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平成29年12月14日に、平成30年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の国会における法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意ください。
→ 平成30年度税制改正大綱の詳細ニュースレターへ(2017.12.27発行)
1)賃上げ及び生産性向上のための税制パッケージ
A)所得拡大促進税制の見直し・拡充
賃上げや設備投資を一定割合以上行った場合には、給与支給増加額の15%の税額控除ができる制度になります。さらに教育訓練費の増加要件を満たす場合には、20%の税額控除が認められます。中小企業に関しては、一定の要件を満たす場合に、給与支給増加額の最大25%の税額控除が認められる制度になります。平成30年4月から3年間の時限措置となります。
B)情報連携投資等の促進に係る税制(IoT投資税制)の創設
企業内外のデータを連携・高度利活用することにより、生産性の向上を図る一定の要件を満たす情報連携投資を行った場合、設備等の取得価額について特別償却(30%)又は税額控除(5%あるいは3%)ができる措置が講じられます(3年間の時限措置)。
C)租税特別措置の適用要件の見直し
所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資をほとんど行っていない大企業について、生産性の向上に関連する税額控除(研究開発税制等)の適用を行わないこととします(3年間の時限措置)。
D)中小企業の設備投資支援
中小企業の一定の要件を満たす設備投資について、固定資産税を2分の1からゼロまで軽減することを可能とする3年間の時限的な特例措置が創設されます。
2)株式を対価とする株式等の譲渡(株式対価M&A)に係る所得計算の特例の創設
産業競争力強化法の特別事業再編(仮称)に基づき、保有する株式を譲渡し、対価としてその認定を受けた事業者の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとされます(3年間の時限措置)。
3)その他
1)個人所得課税(所得控除)の見直し
A)給与所得控除
控除額が一律10万円引き下げられます。給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円として、その上限額が195万円に引き下げられます。子育て世帯、介護世帯には負担増が生じないように配慮がなされます。
B)基礎控除
控除額が一律10万円引き上げられます。合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用ができないことになります。高額の年金収入を得る高齢者について、公的年金等控除が引き下げられます。これらの改正は平成32年分以後の所得税について適用されます。
2)事業承継課税の見直し
事業承継税制について、10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が行われます。
3)その他
1)恒久的施設(PE)関連規定の見直し
わが国の国内法におけるPEの定義について、国際的スタンダード(BEPS報告書、新OECDモデル租税条約、BEPS防止措置実施条約(MLI))に合わせる見直しが行われます。
A)PE認定の人為的回避防止措置の導入
いわゆる「代理人PE」について、その範囲に、外国法人等の資産の所有権の移転等に関連する契約の締結に関する業務を行う者が追加されます。また、「独立代理人」の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する者(持分割合50%超の関係にある者等)に代わって行動する者が除外されます。
保管、展示、引渡しなどの特定の活動を行う一定の場所等は、PEに含まれないものとされます。ただし、その活動が外国法人等の事業の遂行にとって準備的又は補助的な機能を有するものでない場合には、PEに該当することとされます。
いわゆる「建設PE」の期間要件について、PE認定回避を目的として契約期間を分割した場合には、分割された期間を合計して判定を行うこととされます。
B)租税条約上のPEの定義と異なる場合の取扱い
わが国が締結した租税条約において、国内法上のPEと異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける外国法人等については、その租税条約上のPEを国内法上のPEとします。
上記の改正は、平成31年分以後の所得税及び平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。
2)外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直し
外国企業をターゲットにした国際的M&A実施後の再編・統合(PMI: ポスト・マージャー・インテグレーション)に伴う外国関係会社株式の移転に伴う譲渡益に係る取扱いが見直されます。
一定の要件を満たした場合には、当該譲渡を行った外国関係会社が合算対象会社であったとしても、株式移転に伴う譲渡益は適用対象金額の計算上控除されることとなります(譲渡の日から2年以内に当該譲渡をした外国関係会社の解散が見込まれることなどが必要とされます)。
この改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
1)たばこ税の見直し
「紙巻きたばこ」が、平成30年10月から4年間かけて、1本あたり3円増税されます。「加熱式たばこ」も、5年間かけて段階的に増税されます。
2)国際観光旅客税の創設
本邦から出国する観光客等に対して、出国1回につき1,000円の国際観光旅客税が徴収されます(平成31年1月7日以後の出国から)。
3)森林環境税の創設
地方の固有財源として、平成36年度から課税されます。市町村が個人住民税均等割と併せて年額1,000円の賦課徴収を行います。
4)消費税の見直し
5)収益認識基準の見直し
6)税務手続における電子化の促進
大法人(資本金の額が1億円を超える法人等)については、法人税等・消費税の電子申告が義務化されます(法人税等については、平成32年4月1日以後に開始する事業年度から、消費税については、同日以後に開始する課税期間から)。法定調書や所得税の年末調整手続についても、一層の電子化に向けた措置が講じられます。