のバリュエーションに影響が及んでしまうでしょう。

企業としては、早く行動を起こすほど良い結果が得られます。気候関連リスクと機会の評価は複雑で、詳細な分析が必要な場合もあります。しかし、気候変動シナリオ計画に関する情報を開示すれば、企業はTCFD提言に対応できるだけでなく、事業戦略や事業計画に対する新たな知見を得られ、社内の能力やプロセスの強化にもつながります。

工場の上空写真1
(Chapter breaker)
1

第1章

大半の企業は開示の質が不十分

移行リスクの影響を最も受けるセクターは、総じて開示レベルを向上させているようです。

喜ばしいことに、分析の結果、調査対象企業の3社に2社が気候変動関連リスクの開示を始めていることがわかりました。ただし、残念ながら開示の質はかなり低く、平均スコアは31%でした。

TCFDの各要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を見ると、「目標」と「指標」(主にScope 1と2の温室効果ガス(以下「GHG」)排出量の報告による)、および「ガバナンス」については開示の質が平均的に高いことがわかりました。一方で「戦略」と「リスク管理」に関する開示は質が低いことがわかりました。確かにこれらの要素は複雑なため、気候変動が企業に与える影響と、それに対する企業の対応について詳細に分析する必要があります。

assurance climate change risks and opportunities barometer 2018 fig1a

移行リスクの影響を最も受けるセクター(化石燃料を用いるサプライチェーンと直接かかわるセクター、またはすでに低炭素の代替エネルギーが存在するセクター)、すなわち鉱業、製造業、運輸、エネルギーは、総じて高いスコアでした。これらのセクターは、アクティビスト株主から気候関連開示の改善を盛んに求められています。アクティビスト株主はこれらセクターの最大規模のグローバル企業を相手に、気候リスクに関連した訴訟や株主決議などの措置をとっています。こうした措置を受け、これらのセクターでは調査対象の他のセクターに比べ、開示のレベルが向上したものと思われます。

製造業および運輸セクターは、世界の化石燃料排出量の多くを占めています。これらセクターの特定の業種は、電化や資源効率製造など低炭素テクノロジーとの競争にもさらされています。一部の企業は、こうした変革的テクノロジーに対抗するためにリスク管理と戦略に関する開示のレベルを向上させたとみられます。これらのセクターでは、気候関連リスクと機会をより明確に定義しており、中にはタイムフレームや潜在的影響の定量的情報を開示内容に含めているケースもありました。

興味深いことに、通信セクターは対応率のスコアが全体で最も高く、質についても2位でした。これは、この業種が他の業種とは異なり、物理的ネットワークが受ける潜在的リスクだけでなく、経済全体の低炭素化からもたらされる機会をも重視しているためでしょう。つまり、マイナス面だけでなくプラス面の要素が開示の動機になっているのです。

逆に、資産保有者・資産運用会社はスコアが振るいませんでした。この結果は、EYオーストラリアの気候変動リスク・ディスクロージャー・バロメーターの報告結果と一致しており、このセクターの企業の気候関連リスク開示にグローバルな問題があることを浮き彫りにしています。モントリオール・プレッジやポートフォリオ脱炭素化連合(PDC)など、投資家を対象とした優れたイニシアチブがあるにもかかわらず、このような状況になっています。

このセクターが他に後れを取っている潜在的な理由はいくつかあります。従来、短期的リスクの開示に力を入れてきたことや、ポートフォリオ内のさまざまな業種や組織の気候変動リスクを集約することの複雑さが、このセクターの対応の遅れの原因と考えられます。このセクターなら、もっと簡単かつ迅速にリスクに対応できるはずだと見る向きもあるかもしれません。例えば、化石燃料を使用する発電会社が低炭素燃料に移行することに比べれば、資産運用会社がポートフォリオを組み替える方が簡単です。しかし、このセクターでは、気候変動によるシステミックな経済的影響への対応が遅れれば遅れるほど、必要な移行の管理も行いにくくなるでしょう。早急に対応する資産保有者・資産運用会社ほど、この移行から価値を得られる可能性が高いと言えます。

assurance climate change risks and opportunities barometer 2018 fig1b
assurance climate change risks and opportunities barometer 2018 fig2
(Chapter breaker)
2

第2章

国ごとに異なる気候変動開示の質

気候変動開示のスコアは成熟市場で最も高く、その要因は主に規制によるものですが、他にもあると考えられます。

英国、フランス、ドイツ、スイス、オーストラリアなど、気候変動開示が比較的成熟している市場の企業は、対応率のスコアが平均して最も高くなりました。興味深いことに、米国は国レベルでの協調的な政策指示が無いにもかかわらず高スコアでした。

