平成29年3月期決算における税務上のポイント 成長志向の法人税改革に注目

平成29年3月期決算における税務上のポイント 成長志向の法人税改革に注目

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EY 税理士法人

2017年3月1日
カテゴリー 税制改正関連

Japan tax alert 2017年3月1日号

エグゼクティブサマリー

3月に入り、3月末を決算期末とする企業の決算準備が近づいています。デフレ脱却と経済再生を目指した経済政策の下、昨年度に続く法人税率の更なる引き下げにより、法人税改革2年目で法人実効税率20%台を実現させる一方で、課税ベースの拡大を行い、法人課税をより広く負担を分かち合う構造への改革が行われています。「稼ぐ力」のある企業の税負担を軽減することによって、企業に対して収益力拡大に向けた前向きな投資を後押しすると共に、継続的・積極的な賃上げが可能な企業体質への転換を促す内容となっています。

この他、円滑・適正な納税のための環境整備としての組織再編税制の見直し等も行われています。

本アラートでは、平成29年3月期決算で税務上重要となる5つのポイント(1. 法人税率の引き下げ、2. 法人事業税率と外形標準課税、3. 欠損金の繰越控除、4. 減価償却、5. 役員給与)について解説します。

1.  法人税率の引き下げ

平成28年4月1日以後に開始する事業年度においては、法人税率が23.9%から23.4%に下がります。

  平成27年度 平成28年度
中小法人以外の普通法人   23.9% 23.4%
中小法人 所得の金額のうち年800万円以下の部分(※) 15.0% 15.0%
所得の金額のうち年800万円を超える部分 23.9% 23.4%

※中小法人の軽減税率の特例適用後

2. 法人事業税率の変更と外形標準課税の拡大

平成28年4月1日以後に開始する事業年度における、資本金1億円超の普通法人の法人事業税・地方法人特別税の標準税 率は、表の「平成28年度」のとおりです。

  平成27年度 平成28年度
付加価値割 0.72% 1.2%
資本割 0.3% 0.5%
所得割 年400万円以下の所得 3.1%(1.6%) 1.9%(0.3%)
年400万円超
800万円以下の所得
4.6%(2.3%) 2.7%(0.5%)
800万円超の所得 6.0%(3.1%) 3.6%(0.7%)
地方法人特別税 93.5% 414.2%

 

(注1)カッコ内の率は、地方法人特別税率に関する暫定措置法適用後の税率であり、当該税率の制限税率は、標準税率の2倍(現行 は1.2倍)に引き上げられます。

(注2)3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はありま せん。

また、外形標準課税の拡大に対応して、平成27年度税制改正で創設された負担変動に対する軽減措置が拡充されます。欠 損法人や、事業規模に比べて所得が小さい法人など、外形標準課税の拡大により負担増となる法人のうち、事業規模(付加価 値額)が一定以下の法人については、負担増を軽減する措置が3年間(平成30年3月期まで)適用されます。付加価値額が30 億円以下の法人の場合には、適用年度の課税標準(所得割、資本割、付加価値割各々の課税標準)に、平成27年度の税率と適 用年度の税率を乗じ、後者の負担が重くなる場合、負担増加額の一定割合(平成28年度3/4、平成29年度1/2、平成30年度 1/4)を適用年度の事業税額から控除します。付加価値額が30億円超40億円未満の法人の場合にも、上記の一定割合を上限 とする控除が認められます(付加価値額が40億円に近付けばこの一定割合はなだらかに逓減します)。

3. 欠損金の繰越控除制度の見直し

平成27年度税制改正で決定された欠損金繰越控除の見直しについて、企業経営への影響を平準化するため、控除限度割合 の減少ペースが、次の表のとおり変更されています。

平成27年度改正 平成28年度改正(現行)
事業年度開始日 控除限度割合 事業年度開始日 控除限度割合
平成27年4月1日から平成29年3月31日 100分の65 平成27年4月1日から平成28年3月31日 100分の65
平成28年4月1日から平成29年3月31日 100分の60
平成29年4月1日以降 100分の50 平成29年4月1日から平成30年3月31日 100分の55
平成30年4月1日以降 100分の50

 

なお、繰越欠損金の繰越期間を10年に延長する措置は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じる欠損金 額について適用されます。

4. 減価償却制度の見直し

平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物の償却方法について、定率法が廃止され定額法に一本化されまし た。建物付属設備や構築物の償却方法として定率法を採用している場合は、その取得日によって定率法か定額法かを区分する ことになりますので留意が必要です。

5. 役員給与に関する税制の整備

損金の額に算入される役員給与について、以下の改正が行われています。

損金算入される役員給与 主な要件(改正前) 改正後
定期同額給与 その支給が1ヶ月以下の一定の期間ごとである給与で、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの 改正なし
事前確定
届出給与
所定の時期に確定額を支給する給与で、納税地の所轄税務署長に届出をしているもの 役員から受ける将来の役務の提供の対価として交付する一定の譲渡制限付株式による給与について、事前確定の届出が不要とされた
利益連動給与 業務執行役員に支給する利益連動給与で一定のもの 算定指標の範囲にROE(自己資本利益率)その他の利益に関する一定の指標が含まれることが明確化された

役員報酬については、コーポレート・ガバナンスの実践を後押しするために、経営陣の中長期的なインセンティブとして導入が 見込まれる、譲渡制限付株式(いわゆるリストリクテッド・ストック)を事前確定届出給与に位置付け、税制面の整備が行われま した。また、利益連動給与の「利益に関する指標」については、「利益」だけではなく「利益に一定の調整を加えたもの」も含ま れるという考え方から、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)等の指標が明確化されました。

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