再資源化で循環型経済における自社の存在意義を高めることができるか

執筆者
Frank Jenner

EY Global Chemicals Industry Leader

Visionary in markets and business development for the chemical industry. Enjoys race boarding in the mountains. Enthusiastic golfer.

Jade Rodysill

EY Americas Chemicals & Advanced Materials Industry Leader

Relentless servant leader dedicated to effective and inclusive teaming. Driving agile, pragmatic disruption. Architecting and accelerating value chain excellence for manufacturers.

Sue Tame

EY Americas Chemicals and Advanced Materials Industry Leader

Supports chemical companies as they rethink their growth strategy, embrace digital transformation, create agile business models and enhance customer intimacy. Australian. Enjoys travel and genealogy.

18 分 2022年3月31日

化学品企業は循環型経済を活用して長期的価値を創造し、社会と環境への貢献を大きく加速させることができます。

要点
  • サステナビリティへの注目が高まっており、従来型の採取・製造・廃棄(take-make-waste)モデルは、製品や材料を使い続ける循環型モデルに取って代わられる可能性がある。
  • 現在、「ケミカルリーシング」、固形廃棄物からの水素製造、廃プラスチックを再利用する最新のリサイクル技術の試験的導入が進められている。


この50年間で世界の人口は倍増し、天然資源の採取量は3倍に増えました*。この傾向がそのまま続いた場合、2060年までに世界の資源使用量はさらに2倍以上増え、温室効果ガスの排出量は43%増加することになるでしょう1。現在、78億人の全人類が排出する廃棄物は年間約20億トン、1人当たりに換算すると約256キロになります。

このペースで資源を消費していくと、地球上で人間が安全に生存できる限界であるプラネタリーバウンダリーを超えてしまう恐れがあります。人類が生き残るためには、このプラネタリーバウンダリー内で持続可能な生き方をすることを学ばなければならないというのが、今では政府、企業、投資家、消費者のおおむね一致した考えです。

ただし、志は同じだとしても、この目標の達成に必要な取り組みの多くは企業が負担することになるでしょう。そのためには、経済成長と限りある資源の消費を切り離さなければなりません。これを実現する方法の1つが、昔ながらの(資源を採取して、製造に利用して、廃棄するという従来型の「take-make-waste」モデルに従った)直線型のバリューチェーンから循環型バリューチェーンに移行し、製品や材料を品目、成分または分子レベルで使用し続けることです。

循環型経済 - 過去の現実 vs 新たな現実

化学品企業は、このような循環型バリューチェーンの構築を促進し、真の循環型経済の発展を実現させる上で極めて重要な役割を果たすことができます。化学品メーカーの多くが「ケミカルリーシング(化学物質そのものではなく、その使用に対して代価を支払う考え方)」に基づき、廃プラスチックを再利用する最新のリサイクル技術や、固形廃棄物からの水素製造に関して新しいモデルの試験的導入を進めているところです。

一方、そのためには研究開発への大規模かつ長期的な投資、インフラ整備、上流と下流の新たなプレーヤーとの連携、投資に見合う利益が必要です。企業は今後、こうした試験的試みを大規模に進めても商業的に採算がとれることの実証も求められるようになるでしょう。

循環型ビジネスイノベーションを今、積極的に推し進め、短期・中期・長期的にそれを成長戦略に組み込んでいく化学品企業は、政府や規制当局だけでなく、消費者の関心の高まりと投資の拡大をうまく活用できる有利な立場にあります。一方、この分野で後れをとっている企業は、志を同じくするバリューチェーンのパートナーを選び、新たなサプライチェーンを構築することで先行者利益を得た同業他社に引き離される恐れがあります。

メルル公園(ルクセンブルク)
(Chapter breaker)
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第1章

循環の原理を利用して価値を創造する

社会に貢献しながら、新たな収入源の開拓とサプライチェーンの強化を図る上で役立つ重要なアクションが3つあります。

サプライチェーンのレジリエンスを高め、最終的に社会に有益な結果を出すという共通の目標の達成に向けてバリューチェーンの連携が加速し、それにより、新たな収入源の開拓が促されています。また、この収入源が長期間にわたり持続可能であることが分かってきました。

現地のサプライチェーンを強化する

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの間、国境を越えた人の移動と貿易ができなくなり、さまざまな業界でグローバルサプライチェーンが混乱し、木材から塩素に至るまで、需要を満たせない状況が生じるようになりました。オペレーション戦略担当者が国内のサプライチェーンを強化し、新たなプロセスを設計し、自社のレジリエンスの向上を図る中、現地調達のメリットへの注目が高まっています。

