BEPS update ~OECD、米国、欧州連合、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー及びオーストラリア~

BEPS update ~OECD、米国、欧州連合、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー及びオーストラリア~

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EY 税理士法人

2017年8月2日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2017年8月2日号

本BEPS updateでは、EYグローバルから発行されているタックス アラートから各国のBEPS最新情報を抜粋してお知らせします。なお、各国の詳細情報については、英語の原文を参照ください。

OECD

2017年6月22日、OECD、国連、IMF及び世界銀行グループが共同して進める「税に関する協働のプラットフォーム」は、「発展途上国が移転価格分析に必要な比較対象取引の不足に対処し鉱産物価格決定実務をより理解できるように」設計されたツールキットをリリースしました。ツールキットは、国内比較対象企業のデータ不足にどう対処するかという限られた検討範囲を超えており、多くの発展途上国が、入手可能な情報や行政能力に限りがある等の現実に直面していることを踏まえ、独立企業原則を適用した移転価格税制の広範囲にわたる実践的な導入を支援することを目的としています。

詳細:OECD, UN, IMF and World Bank issue toolkit for addressing difficulties in accessing comparable data for transfer pricing analysis,  dated 6 July(英語)

2017年7月10日、OECDは、多国籍企業と税務当局のための移転価格算定に関する指針(以下、「OECD移転価格ガイドライン」)の2017年版を英語とフランス語で公表しました。OECD移転価格ガイドラインの2017年版は、主にOECD / G20のBEPSプロジェクトによる変更の統合を反映していますが、OECD移転価格ガイドラインの統合版を作成するためにセーフハーバーに関する改定指針やその他整合性を図るための多数の変更を盛り込んでいます。

詳細:OECD、多国籍企業及び課税当局のための移転価格算定に関する指針を公表    (2017年7月27日)

米国

米国内国歳入庁(IRS)は、先日、ホームページ(irs.gov)に国別報告書専用のセクションを開設しました。ホームページでは、国別報告書の背景情報、FAQ(よくある質問)の一部、及びその他の役立つ情報源を提供しています。その中でも特に注目すべきは、国別報告書の交換に関する当局間合意をこれまでに米国と締結した国・地域のリストが掲載されていることです。国別報告書に関するニュースレターに登録するリンクも含まれています。IRSは、国別報告書に関する最新動向をニュースレターにより定期的に配信する予定です。また、IRSは先日、最終的なフォーム8975及びスケジュールA、並びにフォームに関する指示事項を公表しました。最終的なフォーム及び指示事項は、以前発表されたドラフト版と実質的に変わらない内容となっています。

詳細:New US IRS Country-by-Country Reporting site offers latest forms  and guidance, dated12  July 2017(英語)

欧州連合

2017年7月4日、欧州議会は、特定の事業及び支店による法人所得税情報の開示に関する会計指令を改正する欧州議会及び理事会の指令案(国別報告書の開示を義務付ける指令として知られています)について、経済・金融委員会と法務委員会が共同で提出した報告書を第一読会で承認しました。本件は、現在、欧州連合の理事会、議会及び委員会の間における「トライアローグ(三者協議)」を担当する委員会に差し戻され、同委員会が4カ月以内に議会に報告を行う予定です。共同報告書では、報告義務の対象範囲を、EU域内に事業もしくは支店を有し、年次連結売上高が7億5千万ユーロ以上のあらゆる多国籍企業グループに拡大するという欧州委員会の案を改正することを提案するとともに、営業上機密性の高い情報の場合の免除規定を設けています(その場合は、厳しい監視下に置かれます)。さらに、国別報告書の開示必要項目については、国別報告書に関するOECDのBEPS行動13における非公表国別報告書についての開示必要項目により近いものになっています。新たな改正条項では、欧州委員会は、新たな報告義務の影響評価を4年ごとに行うこと、と規定されています。

三者協議後の今後の手続きとして、改正指令案は、最終的に理事会によって採択される必要があります。現時点では、否定的なコメントをする加盟国も存在するため、理事会が改正案を容認するか否か、また、どの程度容認するかを予測するのは困難です。採択された場合、EU加盟国は、改正案の内容を国内法令に取り入れる必要があります。

