日本の新規上場動向 - 2021年1月~12月

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
公認会計士 吉本 麻衣子

1. 新規上場市場の概況

2021年1月~12月の国内株式市場は、年明け日経平均株価終値27,000円台でスタートし、ワクチン接種による世界経済の回復への期待から、2月中旬には1990年以来の30,000円台を付け、9月中旬には31年ぶりの高値である30,670円を付けました。その後は27,000円台から30,000円台の間を推移し、12月最終日終値は28,791円となりました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、139社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)となりました。前年同期(2020年1月~12月)と比較した場合36社増と大幅に増加しております。市場別に見ると、全体の66.9%にあたる93社がマザーズに上場し、新興市場合計で全体の89.9%を占めています(表1)。

表1 最近5年間(1月~12月)の市場別新規上場企業数

表1 最近5年間(1月~12月)の市場別新規上場企業数

(注1)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注2)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

 

2. 新規上場企業データの分析

業種別では、情報・通信業54社(昨年37社)、サービス業35社(昨年28社)となっており、それぞれ新規上場企業全体の39%及び25%を占め、他の業種社数との開きが昨年以上に見られます。次いで多いのは電気機器製造業と不動産業の6社となり、多岐にわたる業種が上場しています。(表2)。

表2 2021年(1月~12月)の業種別新規上場企業数

表2 2021年(1月~12月)の業種別新規上場企業数

本社所在地別では、全体の63%にあたる88社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です。次いで大阪府11社、愛知県7社、神奈川県6社、他にも国内では17県の企業が上場し、海外企業も2社上場しており、昨年度よりも本社所在地が広範囲にわたっています(表3)。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。東証以外では、東証に同日上場した場合を除きますと、福証Qボードに2社が上場しています。

赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)数はマザーズに上場した23社、TOKYO PRO Marketに上場した1社です。

表3 2021年(1月~12月)の地域別新規上場企業数

表3 2021年(1月~12月)の地域別新規上場企業数

直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が23社(16%)、10億円以上50億円未満の企業が70社(50%)であり、全体の2/3以上を売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています(図1)。売上高が500億円を超える新規上場企業は、東証1部及びTOKYO PRO Marketに上場した3社にとどまっています。

初値時価総額の分布を見ると、50億円未満の企業が22社(16%)、50億円以上100億円未満の企業が43社(31%)であり、全体の半数弱を占めます。500億円を超えた企業は12社(9%)あり、昨年(11社)並となっています(図2)。なお、初値時価総額が最も高かったのは、PHCホールディングス株式会社の3,836億円でした。マザーズ市場とジャスダック市場の平均初値時価総額は213億円と、前年同期の206億円と比較して増加しました。

図1 2021年(1月~12月) 新規上場企業・直前期売上高/図2 2021年(1月~12月) 新規上場企業・初値時価総額

図1 2021年(1月~12月) 新規上場企業・直前期売上高/図2 2021年(1月~12月) 新規上場企業・初値時価総額

監査法人別では、EY新日本有限責任監査法人33社(23.7%)、有限責任あずざ監査法人が19社(13.7%)、有限責任監査法人トーマツ19社(13.7%)と上位3法人のシェアが51.1%と昨年(61.2%)から減少する一方で、その他の監査法人が68社(48.9%)と過去4年間でシェアが徐々に増加しており、中小規模等のその他の監査法人が新規上場において担う役割が大きくなってきていることがうかがえます(表4)。

表4 2018年~2021年の監査法人別新規上場企業数

表4 2018年~2021年の監査法人別新規上場企業数