半導体メーカー向けの化学品を製造する世界有数のメーカーであるLCY Chemical Corporation社も、サプライチェーンを顧客の近くに移転させることの価値に気付いた企業の一社です。同社は、アリゾナ州フェニックスのTaiwan Semiconductor社に製品を供給するために、(台湾以外では最大規模の)工場を同州内に建設することを検討しています。この工場建設案では半導体用化学品のリサイクルに重点を置く方針です。それにより、塗料や建設など他の業界や用途で使用することができるようになります2

2. 顧客のサステナビリティ目標を推進する

ほんの一握りのグローバルな消費財企業が、自社の包装のリサイクル性とリサイクル含有率を高める意欲的な目標を発表し始めたのは2017年ごろのことです。今では、世界各国の幅広い業界の企業数千社が同様の公約を掲げるようになりました。New Plastics EconomyやThe Plastics Pactなどの構想も進められており、世界的な変革を実現するには目標をどの程度高く設定する必要があるのかを判断する際に役立っています。

こうした状況は化学品企業にとって絶好のチャンスです。顧客がこの目標を達成するのを支援する価値提案を構築し、明確に示すことができます。生産工程で使用するバージンポリマーの削減やリサイクル歩留まり率の向上、劣化の軽減を可能にする添加剤や触媒は、包装の削減目標を資源効率よく達成する顧客の能力を高める製品のほんの一例にすぎません。

3. 新たな収入源の開拓を推進する

EYの分析結果から、世界をリードする化学品メーカーが2020年に発表したイノベーションの35%以上に循環型経済や水素技術への投資が含まれていることが判明しました3。このうち40%強が原料向けのバイオベース材料やリサイクル材料に関わるもの、35%がプロセスをより持続可能なものにすることを目的としたものです4

循環型経済に移行することで、2030年までにGDPを4兆5,000億米ドル増やすことが可能になるかもしれません5。しかし、この成長率と移行を実現するには、化学品業界が代替原料の割合を徐々に拡大していく必要があります。企業が新たなテクノロジーや製品について大胆な数値目標を掲げることで、バリューチェーンと資本市場は強化されます。

BASF社は、循環型経済向けソリューションに対する社会的・商業的目標を明確に定めた、数少ない化学品大手の一社です。同社のウェブサイトでは「BASFは循環型経済向けソリューションの売上高を2030年までに170億ユーロに倍増させ、また2025年までに化石原料を年間25万トンのリサイクル原料や廃棄物を利用した原料に置き換えることを目指します」とうたわれています6

ブダペストのフェンスから眺めた鎖橋
(Chapter breaker)
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第2章

発展と進化を続ける循環型ビジネスモデル

化学品業界にとっての今後の課題と機会に着目した場合、4つの有望なカテゴリーがあります。

さまざまな循環型ビジネスモデルが発展を続けていますが7、その大部分は4つの有望なカテゴリーに分類することができます。

1. 化学品の「リース」または「レンタル」

このビジネスモデルでは、製品(化学品)の所有権はメーカーに残ります。つまり、企業は化学品を購入し、自ら取り扱うのではなく、サービスとしてその提供を受けるのです。そのためメーカーは、数量ではなく、洗浄した組み立てラインの機械の台数、塗装やコーティングした製品の部品の数など、化学品の最終使用状況に応じて対価を受け取ります8。これが、製品効率の向上や廃棄物削減に注力するメーカーの意欲を高めることにつながっています。

  • ケーススタディ:ベストプラクティスを正当に評価する

    Global Chemical Leasing Awardは、ケミカルリーシングや類似の持続可能な化学品管理の成果連動型ビジネスモデルに関わるベストプラクティス、革新的なアプローチやアイデアを正当に評価することを目的に設けられた賞です。2018年には20カ国から90件を超える応募がありました。その中からEcolab Ukraine社が、顧客のイタリアにある醸造所に成果連動型サービスモデルを導入したことを認められ、受賞しました。コンベアベルトの潤滑メンテナンス作業に、(飲料生産量1ヘクトリットル当たりの金額をベースとした)新たな報酬支払い基準を導入することで9、10、同社と顧客は、インセンティブをサステナビリティパフォーマンスの向上とコスト削減に連動させることができたのです。Global Chemical Leasing Award 2021の受賞者は2021年9月に発表されています。

