ケーススタディ
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戦略策定から実行までシームレスな脱炭素を可能にする伊藤忠テクノソリューションズ株式会社のGX支援の在り方とは?

企業の脱炭素化をデジタル領域から支援する伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)。同じくGX(グリーン・トランスフォーメーション)支援を行うEYと共に、サステナブルな社会の実現に向けた思いを語り合いました。

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企業のGX課題に向き合う中で見えてきた取り組みの“難しさ”はどこにあるのでしょうか?

長年培ってきたデジタル技術を生かしてGX支援に取り組む伊藤忠テクノソリューションズ株式会社。脱炭素化への実態をどのように見ているのでしょうか。

脱炭素へのアクションが進まない要因

尾山 耕一(以下、尾山):伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)ではGX支援に取り組まれていますが、クライアント企業にはどのようなニーズや傾向、課題があるのでしょうか。

奥村 智哉 氏(以下、奥村 氏):企業経営においてサステナビリティが重要という考え方は、ここ数年で一気に浸透しました。一方、実務レベルでは、電力使用量データやごみの廃棄量など、幅広いデータを集めることに非常に苦労しています。データを収集して現状把握することは脱炭素の“スタート地点”に過ぎないのですが、ここに課題が多く、温室効果ガス(GHG)を減らすアクションに踏み出せていないのが現状だと思います。

早﨑 宣之 氏(以下、早﨑 氏): GXの成熟度も企業によってまちまちです。現状ではカーボンニュートラルを実現する方法論も技術もまだ十分に開発されていませんし、関係者やステークホルダーがコミュニケーションできる共通のインフラ整備も進んでいません。そのような中で目標だけが決められてしまい、自社の課題を認識しづらいのかもしれません。

尾山:規制やルールが明確化されていない中でアクションを起こさなければならないという状況への戸惑いはあるでしょう。目標設定した時点で安心してしまっている企業も少なくないと感じています。

佐治 憲介 氏(以下、佐治 氏):排出量削減に向けた実際の活動だけでなく、戦略や仕組みづくり、技術開発など、GXには一つの企業の中でも多種多様な部門が関わります。目標達成に向けて一丸となった取り組みが求められるものの、各組織やそれぞれの役割が連動するところまで至っていない印象です。こうした取り組みの推進にわれわれSIerが貢献できることは多いと考えています。

奥村 氏:ただ、サステナビリティはコーポレート部門が主管していることが多く、われわれの既存のビジネス領域では接点を持つことが難しいのです。GX関連サービスを作っていくには、戦略を立てて実行に移すという上流のフェーズに関わる必要性を常々感じていました。

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既存の領域を超えたトータルな支援へ互いの強みを生かし合う
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既存の領域を超えたトータルな支援へ互いの強みを生かし合う

全社的な推進力を生み出すGX支援はどうあるべきか。CTCの脱炭素戦略策定をEYがサポートしたことで今後のビジネスの可能性が広がりました。

GX支援におけるそれぞれの強みとは

尾山: CTCが現在展開するGXビジネスについて詳しくお聞かせください。

早﨑 氏:CTCのGX支援は、経営企画部門の戦略策定や情報開示の動きと、事業部門のGHG削減に向けた動きの2つにフォーカスしています。ITとシミュレーション技術を掛け合わせ、お客さまの課題やGXの成熟度に応じたソリューションを提供しています。いずれはロードマップ策定から実行まで、GX全体に関与していくことを目指しています。

CTCのGX紹介資料1

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社「CTC GXビジネスのご紹介」(2023年)より抜粋

佐治 氏:エネルギー分野では、30年ほど前から風力発電、太陽光発電に代表されるクリーンエネルギーの普及促進に取り組んでいます。これまで提供してきたソリューションには発電量のシミュレーションや設備の健全性評価などがありますが、今後はクリーンエネルギーの活用を推進していく必要があると考えています。

