旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第52回 地方発! 格差を無くし能力を活かせる社会の実現を 〜Action trumps everything〜

矢上清乃
学び舎mom株式会社 代表取締役/MBA(米国テキサス州立大学オースティン校)

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2021年7月1日特大号に掲載された記事をご紹介します。

自分自身のキャリアを振り返ると、プロフィールには、いわゆる成功した部分が表現されていますが、実際は泥臭いことの方が多く、いろいろと挑戦し失敗し、挫折を乗り越えられずまた失敗してきての今があります。働き方も、大学卒業時に描いていたものとはまったく違い、正社員、パート、無職、経営者と、ありとあらゆる形を経験してきました。


例えば、大学卒業後、東京でバリバリ働きたいと思っていましたが名古屋支社配属で落胆。東京で働くことやMBA留学の夢をあきらめきれず、”28歳の春”さながら、親と喧嘩しながら正社員の仕事を辞めて実家を出て勝負に出ました。東京で半年のつもりで留学予備校に通いながら留学応募をするも見通しが甘く不合格通知ばかりを受け取りました。仕事も夢も何もかも失いどん底に陥りましたが、そこから立ち直るきっかけは、東京で出会った方々に励ましてもらったことでした。そして1年後、無事テキサス大学に合格しました。


MBA留学の際に、名古屋に残った夫とは途中に結婚し、そしてMBA卒業して、名古屋で夫と暮らしたかったのですが、MBA卒の女性を雇ってくれる会社は、当時、名古屋になく、東京での日本IBMのコンサルティング部門へ入り、バリバリ働きながら、しばらくして、名古屋の転勤が叶い、不妊治療もしながらやっと妊娠しました。しかし産休3日目に破水して緊急入院し切迫早産。産後うつ気味になり、そのどん底な気持ちから救ってくれたのが出会ったママ友や行政のセーフティーネットでした。その後、復職するも夫が東京で働くようになり、名古屋でのワンオペ育児の大変さと、また地域への恩返しをしたい気持ちも勝り、育休中に始めていた親子支援団体の拡大を目指して退職し、その後、起業に至りました。


名古屋は都会ですが、それでも東京、関東圏外と比べると「人・モノ・お金・情報」の多様さと流通量の格差があります。私も東京でしか学べない、経験できないことのために、大きな金銭面の負担をして東京へ行く必要がありました。また、男性と比べて、どうしても女性はライフイベントの変化に影響されてしまい、私自身も上記でご紹介した通り、自分の思っていたキャリアを一直線で追求することが困難なケースが多いです。特に、子どもを育てながら自分の夢や希望するキャリアを歩むには、場所と時間の制約が大きすぎて、夢を諦めてしまう女性とたくさん出会ってきました。女性は働くか、家事育児をするかどちらかを選ばなければならない、0か100かの環境ではなく、ライフイベントに合わせた多様なキャリアロードマップ、働き方を創出したい!地域差、性差による機会の格差を無くし、一人ひとりが思い描く人生を歩んでいける環境を作りたい! という強い思いを持ちながら、「女性が自分らしさを軸に能力を生かし挑戦できる社会を作る」をビジョンに事業を展開しています。


さらには、コロナ禍で大変な環境に置かれている方も多いのですが、その一方でテクノロジーの発展のおかげで、オンラインでできる仕事やオンラインで学べる機会が増え、場所と時間の制約が減ってきている今、地域で生活しているからこその強みを発揮できる時代の到来を実感し、地域発で幸せな働き方をどんどん創出していきたいと思っています。


皆さんに最後にお伝えしたいこととして、自分の夢を実現するためには挑戦することの大切さです。挑戦するには恐れがあったり失敗したりはつきものですが、学び、経験と素晴らしい仲間との出会いがあれば失敗は乗り越えられます。Action trumps everything 行動は全てに勝る! まず行動しましょう! 応援しています。

矢上清乃


矢上清乃(やがみ・きよの)
学び舎mom株式会社 代表取締役/MBA(米国テキサス州立大学オースティン校)

略歴
金融情報サービス等を経てMBA留学後、日本IBMにて製造業コンサルティング、マーケティング業務等に従事。2009年育休中に親子支援団体を立ち上げ、事業推進のために2013年創業。これまでに5000人の女性コミュニティを創造し、経産省や自治体、企業との協働プロジェクトを通して、女性のライフステージに合わせたキャリアアップ、雇用創出、起業支援事業を展開中。夫の単身赴任中5年の名古屋でのワンオペ育児生活を経て埼玉へ転居し家族3人暮らしながら名古屋へ出張する2拠点生活中。