2. 回収への協力意欲を高める

拡大生産者責任(EPR)プログラムの導入が普及してきました。これは、使用済み製品を回収する責任を生産者が負い、再利用、再資源化、適切な廃棄を促すビジネスモデルです。EUではこのプログラムの法制化が一般的になっており、タイヤ、廃油、電池、ポリ袋、光化学物質・化学物質、冷媒、殺虫剤・除草剤、電子機器などのプログラムが定着しています。

  • ケーススタディ:塗料業界のスチュワードシップ

    PaintCareはメーカーが主導するプログラムです。米国の10州でペイントスチュワードシップ法の導入を提唱してきました。多くの自治体のリサイクルプログラムでは塗料が回収されていないため、家庭や企業を対象とした無料の回収所を参加企業が設置する仕組みです。回収所の運営費などは、消費者が支払う塗料の料金にあらかじめ上乗せされています。回収した塗料は、最大限有効に活用するというポリシーに従い管理されます。状態の良い塗料は再利用プログラムを介して消費者に提供されますが、ほとんどはリサイクルに回されます。再利用やリサイクルができないものは、加工業者が別の最適な用途を考えます11。PaintCareが回収した塗料は現時点で184.4リットルです。

3. リサイクル性を高める

化学品・プラスチックメーカーは、添加物や触媒などを使用して簡単に分離できる製品を設計することで、材料のリサイクル性を高められます。リバースサイクルが短ければ短いほど、投入されるエネルギー、労働力、材料の損失を減らすことができます。

  • ケーススタディ:プラスチックのリサイクルを可能にする新たなテクノロジー

    Clariant社は2020年に、カーボンブラックを使用せずに暗色プラスチックを開発できる新たなテクノロジーを発表しました。このテクノロジーで誕生するのが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)を含むさまざまなプラスチックのリサイクル性を直接向上させる製品ラインです。バージン材、使用後にリサイクルされた再生材のどちらもリサイクル性が向上します。通常、カーボンブラックが使用されていると検知できないこの種の包装材も、自動選別システムで識別できるようになります12

4. エコシステムの連携

顧客が修理、改良、使用後の廃棄物の再資源化により製品寿命の延長を図る今、オンライン上の「循環型経済のマーケットプレイス」を介してベンダーと顧客の専門知識を融合させることが有益なプラットフォームとなり、革新的な循環型バリューチェーンを新たに構築できるかもしれません。

  • ケーススタディ:持続可能な開発

    マテリアルズマーケットプレイス(持続可能な開発のための米国経済人会議が設立)は、企業が連携するクローズドループネットワークの構築を目的としています。メーカー、リサイクル事業者、起業家、その他の売り手をつなぎ、再利用・リサイクルの市場機会を開拓・拡大しています。このマーケットプレイスを利用する企業、学術機関、非営利団体は北米全土で2,200以上です。2020年6月時点で、5,300トンを超える材料が再利用やリサイクルにより有効利用されています13

現在のプラスチックのリサイクル状況から分かるように、循環型経済の構築は大きな機会と課題をもたらしています。その一例を紹介します。

  • 焦点:プラスチックリサイクルの課題

    この40年間に世界のプラスチック生産量は4倍に増え、今では生産される化学品全体の3分の1以上を占めるまでになりました。しかし現在のところ、全世界のプラスチックの14%しかリサイクルされていません14。プラスチックの製造にリサイクル材の使用を自治体や国レベルで義務付ける条例などの数が増えているとはいえ、現在のビジネスモデルやテクノロジーでは、こうしたリサイクル歩留まり率の向上を求める声に十分に応じることができないかもしれません。

    ほとんどの場合、リサイクル能力はPET、PP、HDPEなどのマテリアルリサイクルに相変わらず集中しています。その理由は、リサイクルがしやすく、新たに投資をしなくてもリバースロジスティクスを管理できるからです。しかし、メカニカルリサイクル(物理的再生法)には原料の分離や洗浄が必要です。また、技術的な問題から材料をリサイクルできる回数に限界もあります。食品容器などに使用できる再生プラスチックは要件が一段と厳しい反面、再生フレークの価格が上昇しないため、リサイクル意欲が高まりません。飲料水のペットボトルをカーペットやフリースジャケットにダウンサイクルする方が経済的だと考えるリサイクル事業者が出てくる可能性があります15

