米国IRSがユニラテラル及びバイラテラル(相互協議を伴う)の事前確認に係る手数料引上げを発表

米国IRSがユニラテラル及びバイラテラル(相互協議を伴う)の事前確認に係る手数料引上げを発表

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EY 税理士法人

2018年2月28日

Japan tax alert 2018年2月28日号

エグゼクティブサマリー

米国内国歳入庁(IRS)は、事前確認(Advance Pricing Agreements: APA)の手数料を二段階(2018年6月30日と2018年12月31日)で引き上げる予定だと発表しました。

詳細解説

事前確認とは、納税者が、合意した移転価格算定方法に基づいて対象年度の確定申告を行う場合、対象取引について米国内国歳入法482条に基づく移転価格の調整を要求しないことにIRSが同意するというIRSと納税者の間の合意です。事前確認プロセスは、移転価格を巡る実際の紛争又は潜在的な紛争を所定の原則に基づいて協力的に解決することを目的とした、従来からの調査プロセスの代替として活用できる任意の制度です。

歳入手続通達2015-41に、事前確認・相互協議プログラム(Advance Pricing and Mutual Agreement program)部局への事前確認の申請手続きに関する指針が示されています。具体的には、歳入手続通達2015-41の付属書のセクション3.03に、事前確認の種類ごとに手数料がまとめられています。今般の発表では、IRSは次の通り同手数料を大幅に引き上げています:

  歳入手続通達
2015-41
2018年7月1日以降の事前確認申請 2019年1月1日以降の事前確認申請
新規事前確認 US$60,000 US$86,750 US$113,500
事前確認の更新 US$35,000 US$48,500 US$62,000
少額事案の事前確認 US$30,000 US$42,000 US$54,000
事前確認の改定 US$12,500 US$17,750 US$23,000

今後の影響

事前確認は、移転価格を巡る係争リスクをユニラテラル(一国)ベースで又はバイラテラル(二国間又は複数国間)ベースで管理するのに役立つ手段です。何よりも、事前確認により不確実性が解消されるうえ、相互協議を伴う事前確認においては、二重課税の可能性を排除することができます。事前確認にはまた、移転価格の算定を巡りペナルティを賦課されるリスクを解消する、毎年作成する移転価格文書の代用になるというメリットのほか、事前確認に関係する取引について、不確実な税務ポジション(Uncertain Tax Position)に係る引当金計上を不要にするという利点もあります。事前確認に係る手数料引上げの発表は納税者にとっては歓迎できるニュースではありませんが、以上のような主なメリットを踏まえると、今般の値上げの発表を判断材料にして、事前確認を申請するか否かを判断することにはならないでしょう。

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