日欧EPA大枠合意 広範な関税削減に期待

日欧EPA大枠合意 広範な関税削減に期待

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EY 税理士法人

2017年8月1日
カテゴリー 間接税

Japan tax alert 2017年7月10日号

大枠合意の概要

2017年7月6日にブリュッセルで行われた日本とEUの定期首脳協議において、日本とEUの経済連携協定(EPA)が大枠合意に達しました。

この協定には、物品・サービス及び投資並びに政府調達の分野だけでなく、非関税措置並びに地理的表示(GI)及び知的財産権の保護など幅広い分野が盛り込まれる見込みです。

また、本協定は、総人口6.4億人、世界のGDPの28%、世界貿易の約37%の広範な経済圏をカバーするものであり、発効後は日本及びEUの企業に大きな影響を及ぼすことになります。

関税引下げについて

日本とEUは、最終的には相手国からの輸入品の99%に係る関税の撤廃を約束しており、従来の自由貿易協定に比べ包括的な内容となっています。

(1)EUの関税引下げ

日本からEUへの輸出額の上位は、輸送用機器、一般機械、電気機器などの工業品が占めています。EUはすべての工業製品(経済産業省所管品目)の関税を即時、又は段階的に撤廃することに合意しました。EPA発効時点で、工業製品の無税割合は38.5%から81.7%に上昇(輸出額ベースで一般機械は86.6%、化学工業製品は88.4%、電気機器は91.2%)し、日本製の工業製品におけるEU市場内の競争力が大幅に高まることになります。

また、交渉の大きな焦点となっていた自動車について、完成車の関税(現行10%)は段階的に引き下げられ、8年目に撤廃、自動車部品に対する関税の即時撤廃は輸出額ベースで92.1%と、TPPや韓国・EUFTAを上回る高い水準となることになりました。

(2)日本の関税引下げ

日本もすべての工業製品の関税を即時又は段階的に撤廃することに合意しており、化学品、プラスチック、化粧品、衣服、革製品等の関税が即時又は段階的に引き下げられます。また、食品に関する関税の引き下げも目立ち、EU産のワインの関税は即時撤廃、チーズやチョコレートなどの高関税品の関税も段階的にゼロまで引き下げられることになっています。豚肉と牛肉についても差額関税制度は維持されますが、関税が段階的に引き下げられます。また、大幅な関税引下げが期待できる分野が履物と革のハンドバッグです。履物の関税は30%から21%に即時に引き下げられ、10年かけて撤廃され、加えて、革のハンドバッグへの関税も10年かけて撤廃されることになっています。

原産地規則

関税撤廃や引下げの恩恵を受けるためには、単に日本(又はEU)からの輸出であるだけでは不十分で、協定で定められたルールに則って「日本原産」又は「EU原産」と認められなければなりません。

この原産性の認定基準について、EU当局の発表によると、自動車(HS8701-8705)は非原産材料が45%以下であることとされています。ただし、乗用車(HS8703)に関しては許容される非原産材料の割合が段階的に引き下げられることになっており、最初の3年は55%以下、次の3年は50%以下、そして7年目以降は45%以下となります。

自動車部品についても同様に、原動機付きシャシ(HS8706)と車体(HS8707)の許容される非原産材料は45%以下(発効後5年間は55%以下)、その他自動車用部品(HS8708)に関しては、50%以下(発効後3年間は60%以下)となります。

履物(HS64類)の許容される非原産材料は50%以下、革製品(HS42類)の許容される非原産材料は45%以下となります。

今後の動向

今回の大枠合意では物品の関税引下げなどが規定されたものの、投資家と国家間の紛争解決を定めた(ISDS)は、日・EU間で協議を継続することになっており、最終合意は早くとも年内になるとの報道がされています。また、EU側はEPAの発効時期について2019年初頭を想定していますが、日本側は時期についての明言を避けており、発効時期は正確な見通しが立っていません。さらにEPA締結の可否につき、欧州議会の承認に加えて、EUに排他的権限が与えられている関税以外の分野に関しては、全加盟国の各国により異なる批准手続きが必要となることから、時間がかかる可能性があります。過去には、EUとカナダとの貿易協定(CETA)の批准にあたり、ベルギーのワロン地域議会が批准に反対を表明したことで、調印が遅れたこともあり、今後の動向に注目する必要があります。

税率新旧対照表

 

日欧EPA大枠合意、広範な関税削減に期待

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