    原料の抽出では、リサイクルしにくい製品、混合プラスチック、より幅広い材料の処理が次のフロンティアとなるでしょう。この領域で極めて有望なのがケミカルリサイクル(化学的再生法)です。プラスチック廃棄物の化学構造をより短い分子に変換して新しい化学反応に使用するため、リサイクル材料の有用性がさほど制限されず、製品を同じ用途に転用しやすくなります。

    とはいえ、循環型プラスチックの開発への投資とこの開発の拡大を真に促すためには、4つの主な課題への取り組みを引き続き進める必要があるでしょう。

    • インフラEUでは、プラスチックの平均リサイクル率が15%です。米国でも同様に、推計で91%のプラスチックがリサイクル処理センターに行くことなく、ゴミ埋め立て地に直接運ばれています16。東南アジアでも状況はあまり変わりません。リサイクルに回されるプラスチックは推計でわずか9%です17。回収されても、汚れにより歩留まり率がさらに下がる場合があり、回収されたプラスチックのうち埋め立て処分となる割合は現在、米国で約70%、EUで30%に上ります18。回収されたプラスチックの大部分は現行のメカニカルリサイクル処理に適していません。カーペットや生地など、通常埋め立て処分されるポリエステルを含め、別の廃棄物が混合しているのです。
    • ケミカルリサイクルの競争可能性:欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)の推定では、原油価格が1バレル当たり65~70米ドルを超えたときに初めて廃プラスチック原料がバージン原料に対して競争力を持ちます19。ちなみに原油価格は2020年に15年ぶりの安値を付け、20~65米ドルの間で取引されました。また、リサイクルが難しい特定のプラスチックのリサイクルには高度な技術が必要で初期費用もかかることから、リサイクルの拡大は限定的です。
    • インセンティブ:ブランドオーナーは、リサイクル材料の含有に価格プレミアムを支払う意欲をまだ示していません20。消費者もプラスチック廃棄物への対処を企業に強く期待しているものの、消費者の再生プラスチック製品に対する認知度と、こうした製品を割高でも購入する意欲は低いままです。一方、Trivium Packaging社が発表したレポートによると、消費者の74%は持続可能な包装材であれば割高であっても購入したいと考えています21。フェアトレード製品やオーガニック製品、あるいは再生紙製品とは違って、再生プラスチックの認証や製品ラベルはまだ消費者に認知されておらず、市場でも受け入れられていません。
    • 消費者保護:最先端のリサイクル処理によりリサイクル材料を使った新たな包装材の開発が進む今、規制当局は食品・飲料やヘルスケアなど特定用途向けの包装材の品質と安全性を確認する必要があります。規制ではこれまで、メカニカルリサイクルされた材料の含有要件しか定められていませんでしたが、2021年には新たなガイダンスがEUと米国の規制当局から発表されました22

それでは次に、企業がこれらの課題に対応し、それをチャンスに変えるためにすべきことを考察します。

シャボン玉に触ろうとする少女
(Chapter breaker)
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第3章

課題に対応するために化学品企業がすべきこと

今なすべきは、循環型サプライチェーンの基盤を適切に構築することです。そして、次、さらにその先に目を向けると、他にも成し遂げるべきことがあります。

短期的に見て化学品企業に必要となるのは、自社の業務プロセスとバリューチェーンに着目して材料の循環型ループを構築する機会を見いだし、廃棄物の再利用とできる限りの削減を可能にすること、そして原料(エネルギーを含む)をバイオベース素材やリサイクル素材に代替できる可能性があるプロセスを評価することです。

社員を対象としたイノベーションコンテストや組織の研究開発能力強化への直接投資により、社内でイノベーションを促進することもできます。しかし、どこに投資するかを決定するにあたっては、社外に目を向け、自治体、国、地域の新たな規制や長期的な廃棄物ネット(実質)ゼロ目標を判断材料にしなければなりません。これらの規制と目標は、混乱だけでなく非常に大きな機会を企業にもたらし、自社のパーパスをこれらの目標に沿ったものにすることができます。それに加え、真摯に取り組む姿勢を示し、市場の信頼を高める(とともに投資を促す)ためには、意欲的かつ実行可能な目標を設定し、一般に発信しなければなりません。

化学品会社が今、次、さらにその先の課題に対応していくには

次の段階(6~18カ月) — 最先端のデジタル技術を循環型経済に取り込む

循環型経済の原則の重要性と、この原則にどのように従うかについてトップダウンで合意を形成したら、次に着目する必要があるのは製品設計です。新たな視点で既存の製品とサービスを見直すことができます。顧客のサステナビリティ目標について顧客と直接話をすることで、新しいアイデアやケミカルリーシングなど代替のパートナーシップモデルの実現可能性を検討する機会が生まれるかもしれません。

