Brexitアップデート

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Japan tax alert 2017年3月30日号

2016年6月23日、英国は歴史的国民投票により欧州連合(EU)からの離脱を決定しました。その9カ月後の昨日、メイ首相は欧州理事会に対し、英国のEU離脱(Brexit)の意図を通告し、リスボン条約第50条が発動されました。

この通告により、英国とEUとの間で離脱の条件を決める2年間に及ぶ交渉がスタートします。

交渉の結果は当面公表されないため、Brexitの影響を受ける可能性の高い全ての企業は、大きな不透明感に直面することになります。メイ首相は「英国は可能な限り自由な貿易を目指す」が、「その条件は各産業に異なる影響を及ぼすため、全グループへの影響を把握するには交渉を注意深く見守る必要がある」と述べました。企業は、今後の事業計画に対する潜在的影響を既に算段しています。

第50条の発動について、EU及び英国で事業を行う日本企業グループが考慮すべき点は、主に以下のとおりです。

人的資本及び移動

BREXITが人の移動に及ぼす影響は非常に重要です。自由移動に関する指令は適用されなくなり、出入国は英国法に委ねられるようになります。

必要とされる場所での人材採用や移動させる企業の能力が影響を受け、コストが上昇し賃金上昇圧力が高まる可能性があります。さらに、EUの社会保障協定が適用されなくなる公算が大きく、英国と出身国・地域との間に社会保障協定が締結されていないことから、二重課税が生じる可能性があります。企業は、こうした社会保障費用や現在のスタッフへの影響を計算する必要があります。

法規制

Brexit後は、EUの法規制が適用されなくなる可能性もあれば、同等性が重視され引き続き適用される可能性もあります。契約が引き続き効力を有するかどうか、英国がEUを離脱した後直ちに確認する必要があります。主要な規制産業は銀行、保険、ライフサイエンス等が挙げられます。

サービスや製品がEUの規制当局に規制されている場合は、英国とEUの両方で事業を行うための新規登録や二重登録が必要かどうか検討する必要があります。規制当局が大陸に移動したり、従来の貿易モデルが適切でなくなったりした場合には、一部の機能をEUに移転する必要が生じる可能性があります。

税務

メイ首相が厳しい貿易協定の締結に固執すれば、英国は関税同盟からも離脱すると思われます。交渉期間内に双方が貿易協定に合意できなかった場合には、世界貿易機関(WTO)加盟国に適用される税率が英国にも適用されます。これは、英国とEU間で輸出入を行う企業のサプライチェーンに多大な影響を及ぼす可能性があります。

英国とEU間で事業を行う企業には、親子会社指令や利子・ロイヤルティ指令等の主要指令の多くが適用されなくなります。Brexit後は現行の法人体制が不適切になる場合もあり、源泉徴収コストが増加する場合には法人体制を再検討する必要があります。

税関手続き

英国は単一市場の一員であるため、英国と他のEU加盟国間のモノの移動に大きな問題はありませんでした。
しかし、英国が関税同盟を離脱すれば、EUとの輸出入には税関申告と別途のセキュリティチェックが必要になります。
その結果、輸送時間が長くなりコンプライアンス費用が増加することから、サプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。

外国為替

英国のBrexitが決定して以来、英ポンドは主要通貨に対し下落しています。ポンド安は、英国の輸出品価格の低下や、外国人投資家にとっての不動産価格の低下等のメリットをもたらしますが、一方で輸入コスト増などのデメリットももたらします。

おわりに

Brexitの影響を把握するため、企業は、2年間にわたるBrexitの交渉を注意深く見守り、評価する必要があります。

EYのBrexitチームでは、企業グループが不透明な状況を乗り切り、Brexitの影響を定量化できるよう、サポートいたします。各企業ごとのBrexitリスク評価について、ご質問がございましたらお問合せください。

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