
EU経済・財務相理事会がBEPS防止のための草案を公表
Japan tax alert 2016年1月21日号
EU財務理事会であるEU経済・財務相理事会(ECOFIN:Economic and Financial Affairs Council of the European Union)は、経済政策に対する協調的なアプローチを含め、財務及び経済の多数の分野に責任を負っています。
ECOFINは、税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)防止のため2015年12月8日に会合を開き統合EU指令の可能性を協議した後、12月11日に当該指令の草案を公表しました。
同指令の目的は、EU加盟国がOECDによるBEPS行動計画の提言を、EU加盟国が迅速で一貫した協調的な導入することを示すことです。その進捗は素早く、同指令が最終決定され欧州委員会に提示される目標時期は2016年の初めとなっています。
同草案は過去に提示された草案に続くものであり、過去に提起されなかったいくつかのポイントを追加しています。これには、一律の出国税に関する規定、及び第三国における低税率の配当、利得又は支店利益に対する最低実効法人課税に関する切替条項が含まれます。「切替条項 (Switch over clause」とは、低税率又は無税の国配当、利得又は支店利益を受け取った場合の免税扱いを課税及び税額控除のアプローチへの切替えるものです。
指令の詳細
指令案は加盟国が従う必要のある特定の最低基準を定めている一方、税源浸食と利益移転の防止を目的とする国内の規定又は合意に基づく規定の適用を妨げていません。
特に重要な事項は、以下のとおりです。
- 恒久的施設/代理人の一律の定義(恒久的施設認定の人為的回避に関連する)
- EBITDAに基づいた一律の利子損金算入否認ルール(支払利子損金算入制限ルール)
- 第三国で低税率課税となる配当、キャピタルゲイン及び支店利益に対する強制的課税(切替条項及び被支配外国法人)
- 一律の出国税ルール
- EU加盟国間及びEU非加盟国との取引に係るハイブリッド事業体によるミスマッチの防止に係るルール
2017年における迅速な対応及び一貫した導入を確実にし、これによりEU加盟国による最低基準の導入を義務付けるため、2016年当初に欧州委員会が公表することが目標となっているようです。
影響
ECOFINは同指令に関してさらなる作業が行われる必要があるとしており、欧州委員会が最終指令を発出することを要請しています。かかる最終指令が現行のECOFINの草案と実質的に異なるかどうか、及び異なる場合に最終指令がどのようなものになるかは不明確です。
しかし、現行草案(又は修正草案)による同指令の導入された場合には、多国籍企業への課税に重要な影響を及ぼし、欧州における課税のかつてない変化の引き金を引くことは明らかです。
とりわけ、リバースハイブリッド、EUの持株及び金融会社、並びに支店を伴う幅広いストラクチャーを、これらの提案の文脈においてレビューすることが必要と考えられます。