2022年12月20日
早期に成果を出せるマネージャーの条件~着任後ではもう遅い? 鍵は「何をするか」よりも「いつするか」~

早期に成果を出せるマネージャーの条件~着任後ではもう遅い? 鍵は「何をするか」よりも「いつするか」~

執筆者 桑原 由紀子

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング ディレクター

企業の長期的価値創造の要諦となるDE&I推進を支援。プライベートでは一児の母。週末は子供と一緒に空手の稽古にいそしんでいる。

2022年12月20日
関連トピック 人材・組織

関連資料を表示

  • 立教大学・EY共同のマネジメント行動研究調査レポート(PDF)

EYは、異動や転職といったトランジションに際して困難な課題に直面したマネージャーが早期に成果を上げられるようにするための主要ドライバーを新たに特定しました。

要点
  • マネージャーが成果を上げるには、マネジメント行動の内容それ自体よりも、着任前か着任後かなど、どのタイミングで行動するかが重要である。
  • マネージャーが短期的な成果にとどまらず、中長期的に成果を上げ続け、組織の持続的成長を実現するには、メンバーへの働きかけと育成を通じてマネージャー自身のキャリア充実を図ることが重要である。

EYの調査において、環境変化にかかわらず成果を上げるには、最も効果的なタイミングでマネジメント行動を実施することが重要であると解明されました。また、マネージャーの多くは、成果を上げながらもキャリアの充実感を感じておらず、燃え尽き症候群に陥り、企業の持続的成長を損ないかねない懸念が浮き彫りになりました。

立教大学経営学部、田中聡助教との共同研究において、EYは、異動や転職といったトランジションに際して困難な課題に直面したマネージャーが早期に成果を上げられるようにするための主要ドライバーを新たに特定しました。

本調査は、日本の企業9社の管理職層16名に対するインタビューと、日本の企業やNPOなどに所属する1040名の管理職層に対するインターネットでのアンケートを通じ、個々のマネジメント行動や所属組織の環境および支援と、当該管理職の成果との関係について問うもので、回答結果を定量・定性的に分析することで、トランジションに際して困難な課題に直面したマネージャーが成果を上げるための行動・組織面の主要ドライバーを新たに特定しました。

今回の調査によって、転職や社内異動(以下「トランジション」とする)、またニューノーマルな働き方への移行という環境変化の下、高い成果を持続的に上げられるマネジメント行動の要件と、受け入れ側の組織やメンバー(役員・上司・同僚・部下)の要件が明らかになりました。

調査の結果、トランジションに直面したマネージャーのうち、短期間で成果を上げることができたのは、わずか10%であることが明らかになりました。

図1:異動/転職後1年程度が経過した際の会社 または上司からの人事評価結果(5点満点)

なお、成果を上げている10%のマネージャーに共通したマネジメント行動と、受け入れ側の組織・メンバーの要件は以下となります。

図2:トランジションに直面したマネージャーが、短期間で成果を上げるための、3つのマネジメント行動とその組織カルチャー

さらに今回の調査では、高い成果を上げているマネージャーのうち、4人に1人は自身のキャリア充実を感じていないという結果となりました。

図3:客観評価が高いマネージャーのキャリア充実度の分布

組織として、マネージャーに短期成果のみを求めるのではなく、中長期的に成果を上げ続け、組織の持続的成長を実現することを求めるべきであり、そのためには高い成果とマネージャーのキャリア充実を両立すべきといえます。

アンケート調査から得られた示唆として、成果とキャリア充実を両立するためには、マネージャーに関わるメンバーが能力を伸ばし、かつ十分に発揮するような環境をつくることが肝要であることを、マネージャー自身が理解していることが重要です。

マネージャー自身に対する働きかけとして、これまでのキャリアを棚卸しし、トランジションの意味付けを着任前に行い、着任後は常に内省するという自分自身のマネジメントができるか否か、これが変化する環境下における再現性のあるマネジメント行動につながります。

また、マネージャーが成果を上げるとともにキャリアを充実させるためには、トータルリワードの観点で当該層に対して真に効果的な施策を戦略的に適用し、運用していく必要があります。

トータルリワードとは、報酬管理に対するアプローチの1つで、給与や福利厚生といった金銭的報酬のほか、能力開発や質の高い職場環境といった非金銭的報酬も含めた職場で得られる全ての報酬を管理することで、企業が直面する重要な課題の解決や投下した報酬から最大のリターンを得ることを目的とするものです。

それはすなわち、賃金だけでなく、ウェルビーイングと職場環境をもってバーンアウトせずに持続的に活躍できる基盤を整備した上で、さらに成長実感を持ち、実力を発揮できる機会を提供することが有効であるといえます。


レポートのご案内

立教大学・EY共同のマネジメント行動研究調査レポート(PDF:861KB)

立教大学経営学部、田中聡助教との共同研究において、EYは、異動や転職といったトランジションに際して困難な課題に直面したマネージャーが早期に成果を上げられるようにするための主要ドライバーを新たに特定しました。

サマリー

マネージャーが環境変化にかかわらず成果を上げるには、最も効果的なタイミングでマネジメント行動を発揮することが重要です。さらにキャリアに対する充実感を持ち、持続的に活躍するためには、メンバーをおもんばかる姿勢やアプローチが自身のキャリア充実の向上につながることを理解する必要があります。

この記事について

執筆者 桑原 由紀子

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング ディレクター

企業の長期的価値創造の要諦となるDE&I推進を支援。プライベートでは一児の母。週末は子供と一緒に空手の稽古にいそしんでいる。

関連トピック 人材・組織
  • Facebook
  • LinkedIn
  • X (formerly Twitter)