外国口座税務コンプライアンス法(FATCA):海外拠点を有する金融機関向けアップデート情報

外国口座税務コンプライアンス法(FATCA):海外拠点を有する金融機関向けアップデート情報

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EY 税理士法人

2017年10月26日
カテゴリー FATCA/CRS

Japan tax alert 2017年10月26日号

2017年9月25日、IRSは納税者番号及び生年月日の取得に関するガイダンス(Notice 2017-46)を公表しました。本ガイダンスは、モデル1国のFFI及び米国に拠点を有する金融機関に影響のあるものとなっています。

主な影響は、以下をご参照ください。  

いずれのケースにおいても、現行の顧客確認手続を再点検し、納税者番号の取得について適時適切な対応ができるよう準備が必要となります。  

(1)モデル1国のFFIへの影響  

自身の顧客情報の中に米国の納税者番号を保有していないモデル1国のFFIは、2017年までの期間については、必ずしも米国納税者番号を当局に対して報告する必要はないとされていました。  

上記経過措置に関連し、本ガイダンスにおいて、以下のすべての条件を充足する限り、2017年から2019年までの間については、既存口座に関して、米国納税者番号の報告を行わなかった事実のみをもって重大な遵守違反(Significant Non-Compliance)にあたらないとする実質的な経過措置の延長が行われています。  

  • 口座保有者の生年月日を報告していること
  • 納税者番号を年次で徴求していること
  • 2017年分の年次報告に先立ち、電子データ上で米国納税者番号を検索していること

ただし、当該措置にあわせて、当該顧客に対して米国納税者番号を取得するためのプロセス及び手続の構築を速やかに行うことも求めており、これらの求めに、適時・適切に対応しないと認められる場合には、今後IRSは通告を行い(モデル1国のFFIであっても)不参加FFIに区分するとしています。

(2)米国の金融機関への影響

2017年1月6日公表のチャプター3に関する暫定規則では、2017年より外国納税者番号(もしくは外国納税者番号を提示できないことの合理的な理由)及び生年月日が記載されていないW-8等の源泉徴収証明書(Withholding Certificate)に依拠できないとしています。また、米国金融機関は、外国納税者番号及び生年月日を受領した(もしくは保有している)場合、Form 1042-Sにおいて報告することが求められます。

ただし、当該暫定規則に対する源泉徴収義務者からの負荷軽減の要望をふまえ、本ガイダンスでは、以下の通り、当該対象範囲を限定する旨の修正ないし明確化が行われています。

  1. 様式1099の報告対象となること及びバックアップ源泉徴収を避けるために源泉徴収証明書を取得する場合、又は、様式1042-Sの報告対象とならない支払を行う際に源泉徴収証明書を取得する場合については、必ずしも外国納税者番号及び生年月日を取得する必要はないことを明確化

  2. 以下に該当する場合についても、外国納税者番号の取得は要しないことを明確化ないし取扱いを見直し
    (ア)米国との間で情報交換協定を締結していない
    (イ)納税者番号を発行していない国としてIRSが公表する国(本ガイダンス公表時点においては、バミューダ、英国領バージン諸島、ケイマン諸島が含まれる予定)
    (ウ)政府機関、国際機関、外国中央銀行、もしくは米国領の居住者等によって保有される口座

  3. 外国納税者番号の取得要件に係る移行措置の導入。移行措置は、2019年12月31日までに段階的に導入
    (ア)2018年1月1日以降に署名された源泉徴収証明書
     ・源泉徴収義務者の米国支店又は米国オフィスで管理されている金融口座について、外国納税者番号(もしくは外国納税者番号が発行されていない合理的な理由)が記載されている必要がある。
     ・源泉徴収義務者は外国納税者番号が不正確であることを認識していない限り、口座保有者が記載した外国納税者番号に依拠することができる。
     ・口座保有者が外国納税者番号を保有していない場合、合理的な理由を提供する必要がある(W-8等の記載要領参照)。

    (イ)2017年12月31日以前の支払いに係る源泉徴収証明書
     ・外国納税者番号(もしくは外国納税者番号が発行されていない合理的な理由)が含まれていないことのみをもって源泉徴収証明書は無効とされない。

    (ウ)2017年12月31日以前に署名された有効期限3年の源泉徴収証明書
     ・2017年12月31日以前に署名された有効期限3年の源泉徴収証明書に基づき、2018年1月1日以降に行う支払いについては、源泉徴収証明書に外国納税者番号(もしくは外国納税者番号が発行されていない合理的な理由)が含まれていないことのみをもって、当該源泉徴収証明書は無効とされない。
     ・ただし、以下のいずれかの最も早い日以降の所得の支払に対しては、その限りではない。
       ・ 2019年12月31日
       ・ 源泉徴収証明書の有効期限の満了日
       ・ 源泉徴収証明書の修正を必要とする状況の変化が生じた日

    (エ)2017年12月31日以前に署名された無期限有効の源泉徴収証明書
     ・財務省規則1441-1(e)(4)(ⅱ)(B)及び1471-3(c)(6)(ii)(B)において、無期限有効とされる源泉徴収証明書に基づき、2018年1月1日以降に行われる支払いに対しては、定められた期限まで源泉徴収証明書に外国納税者番号が含まれていなくても有効とみなす。
     ・ただし、以下のいずれかの最も早い日以降の所得の支払に対しては、その限りではないものの、2019年12月31日以降に行う支払に対しては、以下(オ)に記載する代替手続を適用することができる。
       ・2019年12月31日以降
       ・源泉徴収証明書の修正を必要とする状況の変化が生じた日

    (オ)2017年12月31日以前に署名された源泉徴収証明書に係る代替手続き
     ・2020年1月1日以降に行う支払いであっても、以下に該当する場合には、2017年12月31日以前に署名された外国納税者番号を含まない源泉徴収証明書に依拠することができる。
     ・口座保有者の源泉徴収証明書に関連する書面(電子メールの書面でも可)により外国納税者番号を取得した場合
       ・顧客ファイルに口座保有者の外国納税者番号を所有し、その番号が口座保有者の源泉徴収証明書に関連付けられる場合
  4. 生年月日の取得要件
    • 2017年12月31日以前に署名された源泉徴収証明書に基づき、2018年12月31日以前に行う支払いについては、口座保有者の生年月日が顧客ファイルや源泉徴収証明書に含まれていない場合であっても、無効とはみなされない。
    • 口座名義人からの書面により(電子メールの書面でも可)生年月日を取得した場合、当該顧客ファイルに生年月日が所有されているものとみなすことができる。
  5. 1042-Sの提出
    • 米国支店又はオフィスで管理されている金融口座については、以下に該当する場合、2018歴年分の年次報告からは、1042-Sおいて外国納税者番号を申告しなければならない。
      ・口座保有者が外国納税者番号を含む源泉徴収証明書を提出
      ・代替手続きのもとで口座保有者の外国納税者番号を取得
      ・口座保有者の外国納税者番号を電子検索可能な形で保持

Notice 2017-46の原文は、こちらから(英文のみ)ご参照ください。

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