詳細:European Parliament votes in favor of public Country-by-Country  reporting in first reading, dated  7 July 2017(英語)

フランス

2017年7月8日、フランスの官報において、1.国別報告書の提出義務を導入した国・地域、及び2.国別報告書の自動的交換に関する権限ある当局による多国間合意をフランスと締結した国・地域のリストが公示されました。最終親会社がリストに含まれている国の居住法人である多国籍企業グループに属するフランス構成事業体は、フランスにおけるローカルファイリングの対象とはなりません。そうではない場合、すなわち、最終親会社がリストに含まれている国の居住法人ではない多国籍企業グループに属するフランス構成事業体は、フランスにおいて国別報告書を提出する義務があります(多国籍企業グループにより国別報告書の提出者として指定された場合、又は、フランスもしくはリストに含まれている国に所在する別の構成事業体が国別報告書の提出者として指定されていることを証明できない場合)。

2016年1月1日以降に開始する課税年度について、リストに含まれている国は、全てのEU加盟国、オーストラリア、バミューダ、カナダ、チリ、中国、ガーンジー、インドネシア、ジャージー、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、南アフリカ、韓国です。2016年4月1日以降に開始する課税年度については、インドと日本がリストに含まれています。現在、米国はリストに含まれていませんが、年末までに含まれる可能性があります。

ドイツ

2017年7月4日、権利のライセンス付与に係る有害な租税慣行の防止に関する法案が、ドイツ連邦官報で公示されました。同法案では、関連者に対するロイヤリティ及び同様の支払いの損金算入を制限するとしています。損金算入が制限されるのは、このような支払いの受領国における優遇税制がOECD非準拠であり、かつ実効税率が25%未満の場合です。同規則の前提条件を満たす場合は、2017年12月31日より後に支払われる全てのライセンス料に適用されます。

オランダ

2017年6月7日、オランダは、(他の66の国・地域と共に)多数国間条約に署名しました。署名にあたり、オランダは、対象租税条約として指定を希望する租税条約のリストとともに、多数国間条約の採択状況の暫定の一覧を提出しました。また、強制的・拘束的仲裁制度の適用を選択した国は26カ国でしたが、オランダもそのうちの1カ国です。

詳細:The Netherlands signs Multilateral Convention to Implement Tax  Treaty Related Measures to Prevent BEPS, dated 10 July 2017(英語)

ベルギー

2017年7月6日、ベルギー議会は、OECDの国別報告書の自動的交換に関する権限ある当局による多国間合意を導入する法案を承認しました。ベルギーは、2016年1月27日に署名を行っています。多国間合意は、国別報告書の交換に関して、機密保持を規定しており、情報の利用については一定の制限を設けています。同法案は、国王による署名と官報での公示を経て、近日中に施行される見通しです。第1回目の国別報告書の交換は、2018年6月までに行われる予定です。

オーストラリア

 2017年7月4日、オーストラリア税務当局(ATO)は、国別報告制度の一環であるローカルファイルに関する指示事項を発表しました。その中で、ローカルファイルのパートAを所得税申告書及び国際取引明細「と同時に」提出する場合は、所得税申告書と共に提出する国際取引明細において同様の開示をする必要がなくなるという事務手続きの負担の軽減のため、「と同時に」の意味についての指針も示しました。

2017年6月26日、低額商品(1,000豪ドル未満)の輸入に対し、物品・サービス税(以下、「GST」)を課税する法律が制定されました。この法改正により、サプライヤーを介してオーストラリアに輸入され、オーストラリアの消費者が購入する低額商品は、概してGSTの課税対象となります。また、電子配信プラットフォームの運営業者や再配送業者は、電子配信プラットフォーム経由で行う販売に対し、GSTの課税義務を負う可能性があります。これらの変更は、2017年7月1日から適用される見通しでしたが、直前に改正が行われたため、2018年7月1日からの適用開始となります。

詳細:Australia to impose GST on digital products from 1 July 2017 and on low value imported goods from 1 July 2018, 29 June 2017(英語)