日本がBEPS防止対策の租税条約に関する多数国間条約に署名

日本がBEPS防止対策の租税条約に関する多数国間条約に署名

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EY 税理士法人

2017年7月14日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2017年7月14日号

エグゼクティブ・サマリー

2017年6月7日、日本を含む67の国・地域は、経済協力開発機構(OECD)がパリで主催した署名式典において、「税源浸食及び利益移転(BEPS)を防止するための租税条約に関連した措置を実施するための多数国間条約」に署名しました。多数国間条約署名の国際的重要性に関する詳しい背景については、2016年12月2日付 EY Global Tax Alertをご参照ください。

日本は、署名にあたり、日本が他の国・地域と締結している租税条約で、対象租税条約(Covered Tax Agreements)として指定する35の条約のリストを提出し、また、対象租税条約のリストとともに、多数国間条約の様々な規定に関する留保事項(reservations)と通告事項(notifications)の暫定の一覧を提出しました。今後、多数国間条約に係る批准、受託又は承認の証書が寄託されることにより、最終的な当該条約の採択状況が確定することになります。

議論の詳細
背景

2015年10月5日、OECDはBEPS行動15に基づく二国間租税条約改定のための多数国間条約の構築に関する最終レポートを公表しました。この最終レポートは、15のBEPS行動全てについての最終レポートパッケージの一部として公表されたものです。その後、2016年11月24日、OECDは多数国間条約の本文と注解(explanatory notes)を公表しました。

2016年12月2日付 EY Global Tax Alert (英語のみ)にて、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメント、租税条約濫用防止、恒久的施設(PE)、紛争解決メカニズム等の多数国間条約のBEPS防止措置についての詳細な分析を行っていますので、こちらをご参照ください。

2017年6月7日、67の国・地域は、OECDがパリで主催した署名式典において、多数国間条約に署名しました。また、9の国・地域も近い将来に当該条約に署名する意向を表明しました。署名国・地域は、対象租税条約のリストとともに、多数国間条約の様々な規定に関する採択状況について暫定の一覧を提出しました。今後、多数国間条約に係る批准、受託又は承認の証書が寄託されることにより、各国・地域の最終的な当該条約の採択状況が確定されます。

※以下の詳細は、下記PDFからご覧ください。

多数国間条約の構成
日本の対象租税条約及び多数国間条約
紛争の解決
強制的・拘束的仲裁制度

今後の影響

日本は、35の租税条約、すなわち租税条約ネットワークを構成する過半数の租税条約に対し多数国間条約の適用する意思を示しています。これは、日本における国際課税制度及び租税条約に基づくBEPS勧告の実施においても重要な意義を有します。

日本が多数国間条約の署名に際して行った暫定的な留保や通告は、近年において日本が進めている二重租税条約の交渉政策と整合が図られていると考えられます。日本が他の24の国・地域間との強制拘束力のある仲裁を選択しているという事実は、日本がBEPSを推進しようとする締約国としての役割を果たし、他の締約国・地域との争いを可能な限り効率的に解決するために最善の努力を払うことを示しています。

多数国間条約は、5つの国・地域が多数国間条約の批准、受託又は承認の証書を寄託した後に発効されますが、批准手続き中に、国・地域の選択は変更される可能性があります。特定の二国間租税条約に関しては、両締約国・地域が多数国間条約の批准、受託又は承認の証書を寄託し、一定の期間が経過した後にのみ発効されます。なお、その期間は規定によって異なります。例えば、源泉徴収税に関する規定は、いずれの締約国・地域においても最数的にその批准を通告した年の翌年1月1日に発効されます。基本的には2019年以降の適用が見込まれますが、一部の二国間租税条約では、2018年から早期に適用される可能性があります。

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