分析から生じた主な疑問の1つは、こうした高スコアの主因が経済発展度の高さにあるのか、それとも別の要因が絡んでいるのかという点です。スカンジナビア諸国のスコアが著しく低い一方で、南アフリカのスコアが比較的高いという事実は、経済発展度以外にも要因があることを示唆しています。英国、フランス、ドイツ、スイス、オーストラリアではかなり以前から規制によって報告を義務付けている一方、南アフリカでも総合的な必須の報告要件が施行されました。米国では、必ずしも規制が主因となってはいませんが、株主決議の多さや集団訴訟のおそれが同様の影響を及ぼしています。

おそらく、非財務報告に対するより強い規制は重要な要因です。このことは特にインドやアラブ首長国連邦(以下「UAE」)などの経済圏に当てはまります。しかし、これですべてが説明できるわけではなさそうです。

中国本土、シンガポール、香港、韓国などの企業は、一定の必須要件があるにもかかわらず、他の地域に比べて平均的に著しく低いスコアでした。スカンジナビア諸国のスコアの低さも説明できません。現実的に、以下に示す他の要因が寄与していると言えます。

  • 規制の成熟度、および気候変動に特化した規制であるかどうか(例:中国本土、シンガポール、香港では必須の報告要件は極めて総論的)
  • 市場トップ企業だけでなく、企業全般における報告の成熟度(例:オーストラリア、フランス、英国、ドイツでは報告の成熟度が高い)
  • 経済圏における潜在的な訴訟リスク(例:米国では訴訟リスクが高く、中国では低い)

開示の質については、対応率ほど状況がよくありません。オーストラリアやフランスなど、最もスコアが高い国々でさえ、企業がTCFD提言の大半に対応するまでにはまだ長い道のりがあります。インド、中国本土、韓国といった重要な国々のスコアが著しく低く、さらに欧州の一部地域、米国、カナダがそれ以上に低いことは、投資家がポートフォリオの大部分について意思決定に必要な情報を得られる可能性が低いことを意味しています。

地平線上の曇った風景3
(Chapter breaker)
3

第3章

移行リスクに後れを取る物理的リスクの開示

物理的リスクはバリュエーションモデルで見落とされており、戦略とリスク管理の開示からも大抵は除外されていました。

今回の調査で最も多く確認された開示は、企業自身の排出量の監視と管理に関係するものでした。また、自社の属するセクターや依存するサプライチェーンに直接影響が及ぶ移行リスクを開示している企業も多くありました。シナリオ分析(行われた場合)でモデル化されていたリスクは主に、こうした移行リスクでした。移行リスクがより重視される主な理由の1つは、企業やセクターがその結果を感じるようになるまでの時間尺度がより短いことです。移行リスクは通常、「軽減」対策と関連付けられています。これは本来、将来の物理的影響の発生確率や被害を抑えるためにより多くの対策を打つことを意味します。つまり、一部セクターの企業は気候変動の物理的影響を考慮しているにもかかわらず、これらのリスクをバリュエーションモデルに完全に組み込んではいないということです。

しかしEYの分析では、物理的リスクは単にバリュエーションモデルで見落とされているだけでなく、将来を見越した戦略とリスク管理の開示からも完全に除外されている場合が多いことが明らかになりました。物理的リスクは、多くの高リスクセクターにとって長期的に重要なリスクであり、これを十分に理解・開示していないことこそが現在の開示の質における重大な欠陥を示しています。

シナリオ分析については、多くの大規模グローバル企業の開示で言及されていました。しかし、そのほとんどは将来的に分析を行う予定だという文脈においてでした。その他のケースでは、分析したシナリオやモデリングの結果について詳しく述べられていませんでした。将来の気温上昇を2℃以内に抑える目標への支持を表明している企業も複数ありましたが、自社の事業をそのような経済にどう合致させるかは説明していませんでした。詳細なシナリオ分析を行った企業でも、ほとんどは移行リスクのみを対象としていました。こうした物理的リスクの除外が、戦略に関する開示の質のスコアを押し下げました。

夜明けの鉱山砂利採取場4
(Chapter breaker)
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第4章

