4 分 2020年3月20日
薄暗い嵐雲に向かって航行するコンテナ船

新型コロナウイルス感染症の影響下において激震に耐え得るサプライチェーンを構築する方法

執筆者 Glenn Steinberg

EY Global and EY Americas Supply Chain Leader

Helping companies transform, create value and optimize business performance. Thirsty for knowledge. Ski enthusiast. Husband and father of two Michigan Wolverines.

EY Japanの窓口

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

4 分 2020年3月20日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした混乱に直面する中、サプライチェーンのレジリエンス(弾力性)の鍵を握るのは、ネットワーク化された臨機応変なエコシステムです。

Local Perspective IconEY Japanの視点

新型コロナウイルス感染症が全世界にまん延し、グローバルなサプライチェーンを持つ日系企業のビジネスが大きな影響を受けています。

各企業は、直近で「混乱状態からの復旧」を果たすと共に、今回の様な予期せぬ重大事象の発生に備えた「弾力的なサプライチェーンの構築」を短~中期的に推進することが求められています。

しかしながら新型コロナウイルス感染症はきっかけであり、昨今の多くの予期せぬ混乱(ディスラプション)の中の最も新しい事例に過ぎません。

伝染病だけでなく、自然災害・貿易障壁・テロリズム・サイバー攻撃といった事象への準備、感知方法、対応方針を定め、サプライチェーンの弾力性を高めていくことが不可欠となります。

*本文末尾の参考資料をご覧いただくと、覚えておくべき重要なポイントをご確認いただけます。

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新型コロナウイルス感染症が、人々の健康に与える脅威を受けて、世界中の企業は従業員の安全を第一に考え、出張や外出の自粛を呼びかけるなどして感染の拡大防止に取り組んでいます。

主要産業においては、従業員不足により業務の縮小を余儀なくされており、グローバルサプライチェーンへの大きな脅威となっています。

例えば、フォーチュン1000の企業のうち94%が、新型コロナウイルス感染症が原因でサプライチェーンの混乱に見舞われています。しかし、それは、おそらく全体的な経済への打撃の氷山の一角に過ぎません。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症をパンデミックと宣言したことにより、調査会社のオックスフォード・エコノミクスは最近のニュース記事の中で、世界の経済成長は1兆米ドル以上縮小する可能性があると警告しています。 

新しい常識となったディスラプション(創造的破壊)

新型コロナウイルス感染症の脅威を深刻に受け止めてはいるものの、伝染病は、サプライチェーンに予期せぬ衝撃を与え、業績の低下を招く数々の破壊的要因の1つに過ぎません。

例えば、過去10年間で起きたさまざまな自然災害も、サプライチェーンに混乱をもたらしてきました。2011年に発生した東日本大震災では、日本の自動車メーカーの生産がストップしました。サプライチェーンのレジリエンスは、テロ攻撃や社会不安による試練も経験しています。2019年のチリ暴動は、チリ国内の銅山の生産量の低下を引き起こしました。その他、近年に見られるサプライチェーンへの脅威としては、大規模なサイバー攻撃、貿易障壁、主要製品のサプライヤーが陥っている経営不振などが挙げられます。

サプライチェーンの混乱は企業にとって常に起こり得るリスクです。この高度にグローバル化した時代においては、ビジネスにおけるサプライチェーンが、長く複雑で、不透明になっています。こうしたサプライチェーンの構造は、増加する想定外のディスラプションに対する根本的な整備が十分にされていません。

サプライチェーンの変革

では、サプライチェーンのレジリエンスを高めるにはどうすればよいのでしょうか? 根本的には、企業は固定的・直列的なサプライチェーンから、ネットワーク化された臨機応変なエコシステムへと移行する必要があります。重要な点は、次の5つです。

  1. 評価と戦略:End-to-Endのサプライチェーンのリスク評価を実施して、サプライチェーンのストレステストを行い、重要なリスクシナリオを特定した上で、取り得る対応策を明確にする。

  2. ケイパビリティの構築:サプライチェーンの重要な要素、例えば、可視化(見える化)と監視、代替の事業経営モデルとサプライヤー調達戦略、ネットワークの柔軟性、臨機応変な計画などへの投資を行う。


  3. インテリジェント監視:リスクの監視・報告ツールと、リスクやディスラプションへの素早い対応を可能にする早期警告システムを導入する。新製品へのリスク評価を実施して、需要と供給の変化の予兆を捉える。システムや設備のリスク、サイバーセキュリティ検証をはじめとするリスク管理評価を継続的に実施する。

  4. 対応手順の定義:自然災害やテロ攻撃など、サプライチェーンのディスラプションを想定した業務手順書や対応方法を網羅する「プランB」(破壊的な出来事に備えた計画)を準備する。意思決定の権限(委譲含む)が明確であること、社内外のコミュニケーション方法が整備されていることを確認しておく。

  5. 重大危機への対応:あらかじめ準備した対策では補うことのできない深刻な危機が起きた場合の危機管理フレームワークを準備する。このフレームワークには、ガバナンス手順、あるべき運用モデル、標準的業務などを含める。

新型コロナウイルス感染症がもたらす、世界規模の社会的および経済的な影響を完全に予測することは誰にもできません。それでも予期せぬ破壊的な出来事が起こるリスクは常に存在しており、混乱時でも顧客や地域社会にサービスを提供し続けるのであれば、先回りして計画を立てておく必要があるということを、企業は改めて気付かされました。

上記5つのステップは、世界規模で不測の事態が発生し、ストレスがかかる緊迫した状況でも効果的に機能できるようにサプライチェーンを変革するため、企業がまさに今実行できる取り組みです。単に利益を守るためだけではなく、サプライチェーンのレジリエンスは、世界中の人々の健康と幸福を守るために必要不可欠です。

関連資料を表示

  • 参考資料:EY supply chain resilience をダウンロード

サマリー

従来のサプライチェーンの構造はコスト面で最適化されており、増え続ける予想外の混乱に効果的に対処できるようにはなっていません。レジリエントなサプライチェーンを構築するには、企業のケイパビリティを向上させて、将来起こり得る破壊的な出来事に準備し、アンテナの精度を上げ、感知し、対応能力を高めることが重要です。

この記事について

執筆者 Glenn Steinberg

EY Global and EY Americas Supply Chain Leader

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