2017年度英国秋季予算: 法人課税のハイライト

2017年度英国秋季予算: 法人課税のハイライト

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Japan tax alert 2017年11月24日号

11月23日、英国財務相、フィリップ・ハモンド(Philip Hammond)は、不確実性の高まりを背景に20年ぶりの秋季予算を発表しました。財相は、「課題に正面から立ち向かい」、「英国にとっての好機を掴む」ために「前向きに」「変化を受け入れる」として予算案を提示しました。

本アラートでは、日本の多国籍企業に適用される可能性がある主要措置のいくつかに焦点を当てて解説します。テクノロジー企業については、研究開発費税額控除及びその他の措置の改正、また不動産事業については、不動産投資の課税方法の変更による影響が生じるとみられます。

法人税率

財相は、法人税率について2020年4月1日より19%から17%への引下げを再確認しました。17%への税率引下げは歓迎すべきものですが、これは日本の外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制。以下、「JCFC」)の適用対象となるトリガー税率を下回っているため、日本企業はすべての英国における事業を見直し、JCFCの税務リスクを検討することが不可欠です。また、英国での受動的所得も2018年以後適用される新しいJCFC制度の下で分析する必要があります。

なお、予期されていなかった小さな改正ですが、これまでJCFCの適用上、問題となることが多かったキャピタルゲイン課税等におけるインフレ調整控除の今後の累積の凍結が決定されました。

テクノロジー事業 - 研究開発、IFA、デジタル販売

研究開発(R&D)費用控除の割合は、2018年1月1日から11%から12%に引き上げられます。さらに、3年間の事前申請合意を提供するために、研究開発費用控除申請の新しい高度なクリアランスサービスが試験的に開始される予定です。

両方の改正は前向きなものであり、イノベーションに関わる企業に対する英国のコミットメントを再確認しています。新しい研究開発プロジェクトの拠点をどこに置くか検討している日本企業は、税制優遇措置の強化と追加の確実性を考慮に入れる必要があります。

同時に、政府は15年間にわたり改正されていない現行の無形固定資産規則の見直しを発表しました。また、国際法人税課税については、デジタル経済における英国法人税の支払いが、英国市場から生じる価値、特に英国のユーザーの参加によって生み出された価値に見合ったものであることを確保するという主旨に基づいた法人税とデジタル経済に関するポジションペーパーを公表すると発表しました。これは、英国国内向けのデジタル販売をターゲットにするために、最近の迂回利益税(DPT:diverted profits tax)等を含む既存の措置に追加がある可能性を示唆しています。

不動産事業 - 英国不動産と賃貸収入の課税

英国に所在するあらゆる種類の不動産の処分から生じる非居住者の利益には、英国の税が課されます。この措置の目的は、非居住者による不動産の直接的及び間接的処分の両方が英国税の対象となるように英国の課税範囲を拡大することにあります。この変更は、2019年4月1日(企業の場合)又は2019年4月6日(個人等の場合)以降に発生する処分の利益に適用されます。

英国の土地及び財産への投資が最初に行われた際に、英国の不動産に関する利得の課税に対するこれらの変更が考慮されていないため、将来の英国の事業体又は英国の土地及び財産の処分の影響を今後は考慮する必要があります。

2019年4月から、英国政府は、英国の土地建物の権利における直接的及び間接的処分により生じたあらゆる利益を、物件の性質又は処分する事業体の居住地にかかわらず課税します。間接処分とは、処分する人又は会社が少なくとも25%保有し、不動産が資産の大半を占める事業体の株式売却のことです。

非居住者に影響を及ぼすもう1つの不動産関連措置は、2020年4月から非居住者である法人家主の賃貸所得が(現在の所得税ではなく)法人所得税の対象となることです。これは、現在の20%の源泉徴収から19%/17%の法人税率への税率の引下げを意味しますが、これについても企業はJCFCへの影響を見直す必要があります。

今後のスケジュール

予算には、全体的な税制に関する根本的な変更は多く含まれていませんでしたが、特定の事業に影響を及ぼすような細かな変更が多数あります。これらはまた、最近の英国の税制改正(利子費用の控除制限及び法人所得税欠損金改正等)、並びに日本における2018年のJCFC改正という文脈で検討する必要があります。

最近の法制改正と秋季予算が貴社のビジネスに与える可能性のある影響については、EY税理士法人の英国タックスデスクまでお問い合せください。

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