デジタル技術の進歩も、循環型バリューチェーンの透明性と信頼性の向上に活用できると考えられます。材料の追跡に人工知能(AI)やブロックチェーンソリューションを利用することで、供給元についての情報の正確性と循環性に対する信頼を高めることができます。そのような製品であれば、割高であっても顧客は購入するかもしれません。

この役割を担うことが期待できるもう1つのメカニズムが、リサイクル材料が含まれていることを認証する制度です。メカニカルリサイクルであれ、ケミカルリサイクルであれ、(パートナーと足並みをそろえて)バリューチェーンの認証の正式な取得に取り組むことによって最終製品の商業的価値が向上します。また、認証の取得により、今後クレジット取引制度(プラスチックを対象とした制度など)が生まれ、充実した段階でそうした制度に参加する選択肢が与えられます。

その先(18カ月~5年目) — 循環型のコミュニティと文化を拡大させる

循環化について自社の目標を定め、それを実行するための収入機会を見いだすことができた化学品企業には、より幅広い循環型経済の産業発展に注力することが求められます。そのために、比較的規模の大きい企業が講じることができる方策の1つが、スタートアップ・アクセラレーター・プログラムとインキュベーターです。有望なビジネスモデルとテクノロジーを再現し、その規模を調整するフレームワークを提供しながら、新たなアイデアやテクノロジーのヒントを求めることができます。

上流と使用済み製品の課題に対処するソリューションへの投資もまた、企業がパートナーシップを組み、影響力を高めるためのメカニズムです。自主的であれ、強制的であれ、メーカーは回収、選別、廃棄のインフラを整備・充実させることで、原材料を入手し、再利用する機会が生まれます。商業的に採算がとれ、回収への協力、修理、修繕の意欲を高められるビジネスモデルはどれかを見極めることのできる企業は、ブランドや小売業者とパートナーシップを組んでアパレル、玩具、自動車などのリサイクルしにくい製品に対応することにより、顧客吸引力を高められるでしょう。

最後に、近年は廃棄物と再利用の問題への対処に関心を持つ企業が結集し、バリューチェーンを横断した取り組み、アライアンス、マーケットプレイスを次々と立ち上げています。循環経済及び資源効率性に関するグローバルアライアンス(GACERE)は、そうした注目すべきアライアンスの1つです。循環型経済への世界規模での移行や、主要国・地域とのパートナーシップを含めたパートナーシップイニシアチブを進めるためのプラットフォームをステークホルダーに提供することを目的に、EU、国連環境計画(UNEP)、国連工業開発機関(UNIDO)の提唱により2021年にGACEREは発足しました。EU加盟国のほか12カ国が参加しており、循環型経済への投資と移行を求める声が今や世界規模で高まっていることは明らかです。

循環型の未来への道筋

循環型ビジネスという考え方に移行し始めたばかりか、すでに移行を着実に進めているかを問わず、以下のような検討すべき重要なポイントがあります。

  • 組織全体のビジョンと戦略に沿った、またこのビジョンと戦略を推し進められる循環戦略にするにはどうすればいいのか。
  • 顧客と事業に価値とインセンティブを相互にもたらすことができるのはどの循環型ビジネスモデルか。
  • 国内のサプライチェーンのループを重視するビジネスモデルでサプライチェーンの脆弱性を軽減できるのか。
  • 新たな製品とビジネスモデルの開発、試験運用、商業化にあたり、スケジュール面で考慮すべき点は何か。
  • 現在のパートナーと新たなパートナー候補の中で、サステナビリティ目標を共有でき、新たなアイデアに対するリスク許容度が同程度の相手を把握しているか。
  • 進捗状況の評価にどのような判定基準とツールを用いるか。
  • 成功を社内でどのように定義するか。またこれに関連した外部評価で、目指すべき目標はあるか。

移行を成功させることのできる企業にとって、これはEmbankment Project for Inclusive Capitalism(EPIC:統合的な目線による新たな資本主義社会の構築に向けた取り組み)のフレームワークに従い、長期的価値を創造する大きなチャンスです。新たな収入源、サプライヤーや雇用主としてのブランド価値および競争力の向上23、これまで捨てられてきた廃棄物の再利用や販売によるコスト削減の可能性をはじめ、期待されるメリットは少なくありません。