いまだ財務報告書に含められていない気候変動開示

TCFD提言があるにもかかわらず、大半の企業が気候変動開示をアニュアルレポートに含めていないのにはさまざまな理由があります。

TCFD提言では、気候変動開示を他の財務情報開示と同様に財務報告書で行うよう求めています。TCFD提言のこの要素は、いまだ広く実行されていません。

一部の企業では、アニュアルレポート内の事業戦略に関する記述、取締役報告書、または営業・財務概況(将来の事業見通しに関する記述を含む)の部分に気候変動開示を含めています。しかし、圧倒的多数の企業は、非財務報告書(サステナビリティレポートなど)や、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(以下「CDP」)への報告において開示を行っています。

TCFD提言があるにもかかわらず、大半の企業が気候変動開示をアニュアルレポートや取締役報告書に含める手だてを講じていないのにはさまざまな理由があります。気候変動リスクを捉えて報告するためのプロセスがかなり未成熟であることや、移行リスクまたは物理的リスクの潜在的影響に関するタイムフレームの設定の難しさが理由として考えられます。また、こうしたリスクを財務的影響に変換することも困難でしょう。しかし、株主決議や上場規則の施行、規制当局の努力を受け、企業はこうした状況を今後の報告期間において変革せざるを得なくなると思われます。

貨物コンテナが並ぶ積み出し港の上空写真 5
(Chapter breaker)
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第5章

セクター概況

気候関連リスク開示の対応率と質に関する主要セクター別の概況

詳しい調査結果をご覧になるには、詳細レポートをダウンロードしてください。

銀行

銀行

61%

のTCFD提言に対応。質のスコアは30%

  • 全体として、銀行の気候関連リスク開示の質は、通信やエネルギーなどの高スコアセクターには後れを取っているものの、金融セクター内では最も高いスコアでした
  • オーストラリアの銀行の開示は他の地域の銀行に比べ著しく高スコアでしたが、これは主にシナリオ分析に関する開示を含んでいたためです
  • フィンランド、中国本土、UAEの銀行は評価が低く、気候関連リスク開示の質のスコアが10%を下回りました
  • 銀行を対象にした国連環境計画・金融イニシアチブのTCFDパイロットプロジェクトにより、参加銀行の開示が他銀行に比べて改善したようです
  • 大半の銀行はCDPへの回答を提出しており、これが開示の主な情報源となりました
  • 特にスコアの高かった銀行では、TCFDの体系的な開示を、独立した報告書やサステナビリティレポートに含めていました
  • ほとんどの銀行が開示に物理的リスクを含めていませんでしたが、銀行セクターの住宅ローンポートフォリオの大きさを考えれば、これは重大なリスクと言えます
保険会社

保険

63%

のTCFD提言に対応。質のスコアは31%。

  • 保険会社の気候関連リスク開示スコアは平均的に銀行と同等であり、エネルギーや通信などの高スコアセクターには後れを取っています。しかし、保険会社は戦略に関する開示で比較的高いスコアを得ています
  • 中国本土、シンガポール、香港、インドの保険会社は評価が低く、開示の質のスコアが10%を下回りました
  • 開示の質において特に高いスコアを得た保険会社は、個別の気候関連リスク報告書やウェブページを有している場合や、TCFD提言の署名機関である場合が目立ちました
  • 他のセクターに比べ、物理的リスクの開示がより多く見られましたが、保険セクターにおけるその重要性を考えれば驚くことではありません。しかし、概してこれらの開示では、リスクの監視・管理方法に関する詳細はほとんど説明されていませんでした
資産保有者・資産運用会社

資産保有者・資産運用会社

44%

のTCFD提言に対応。質のスコアは19%。

  • 資産保有者・資産運用会社は、気候変動リスク開示の質のスコアが調査対象の全セクターの中で最低でした
  • ほとんどの国の資産保有者・資産運用会社は質のスコアが20%~30%であり、フィンランド、イタリア、中国本土、インド、韓国、UAEは平均して10%に届きませんでした
  • 主に公的セクターの年金を管理する一部の大規模年金基金は、平均して他の機関より高いスコアを得ました。この理由は、ステークホルダーからの高まる圧力や注目、およびより長期的視野を持った投資戦略にあると思われます
  • 資産保有者・資産運用会社が対応率と質の両面で低スコアとなったことは意外です。というのも、このセクターでは一般に、より広範で一貫した開示を提唱しているからです。しかしこの姿勢は、自分たちのリスクと機会に関する報告には生かされませんでした
  • 高スコアの企業は、投資の移行リスク、および算出したポートフォリオ排出量やカーボンフットプリントに関する報告を行っていました
  • 投資の物理的リスクは開示においてほとんど言及されていませんでした
農業・食品・林産物