その一環として、2021年10月から親会社の伊藤忠商事と共同で再エネアグリゲーションビジネスを始めました。現在は風力発電や太陽光発電など変動性の高い再エネを束ねて、市場との取引を含めて収益化するものですが、将来的には脱炭素を目指す企業や地域と再エネをつなぎ、社会に貢献する取り組みにしていきたいです。

早﨑 氏:そのほかにも、今後のGHG削減を見据えて、水素利用の普及に向けたインフラのトータルなシミュレーションサービスや、メタネーションや材料リサイクル関連の研究開発・材料開発の支援なども行っています。

CTCのGX紹介資料2

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社「CTC GXビジネスのご紹介」(2023年)より抜粋

尾山:GHG排出の現状把握から削減については、EYでも支援する機会が増えています。この分野にはITベンチャーをはじめ企業の参入が相次いでいますが、CTCのサービスの特長や強みはどんなところにあるとお考えですか?

早﨑 氏:われわれはSIerかつマルチベンダーであることが特長で、お客さまの課題に向き合い、その時々の良いシステムをアッセンブリして最適なものを提供できるのがポイントです。お客さまが検討や試行錯誤を行う上でも、数十年にわたって磨いてきたシミュレーション技術を含めて、貢献できる余地があると考えています。

早﨑 宣之 氏 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 リードスペシャリスト 

早﨑 宣之 氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 リードスペシャリスト 

尾山:システム化の必要性を感じながらもどうしたらいいかわからないという企業は少なくないので、最良のものをピックアップして提供する価値は大きいと思います。御社の取り組みが拡大していくことで、日本の再エネ普及やGX観点での競争力がより高まっていくことが期待できるでしょうか?

佐治 氏:再エネ導入は先進諸外国に比べればまだまだの段階ですが、一定程度増えてきました。今、悩ましいのは、再エネを使うことが価値として浸透していくような制度設計になっていないことです。この点は、国などにも働きかけていきたいところです。

奥村 氏:われわれはこれまで、ITインフラを裏方で支援するという役割でした。GX支援も同じ立ち位置で始めましたが、脱炭素の動きに力強く貢献していく意味でも、より直接的に、事業側に立っていく必要があります。その点で強みになるのは、サステナビリティと情報システムという、専門用語の異なる両方の部門とコミュニケーションできること。お客さまに伴走しながら価値を提供していきたいと考えています。

奥村 智哉 氏 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 GXビジネス推進課 課長 

奥村 智哉 氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 GXビジネス推進課 課長 

そのためには、構想・戦略面を得意とするコンサルティングを手掛ける企業の力を借りたいと考え、声を掛けた組織の⼀つが EYさんです。EYさんは環境に関する取り組み実績が豊富で、今後のビジネスの可能性を探る意味でも、まずはCTC自身のアドバイザーをお願いしようと考えました。それが2022年夏ごろのことです。1カ月半という短い期間でしたが、精力的に動いてくださいました。提供していただいた情報は社内のサステナビリティ部門とも連携し、同年11月に発表した「2050 CTCグループ環境宣言」の目標設定にも役立ちました。

2050 CTCグループ環境宣言

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社「2050 CTCグループ環境宣言」(2022年)より抜粋

尾山:ありがとうございます。御社自身もGXにしっかり取り組まれていて、よりいっそうの強化に向けて一助を担えたのは大変光栄です。

解のない課題に伴走し、クライアント企業と共に変革を共創する
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解のない課題に伴走し、クライアント企業と共に変革を共創する

脱炭素は目的ではなく、持続可能な社会実現への手段の一つ。さらなる推進へ、連携や共創がますます重要になっていきます。

サポートサイドが連携して、シームレスなGXを可能にする

尾山:コンサルティングファームとの今後の連携について、具体的なイメージをお聞かせいただけますか?

