OECD、BEPS行動8-10における低付加価値グループ内役務提供の移転価格に関する新たな指針を公表

OECD、BEPS行動8-10における低付加価値グループ内役務提供の移転価格に関する新たな指針を公表

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EY 税理士法人

2015年11月13日
カテゴリー その他

Japan tax alert 2015年11月13日号

2015年10月5日、経済協力開発機構(OECD)は、税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)に関する行動計画に基づく最終レポートを公表しました。

行動8-10「移転価格の側面」に関するレポート(最終レポート)は、OECD移転価格ガイドライン第1章セクションDの改正、コモディティ取引に関する指針、無形資産に関するOECD移転価格ガイドライン第6章の改正、低付加価値グループ内役務提供(low value-adding intra-group services)に関するOECD移転価格ガイドライン第7章の改正、費用分担契約に関するOECD移転価格ガイドライン第8章の改正、及び取引単位利益分割法に関する指針に関連するものです。

本アラートは、グループ内役務提供に関するOECD移転価格ガイドライン第7章の改正について説明しています。主な改正点は、低付加価値グループ内役務提供に係る簡易移転価格アプローチの選択に関する追加的な指針を含むセクションDの新設です。さらに、第7章の他のパラグラフにおける改正及び明確化にも触れています。

OECDは、この指針が、低付加価値役務及び本社経費に係る適切な請求額と支払国側の課税ベースを守る必要性とのバランスをうまく保つことを目的とするものであると述べています。

新たな指針の主な項目は、以下のとおりです。

  • 多国籍企業(MNE)の中核事業の一部ではなく、価値ある無形資産を必要とせず又は創出せず、かつ重要なリスクを伴わないという、補助的な性質を持つ低付加価値グループ内役務提供の標準的な定義
  • 当該定義に一般に該当する役務の一覧。列挙された役務内容は、主にバックオフィスサービス
  • 低付加価値役務提供に係る独立企業間チャージを決定するための簡易アプローチを選択する場合の指針
    • 低付加価値役務提供に関するコスト決定のプロセス
    • 一般的な配賦キーの使用可能性
    • 簡易便益テスト
    • 標準的な5%のマークアップ
  • MNEが簡易アプローチを適用する際に作成すべき文書及び報告に関する規範的指針
  • 簡易アプローチが否認された場合に、税務当局が当該基準を上回る基準を設定できること。下記のステップ2の一環として、基準値に関するさらなる検討が行われる予定である

導入は2つのステップで行われる予定となっており、ステップ1として、多数の国のグループが2018年までに簡易算定メカニズムの選択を承認することに合意しました。ステップ2では、他の国々に対して、簡易算定メカニズムの選択が税源を浸食する支払いにつながらないことを確かめることを目指しています。このステップでは、簡易算定メカニズムが適用されない場合の基準値及びその他導入上の問題に関するさらなる検討が行われる予定です。

最後に、改正指針では、税務当局が低付加価値役務提供の対価に関する源泉税を制限するよう促しています。

前回のディスカッション・ドラフトは2014年11月に公表されたものでしたが、今回の最終的な指針には細かい変更及び明確化が盛り込まれています。

おわりに

改正後のOECD移転価格ガイドライン第7章には、低付加価値グループ内役務提供を対象とする簡易移転価格アプローチの選択に関する重要な指針が含まれています。この簡易アプローチと、EU共同移転価格フォーラムによって公表された低付加価値グループ内役務提供に関するレポートや特定国における現行規則との間には、類似点もあれば相違点もあります。

グローバル企業は、この指針により、自社のグループ内役務提供の取決めがどのような影響を受けるかを評価する必要があります。新たな指針は、当該役務提供に関する実務管理負担を軽減する機会を提供する可能性があります。

※本アラートの全文はPDFでご覧いただけます。

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