農業・食品・林産物

59%

のTCFD提言に対応。質のスコアは28%。

  • 全体として、農業セクターはTCFD提言の4要素すべてにおいて高い対応率を示しました(すべて50%超)。しかし質のレベルは全般的に大幅に低く、特にガバナンスと戦略の面で顕著でした。対応率と質の間に差が見られたことは、南アフリカやデンマークなどの国々の企業がTCFD提言のほとんどに対応していた一方で開示の質が低かったということで、ある程度説明がつきます
  • このセクターで特にスコアが高かったのはオーストラリア、フランス、日本でしたが、それはこれらの国々ではこのセクターに対する規制が存在するためと考えられます
  • アジア(韓国、香港、インド、中国本土)およびカナダ、イタリアの大半の企業は評価が最低レベルで、質のスコアは10%前後かそれ以下でした
エネルギー

エネルギー

71%

のTCFD提言に対応。質のスコアは39%。

  • 全体として、エネルギーは鉱業、製造業、運輸セクターと並び、最も評価が高いセクターの一つです。戦略面の対応率においては最も高いスコア、戦略面の質においては(鉱業に次いで)2番目に高いスコアとなりました
  • このセクターのリスク規模を考えれば、質のスコアはまだ低いと言えます
  • フランスと日本の評価が群を抜いていましたが、他にもオーストラリア、南アフリカ、イタリアなどが高い評価を得ました。UAEとシンガポールは評価が低く、開示の質のスコアが10%を下回りました
  • エネルギーセクターの評価が全体的に高いことは、このセクターに大手石油・ガス企業およびエネルギー事業者が含まれているということで説明がつきます。気候関連リスクにさらされている彼らに向けられる投資家や市民社会の目は、年々厳しさを増してきました。彼らは気候関連リスク(特に移行リスク)への対応策について透明性の高い情報を提供しなければなりませんでした。何年にもわたり、こうしたリスクが中核的ビジネスモデルに影響を及ぼしてきた結果、彼らは気候関連開示においてかなり成熟し、中にはシナリオ分析を行っているところもあるほどです
製造

製造

65%

のTCFD提言に対応。質のスコアは34%。

  • 全体として、製造業はTCFD提言への対応率と開示の質の両面において、TCFDの主要セクター中、鉱業とエネルギーセクターに次ぐ3番目に高いスコアを得ました
  • フランスと米国の企業が、開示の質で他地域の企業を若干上回り、リスク管理および指標と目標におけるTCFD提言への合致率では最高スコアを得ました
  • 中国本土、香港、シンガポールの製造業企業は開示で後れを取っており、TCFD提言にはほとんど対応していませんでした。カナダ企業もこのセクターでは評価が低く、開示の質のスコアは5%に届きませんでした
不動産・建築・建設

不動産・建築・建設

51%

のTCFD提言に対応。質のスコアは23%。

  • 全体として、建築企業は開示の対応率および質の両面で2番目に低いスコア(非金融セクターの中では最も低いスコア)となりました
  • フランスの評価が明らかに群を抜いており、同国企業はすべてのTCFD提言に対応し、気候関連リスク管理のプロセスと戦略について詳細かつ非常に明確な情報を提供していました
  • 47社中、16社は気候関連リスク開示の全体的な質のスコアが5%未満でした。これらの企業は主にシンガポール、香港、UAE、中国を拠点としていました
  • 最も高いスコアを得た一部の企業はシナリオ分析を行っていました。CDPへの回答が情報源となっているケースが一般的でした。強靭な建築物やインフラへのニーズが高まる中、建築セクターにとって重要と言える物理的リスクについて、明確に言及していた企業はごく少数にとどまりました
鉱業

鉱業

78%

のTCFD提言に対応。質のスコアは44%。

  • 鉱業セクターは、TCFD提言への対応率と開示の質の両面において、TCFDの主要セクター中、最も高いスコアを得ました
  • オーストラリアとカナダの企業が開示の質と対応率の両面で最も高いスコアを得ましたが、最大規模のグローバル鉱業企業が両国を本拠としていることを考えれば不思議はありません。これらの企業は特に、戦略および指標と目標のスコアで他を大きく引き離しました
  • 英国と南アフリカもTCFD提言の大部分に対応しており、対応率では高スコアを得ました。しかし、開示の質はオーストラリアとカナダに比べ劣っていました
  • シンガポールと韓国の鉱業企業は評価が低く、スコアは10%に届きませんでした
輸送

