BEPS update ~OECD、ベトナム、オーストラリア、アイルランド及びロシア~

BEPS update ~OECD、ベトナム、オーストラリア、アイルランド及びロシア~

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EY 税理士法人

2017年3月31日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2017年3月31日号

本BEPS updateでは、EYグローバルから発行されているタックス アラートから各国のBEPS最新情報を抜粋してお知らせします。なお、各国の詳細情報については、英語の原文を参照ください。

OECD

2017年3月6日、マレーシアがBEPSの包摂的枠組みに加わりました。包摂的枠組みの参加国としてマレーシアは今後、行動5(有害な租税慣行への対応)、行動6(租税条約の濫用の防止)、行動13(移転価格文書化)及び行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)におけるミニマムスタンダードを遵守する方針です。また、他のBEPS参加国と対等の立場で、BEPSプロジェクトにおける残りの基準設定、並びにBEPSパッケージ実施のレビューやモニタリングに参加できるようになります。

ベトナム 

2017年2月24日、ベトナム政府は関連者間取引を有する企業の租税管理に関する施行規則(Decree20)を発行しました。当Decreeには、行動13の一部として展開された移転価格文書化の三層構造アプローチ(国別報告書、マスターファイル、ローカルファイル)の導入が盛り込まれています。当Decreeによれば、ベトナムに最終親会社が所在し、一事業年度における全世界の連結売上高が18兆ベトナムドン以上の場合は、国別報告書を作成する義務があります。最終親会社がベトナム居住法人ではなく、最終親会社の居住国において国別報告書を作成する義務のある場合も、ベトナムにおいて国別報告書を提出する義務があります。上記の通りに国別報告書を提出できない場合は、提出できない根拠を示す説明文書を税務当局に提出する必要があり、納税者は法人税申告書の提出前に移転価格文書作成も義務付けられます。さらに、税務調査や移転価格調査において税務当局から移転価格文書の提出を求められた場合には、15営業日以内に提出しなければなりません。移転価格文書化についての詳細は、今後発表される見通しです。当Decreeには支払利子の損金算入についての規定も盛り込まれており、一事業年度において損金算入可能な関連者への支払利子はEBITDAの20%を上限とするとされています。当Decreeは、2017年5月1日より適用となります。

詳細:Vietnam issues new transfer pricing decree effective 1 May 2017, dated 9 March 2017 (英語)

オーストラリア

2017年3月3日、オーストラリア税務局は、国別報告書制度の一環であるローカルファイルにおいて国外関連者(International Related Party:IRP) の契約書の提出におけるガイダンスを発表しました。本ガイダンスの規則は、ローカルファイルが果たすべき機能を損なうことなく、ローカルファイルのパートBにおいてIRP契約書を提出することに係るコンプライアンス費用を削減することを目的としています。

ローカルファイルのパートAに記載する取引(IRPとの取引)については、通常、IRP契約書の写しをローカルファイルのパートBにおいて提出する必要があります。ただし、除外リスト(Exclusions List)にある取引(価値の低い役務提供契約や普通株式の発行等)については、パートBにおいてIRP契約書の写しを提出する必要はありません。 

アイルランド

2017年2月15日、アイルランド財務相は、「法人税:公平性、責任、リーダーシップ(Corporate Tax: Fairness, Responsibility and Leadership)」についてのコンファレンスで行った演説の中で、アイルランドは今後もBEPS行動計画に基づき、BEPS報告書の提言を実施するために必要な行動を継続して行うと述べました。実際、アイルランドが行っている行動は以下のとおりです。

  • 国別報告書を導入
  • 租税情報交換に関する新たな国際的ベスト・プラクティスやスタンダードに全て署名
  • 他のEU諸国財務相と租税回避防止指令について合意
  • BEPS多国間協定の策定において積極的な役割を果たし、多国間協定への署名が可能になり次第、署名を行うと確約

財務相は、アイルランドが、税制の違いを利用した「ダブルアイリッシュ」と呼ばれるスキームの廃止を決定した事実にも言及しました。ただし、税制の違いは様々な国の間に存在するため、アイルランド独自でこうしたスキームを廃止することは不可能だとも述べています。また、アイルランドは高い透明性を維持していく方針であり、今後も様々な国との租税情報交換協定への署名を行っていくとのことです。

さらに財務相は、各国が一貫した行動をとることの重要性を強調しました。BEPS行動計画を適正かつ全面的に実施するには、各国が足並みを揃えて行動することが必要であると述べ、積極的なタックス・プランニングに対抗するためのEU各国の行動が一貫していないことに警告を発しました。

ロシア

2017年3月6日、ロシア財務省は、国別報告書に関するBEPS行動13に従い、多国籍企業に対する文書化要件をロシアで導入するための改正法案をパブリック ディスカッション用に発表しました。改正法案における多国籍企業の最終親会社及び代理親会社の定義づけは、BEPS行動13における定義に沿ったものとなっています。

前回の改正法案からの主な変更点としては、連結財務諸表の定義が修正されたことや、届出の提出期限が最終親会社の事業年度終了後3カ月以内から8カ月以内に変更されたことが挙げられます。マスターファイルについては、多国籍企業グループの最終親会社であるロシア居住法人だけではなく、多国籍グループの構成事業体であるロシア居住法人にも提出を義務付けるとしています。マスターファイルの内容も、前回の改正法案から大幅に変更されています。ローカルファイルについては、多国籍企業グループのクロスボーダー関連者間取引に係る追加的文書となるかどうかの疑問点が払拭されました。改正法案によれば、現行の移転価格文書作成義務の代わりに、ローカルファイルの提出が義務付けられるとのことです。改正法は署名が行われた日に施行されますが、多国籍企業は、2017年1月1日以降に開始する事業年度から改正法の適用を受けます。それ以前に成立した取引でも、その取引に係る収益と費用の両方又はいずれか一方の税務上の認識が2017年1月1日以降である場合は、新たな要件の適用対象となります。

詳細:Russia revises draft law on BEPS Action 13 CbCR implementation, dated 10 March 2017(英語)