キラン氏の「自分にはできる」という思いと「決意」は、同社の原動力です。銀行から融資を断られたときも、キラン氏は自身の成長を可能とするビジネスモデルを新たに開発しました。「ベンチャーキャピタルではなく、収益と利益に基づいたビジネスモデルを作らざるを得なかった」と同氏は述べています。こうして生み出されたキャッシュフローは、医薬品の研究と生産のための資金となりました。
キラン氏は次のように語っています。「起業家精神の中核をなすのは、問題を解決しようとする思いです。最も苦しいときにこそ、最大のチャンスが訪れます。それが起業家として歩んできた人生の中で私が得た経験です」
キラン氏のリーダーシップの下、バイオコン社は、スタチン系薬剤や免疫抑制剤といった医薬品の製造から、糖尿病などの慢性疾患の治療に使用するバイオ医薬品の発見、開発、生産を担うまでに進化を遂げました。同社は、インドにおいて最も研究開発支出額が大きい企業の1社として一貫してランク付けされ続けています。
バイオコン社が驚異的な成長を遂げる中、キラン氏を駆り立ててきたのは、科学を通じて社会に貢献するビジネスを生み出すという大きな目標でした。同社は、現在の3分の1となる1日当たり10米セント未満の価格の遺伝子組み換えヒトインスリン(rhインスリン)の生産により、世界中の患者に手頃な価格でインスリンを供給することに先陣を切って取り組んでいます。
キラン氏は、ヘルスケア、教育、科学、スタートアップ、市民・社会問題に関してバイオコン社のCSR活動を主導してきました。同氏は、世界的な慈善活動「ギビングプレッジ」に参加した2人目のインド人であり、インドで最高位とされる2つの市民栄誉賞を受賞しています。キラン氏は今もなお立ち止まることなく、「10億人の患者の命を救う可能性を持つ手頃な価格のブロックバスターを開発する」という目標を追い求めています。