奥村 氏:従来のSIerのビジネスモデルは、お客さまが何をやりたいか決まっている状態からスタートします。一方GXは、お客さまはすべきことがわからず悩んでいるので、一緒にシステムを作った上で、実際にどう機能させていくかに落とし込む作業が必要です。これまでのビジネス領域を超えて、お客さまの変革を共創する姿勢が不可欠です。われわれとしては現状把握や実行面をサポートしつつ、戦略面に長(た)けているコンサルティングファームの力を融合して、お客さまがシームレスにGXを実現できるような流れを作っていきたいですね。

佐治 氏:これまでは経営課題と情報システムがそれぞれ別々に近い状態で取り組んできたと感じていますが、GXは経営から実務までがしっかりかみ合わないと進みません。支援する側もかみ合っていかないといけないですし、その過程で異なる強みを持つコンサルティングファームと連携するのは自然な流れです。

尾山:おっしゃるように、SIerが情報システムを中心にアプローチし、コンサルティングファームが経営企画やサステナビリティ企画からアプローチして、サポートサイドがうまく連携していけると、全社的な動きを推進しやすくなるでしょう。

早﨑 氏:とはいえ、お客さまによって成熟度には差があり、世の中の脱炭素の進み方に応じて取り組みは変わるので、現段階ではソリューションをパッケージ化することは難しい状況です。まずは一社一社のお客さまとコミュニケーションをしっかり取って、それぞれの成熟度に応じて適したソリューションを提供していく。その中で、脱炭素の社会的価値についても理解を促し、世の中全体の動きにつなげていきたいと考えています。

尾山:CSV(共通価値創造)の考え方が非常に重要ですね。今後1年前後で情報開示義務化に向けた諸条件が決まっていきます。それに伴い企業の成熟度も高まっていくので、取り組みが一般化していくのは数年後ではないかとイメージしています。

佐治 氏:われわれSIerも、経営全体や社会に視野を広げる必要があります。そうした中で見落としてはいけないのが、そもそもは地球規模で持続可能にしていくことが目的であるということです。脱炭素は手段の一つであり、削減目標を達成するために何かを我慢したり、受け身の姿勢でいては、前向きな変化は生まれません。CTCはデジタルの領域から前向きな課題解決に貢献したいと思っています。

佐治 憲介 氏 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 エネルギービジネス部 エネルギー営業第1課 課長 

佐治 憲介 氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部 エネルギービジネス部 エネルギー営業第1課 課長

尾山:非常に共感するところです。世界は現状を可視化して、デジタルの力を借りながら社会全体でチャレンジしていくフェーズに入ろうとしています。CTCのデジタル、テクノロジーに大きな期待がかかっていると感じています。

奥村 氏:「開示」のためのデータではなく、それを活用して実際に「減らす」活動にしていくところに、まさにわれわれの強みを生かせると自任しています。日本のDXはD(=デジタル化)が優先されてX(=変革)は後回しにされがちです。一方、GXはXが優先されます。お客さまの変革に向けて一緒に作り上げていくことが重要で、ソリューションをあてがうというSIerのこれまでのビジネスモデルは成り立ちません。その意味では、われわれ自身のトランスフォーメーションにもつながるチャンスだととらえています。
GXはブームではなく、2050年以降もチャレンジし続けなければならない課題です。当然ひとりでは達成できないので、共に目指す仲間を増やすことが大きなテーマです。仲間を増やしていくことで、連携と共創を生み出し、GXの流れを加速していきたいと思います。

尾山:さまざまなステークホルダーが手を取り合い、大きな束となって脱炭素社会を実現していかないといけませんね。同じ志を持つ者同士、それぞれの強みを生かしながら力を合わせていけるよう、今後ともぜひよろしくお願いいたします。

GXはブームではなく、2050年以降もチャレンジし続けなければならない課題です。当然ひとりでは達成できないので、共に目指す仲間を増やすことが大きなテーマです。仲間を増やしていくことで、連携と共創を生み出し、GXの流れを加速していきたいと思います
奥村 智哉 氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 科学ビジネス企画推進部 GXビジネス推進課 課長

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