輸送

62%

のTCFD提言に対応。質のスコアは32%。

  • 全体として、運輸セクターは開示の質において、TCFDの主要セクター中、鉱業と製造業に次ぐ高いスコアを得ました
  • このセクターではフランス、ドイツ、米国が他国を引き離し、TCFD提言の4要素で高い質のスコアを得ました
  • 開示の詳細さが最も欠けていたのはアジア(中国、シンガポールなど)の企業で、質のスコアは10%を下回りました
  • 調査対象企業の半数はCDPに回答しており、回答していなかった企業に比べ開示の質のスコアが高い傾向にありました
通信・テクノロジー

通信とテクノロジーはTCFD提言における主要セクターではありませんが、気候変動への対応ではトップクラスの評価を得ています。このセクターは主に以下の2つのエリアで他より優れていると考えられます。

  • 気候関連リスクの特定:一般的な規制リスク(電力コストの上昇につながる)、および物理的リスク(異常気象の影響でネットワークの損傷が増える)
  • 排出量削減目標:このセクターはGHG排出量の削減を目指す複数のイニシアチブの中心となっており、このことがこのセクターの設定する目標の質に影響していると思われる
小売・健康・消費財

こちらもTCFD提言における主要セクターではありませんが、これらの企業は気候変動による物理的リスクと移行リスクの両方の影響を受ける複雑なサプライチェーンを有しています。全体としては開示の質は平均的でしたが、評価が高い企業と低い企業に二分化されている点は特筆に値します。

  • 高評価企業はフランス、ドイツ、英国の小売企業と製薬企業でした。これらの企業は、サプライチェーンリスクを管理するガバナンスプロセスを確立し、サプライチェーンの気候関連リスクを管理する戦略を策定していました。また、これらの企業は、ESGパフォーマンスを報酬計算に組み込むための指標と目標の設定に成功しているほか、より広範なサプライチェーンの影響を測定・管理しています 
  • 評価が低かったのは主にアジアを本拠とする企業で、中国とインドの複数の企業は気候関連リスク開示を全く行っていませんでした
VRゴーグルでビデオを楽しむ女性
(Chapter breaker)
6

第6章

今後の課題

企業は、気候変動から受ける財務的影響の範囲と規模を明確に理解しなければなりません。

何から始めるか

気候関連リスクを開示するためには、ガバナンスとリスク評価プロセスを(TCFD提言に沿って)変革する必要があるでしょう。企業が、投資家や株主が十分な情報に基づいた意思決定を行う上で参考になる有意義な情報を作成できるようになるには何年もかかるかもしれません。一日も早く行動を起こし、取締役や経営幹部に気候関連リスクについて教育するためのプラットフォームを整えた企業ほど、投資家や株主に自社のリスクと機会をより効果的に伝えることができるでしょう。

自社にとっての気候関連リスクを理解したい企業は、以下のことを自問してみてください。

  • バリューチェーンにおいて最大の排出源は何か
  • 2℃ロードマップに沿った戦略を立てる上でどのようなインセンティブ、手段、指標が役立つだろうか(例:設備投資と業務費における社内炭素価格、企業固有の目標)
  • 気候フットプリントや炭素パフォーマンスに関し、ステークホルダーは何を期待しているか(例:低炭素製品・サービスの開発、あるいは投資家が要求する情報の開示)
  • 長期的に見て、自社の事業はどのようなタイプの気候関連リスクにさらされているか
  • 炭素関連の政策や目標は自社の製品やサービスにどのような影響を及ぼすか最善の予想・適応戦略はどのようなものか
  • 国際的な気候関連政策や国家的取り組みを、事業戦略、サプライチェーンまたは調達戦略に組み込んでいるか
  • どのような新規制が設けられる可能性があるか(例:炭素課税、炭素価格制度)。リスクにさらされた資産は何か(例:サプライチェーン、製品、活動)、またそれはどの地域にあるか
  • 2℃ロードマップに関連し、リスクにさらされる製品や活動はあるか。どうすればそれを競争優位性に変えることができるか

サマリー

TCFD提言は気候関連の財務開示に関するガイダンスを提供していますが、その対応状況は地域やセクターによってばらつきがあります。ここでは18カ国の500社を超える企業が開示した気候関連リスク情報を概観し、地域やセクターによる違いを分析しています。その結果は、開示の対応率と質に対する問題を浮き彫りにしています。これは特に戦略面において顕著です。

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Mathew Nelson

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