関税撤廃のさらなる拡大  WTO情報技術協定(ITA)合意から環境物品協定(EGA)へ

関税撤廃のさらなる拡大 WTO情報技術協定(ITA)合意から環境物品協定(EGA)へ

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EY 税理士法人

2016年9月28日
カテゴリー 間接税

Japan tax alert 2016年9月28日号

WTO情報技術協定(ITA)の拡大合意の実施状況と、ITAを成功事例として交渉が進められている環境物品協定(EGA)について最新情報を以下にお知らせします。

情報技術協定の拡大合意の背景及び実施状況

1996年にIT機器の関税撤廃を目的として発効した情報技術協定(以下、「ITA」という)は、世界貿易機関(以下、「WTO」という)設立以後、最初で、かつ、最も重要な貿易自由化協定と位置付けられますが、1997年より対象品目が更新されていませんでした。昨年7月のITA拡大合意(201品目)は、時代の変化に伴う技術革新の反映のみならず、全会一致を原因とするWTOラウンド交渉の停滞、機能不全が指摘される中、WTO加盟国が等しく関税撤廃の恩恵を得る大きな成果と評価されました。

拡大合意を受け、米国は、ITA拡大対象201品目のうち、有税品の約60%の関税を2016年7月1日に撤廃しました。同じくEUでは、約77%の関税を即時撤廃しています。日本では多くの品目において合意前に関税が撤廃されていますが、今回新たに引下げ対象となる品目については、必要な国会審議及びWTOへの通告を経て、今後引下げが実施(即時撤廃)されることになります(2016年7月1日に遡っての(遡及)適用はない予定です)。

ITAから環境物品協定(EGA)交渉への進展

WTOにおけるITAを成功事例とし、その合意形成や成果の共有方式をベースに、第2弾ともいうべく交渉が進められた協定が、環境物品協定(以下、「EGA」という)です。EGA交渉は、2014年7月より正式に開始され、環境の保護及び気候変動対策に貢献する物品の関税撤廃を目的として、有志国により交渉が進められました。現在では、46の国や地域が交渉に参加しています。環境物品の貿易自由化については、アジア太平洋経済協力(以下、「APEC」という)会議での取り組みが先行(2015年12月までにAPECが定める環境物品54品目の関税を5%以下にまで引き下げることで合意、大半の加盟国が既に履行)していましたが、EGAでは、APECリスト54品目より幅広い品目での関税撤廃を目指して交渉が進められています。現在は、参加国から提出された候補品目リストを土台に、最終合意に向けて議論が進められている段階です。

EGA対象品目

EGA対象品目リストは、現時点で公表されているものはありません。交渉の土台となる品目として、APEC環境物品54品目及び2009年に日米欧等の9カ国により非公式に提出された153品目が含まれると推測されています。2015年9月の時点では、650品目が議論のテーブルに上がっていましたが、参加国による報告書によると、304品目まで限定されたことが伝えられました。以下は、参加国のホームページ等の公開情報から、現時点で推定されるEGA品目の一例です。

EGA対象(推定)品目
  • 大気汚染管理関連品目(気体のろ過・清浄機器等)
  • 再生可能エネルギー関連(風力、水力、太陽光等)
  • 高効率発電関連品目(ボイラー、タービン等)
  • 省エネルギー関連品目(エアコン、冷蔵庫、LED照明等)
  • 環境モニタリング・分析・評価関連品目(サーモメーター等)
  • 騒音・振動対策関連品目(防音コルク、エンジン専用部品等)
  • 廃棄物処理関連品目(廃棄物コンテナ、コンベヤー、シュレッダー等)
  • 水処理関連品目(液体のろ過・清浄機器等)

※本アラートの全文は、下記PDFからご覧ください。

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