変化のスピードは速いため、同業他社より機敏に対応できない化学品企業の既存のビジネスモデルや収入源では、たちまち難しい課題に直面する恐れがあります。顧客がリサイクルできる製品や包装材を好むようになり、規制当局が使い捨てプラスチックへの課税や生産者責任の拡大を行う姿勢を強めるにつれ、従来型の採取・製造・廃棄(take-make-waste)ビジネスモデルに対する投資家や消費者の関心が薄れるかもしれません。

  • 参照を表示

    * EYがCoalition for Inclusive Capitalismと連携して立ち上げ、共同で主導するEmbankment Project for Inclusive Capitalism(EPIC:統合的な目線による新たな資本主義社会の構築に向けた取り組み)のフレームワークに基づく。

    1. International Resource Panel (IRP) Global Resources Outlook 2019(Materials include biomass, fossil fuels, metals and non-metallic minerals, while natural resources encompass all materials plus water and land.)

    2. “Taiwan Semiconductor factory in Phoenix could attract new LCY Chemicals plant to Arizona, report says,“ The Arizona Republic, 22 February 2021

    3. EYの分析結果より。対象は2020年1月1日から11月5日までのイノベーションに関するニュース記事176本、うち47本が循環型経済に関するもの。

    4. “Revolutionizing recycling at the molecular level: Eastman begins commercial operation of innovative chemical recycling technology,” Eastman website, accessed 15 April 2021

    “BASF signs deal with Hungarian firm to consume pyrolysis oil derived from waste tires,” Chemical Week, accessed 15 April 2021

    “Mitsubishi Chemical invests in French bioplastics development firm,“ Chemical Week, accessed 15 April 2021

    “Solvay collaborates with Veolia to optimize life cycle of EV batteries,” Chemical Week, accessed 15 April 2021

    “Ineos, Saica Natur partner for post-consumer recyclate supply in flexible packaging, Chemical Week, accessed 15 April 2021

    “AkzoNobel launches recycled paint to help close loop on waste,“ Chemical Week, accessed 15 April 2021

    5. “The world needs a circular economy. Help us make it happen,” World Economic Forum, accessed 28 May 2021

    6. “Circular Economy at BASF,” BASF website, accessed 24 June 2021

    7. “Cleaning Up With RENT-A-CHEMICAL,” ENSIA website, accessed 15 April 2021

    8. “Ecolab wins silver in the Global Chemical Leasing Awards,” Ecolab website, accessed 15 April 2021

    9. Case Study – Food & Beverage NALCO, published September 2014

    10. “PaintCare FAQs,” PaintCare website, accessed 15 April 2021

    11. “Clariant develops dark colors for plastic packaging without using carbon black,“ Indian Chemical News, 19 June 2020

    12. “Facilitating Company-To-Company Industrial Reuse Opportunities That Support The Culture Shift To A Circular, Closed-Loop Economy,” United States Business Council for Sustainable Development website, accessed 15 April 2021

    13. “New recycling technologies can help solve the plastic waste problem,” Woodmac website, accessed 15 April 2021

    14. “Plastic has a problem; is chemical recycling the solution?” C&EN website, accessed 15 April 2021

    15. 同上

    16. “New recycling technologies can help solve the plastic waste problem,” Woodmac website, accessed 15 April 2021    

    17. 同上

    18. “Chemical recycling ‘promising’ for circular economy, EU official says,” Euractive, 26 August 2020

    19. “Plastic has a problem; is chemical recycling the solution?” C&EN website, accessed 15 April 2021 

    20. 同上

    21. “74% of consumers willing to pay more for sustainable packaging,” Circular website, accessed 15 April 2021

    22. “Administrative guidance for the preparation of applications on recycling processes to produce recycled plastics intended to be used for manufacture of materials and articles in contact with food,” European Food Safety Authority website, accessed 15 April 2021

    23. “WRAP study: Circular Economy could create 3 million jobs in EU,” WastEcoSmart website, accessed 15 April 2021

    “Estimating Employment Effects of the Circular Economy,” International institute for Sustainable Development, September 2018

    “Plastic Recycling Facts and Figures,” Balance Small Business website, accessed 15 April 2021

サマリー

今こそ、社会の今の在り方が地球に負担をかけていることを認識し、未来の循環型経済をけん引する真のリーダーになる戦略的機会を見極めるべき時です。

この記事について

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Frank Jenner

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Sue Tame

EY Americas Chemicals and Advanced Materials Industry Leader

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