旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第61回 女性のキャリアは、時に複雑。だからこそ、メンターが大事

2022年12月14日

池原 真佐子
株式会社Mentor For 代表取締役社長/一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会 代表理事

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2022年4月10日増大号に掲載された記事をご紹介します。

私は株式会社Mentor Forという会社で、女性活躍・DE&I推進を目的とした社外メンターの企業マッチング、社内メンター制度導入支援を行っています。また一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会でも代表を兼務し、メンターとしてのスキルを学べる講座などを展開しています。
 

メンターという言葉にどのようなイメージがありますか? 私たちは、メンターを「人生やキャリアの、ちょっと先をいく存在」だと思っています。キャリア形成や人生の選択で、迷うこと、悩むことはたくさんあります。そのような時に、メンターが寄り添い、全力で応援してくれたらこれほど心強いことはありません。悩む気持ちを受け止め、メンターの経験や、キャリアの成功、失敗からの学び、多様な選択肢を提示してくれたら、私たちは、勇気を持って前に進んでいくことができるでしょう。


私はこれまで、決して順調なキャリアではありませんでした。20-30代前半はキャリア迷子。結婚後は「仕事より子供」という社会のプレッシャーでもがいたり、妊娠しても臨月で配偶者が海外赴任になったりました。産後はワンオペ育児や日欧二拠点生活でビジネスを継続していましたが、「母親なのにそんなに仕事をしてどうするの?」といった声に心が折れそうになったことも。また、メディアで見かけるロールモデルはキラキラしすぎていて、自分が余計に惨めに感じることも多くありました。


この経験から学んだことは、2つあります。1つ目は、女性のキャリアは、ライフイベントが大きく影響し複雑であるということ。結婚出産に限らず「この会社は女性は働き続けられる?」「このパートナーと結婚したら仕事を続けられる?」「いつか介護がある?」など、何かしらの(現在、あるいは未来の)ライフイベントがキャリア形成の不安要因になりがちです。2つ目は、キラキラしすぎている遠くのロールモデルよりも、等身大で多様な生き方・価値観のロールモデルが身近にいることがキャリア形成では大事だということ。


私自身は寄り道ばかりのキャリアで、配偶者の転勤や育児出産でのキャリア断絶の危機という女性特有の課題で悩みや迷いも多くありましたが、それでも働きがいを持ち、前を向けたのは、まさに「等身大」で「多様」なタイプのロールモデルが、メンターとして話を聴いてくれたり多様な選択肢を助言してくれたりしたからです。(そしてこの経験が現在のビジネスの原点です。)


みなさんはどうでしょうか? キャリアの節目で、「メンター」というポジションではなくても、話を聴いて励ましてくれた存在がいたかもしれません。そしてまた、この記事を読んでいるみなさん自身がメンターとして、次世代に知見を循環させていっているのかもしれません。最後になりますが、一人ひとりの豊かで多様なご経験・知見が、メンターという存在を通じて、社会の中に循環し、次世代の女性がより、働きがいを持ちやすい社会になることを心から望んでいます。

池原 真佐子

池原 真佐子(いけはら・まさこ)
株式会社Mentor For 代表取締役社長/一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会 代表理事

略歴

早稲田大学院(教育学)卒業後、PR会社、NPO、コンサル会社、INSEAD(Executive Master in Change)を経て起業。2018年にDE&Iと女性リーダー育成に特化した社外メンターの企業マッチング事業を開始。先人の知見を共有するメンタリングの手法を確立し、一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会も立ち上げ、メンターの普及促進に貢献している。一児の母、趣味は読書と旅。