BEPS update ~OECD、オランダ、コロンビア、ペルー、香港、マレーシア、ルクセンブルグ、ロシア~

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EY 税理士法人

2018年9月6日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年9月6日号

OECD

2018年7月26日、OECDは、BEPS行動14ミニマムスタンダードの実施状況に関して、相互審査の第六グループに属する国・地域(アルゼンチン、チリ、コロンビア、クロアチア、インド、ラトビア、リトアニア、南アフリカ)についての意見を募集すると発表しました。これらの国・地域における納税者の経験についての意見を電子アンケートにより募集します。回答期限は2018年8月24日です。

今回の意見募集は、BEPS行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)に基づき、OECDが2016年12月に開始した相互協議手続(MAP)における相互審査及びモニタリングの一環として行われます。

法人納税者は、この機会に意見を提出することが奨励されています。OECDは、2016年10月に発表した相互審査の評価スケジュールに従って、残りの国・地域グループの相互審査を引き続き進め、相互審査報告書を公表する予定です。

2018年7月22日、OECDは、OECD事務総長のG20財務大臣・中央銀行総裁向け報告書(以下、「同報告書」)をウェブサイトに掲載しました。同報告書は、2018年7月21~22日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議において提示され、二部構成となっています。

第一部では、特にOECD/G20のBEPS包摂的枠組みを通じた、OECDの継続的な税制上の課題における活動と成果並びに今後必要な展開について、最新状況が報告されています。第二部は、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラムによるG20向け進捗報告書となっています。また同報告書には、OECD/G20のBEPS包摂的枠組みの第2年次進捗報告書が附属書1として含まれています。

さらに、納税の確実性に関する最新情報:IMF/OECD のG20財務大臣・中央銀行総裁向け報告書(以下、「最新報告書」、OECDのウェブサイトに別途掲載)と題された報告書も附属書として含まれています。OECDと国際通貨基金(IMF)が共同で作成した当該報告書は、納税の確実性に関する2017年3月報告書の最新版であり、62の異なる国に本社を置き107の異なる国地域に地域統括本部を有する724社の企業、並びに25カ国の税務当局からの調査回答を分析しています。

G20はまた、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の終わりに、会議の成果を強調する 共同声明を発表しました。共同声明においてG20は、デジタル化が国際税制に及ぼす影響に対処するため、2020年までに合意に基づく解決策を追求する方針を維持し、2019年に最新状況を報告することを再確認しました。同声明は事実上、OECDが引き続きこの問題への対処を主導すべきであるというG20の要望を明確に示すものです。

オランダ

2018年7月13日、オランダの財務副大臣は、議会に対し、EU租税回避防止指令(ATAD)を導入する法案の提出を当初の予定の6月から延期する旨を通知しました。同法案は、夏季休会後、最終的に予算案発表日(2018年9月18日)に提出される予定です。

コロンビア

2018年6月21日、コロンビア国税庁は、移転価格に関する決議案を公表しました。決議案には、国別報告書の通知に関する指示事項も含まれています。そのため、構成事業体が特定の移転価格フォーム(フォーム120)の提出を義務付けられている場合、国別報告書の通知を同フォームにより提出することになります。同フォームにより提出しない場合、構成事業体は税務当局のウェブサイトから特定のフォームをダウンロードし、電子メールでpreciostransferencia@dian.gov.coに送信する必要があります。いずれの場合も、提出期限は9月中となります(期日は納税者番号により異なります)。

ペルー

2018年7月19日、ペルー共和国議会は、租税に関する法律を制定する権限を大統領に付与する法律第30823号を成立させました。本権限に基づき、大統領は短期間、議会の関与なしに新たな税法を制定することができます。ただし、特定の項目に限られています。本権限が有効なのは60日間(すなわち、2018年9月17日まで)ですが、大統領は、租税回避と脱税に対抗するためにOECD、金融活動作業部会及び国際的なベストプラクティスが示した国際基準や提言に、国内法を適応させることもできます。

香港

2018年7月13日、BEPS及び移転価格に関する法案が可決され、香港の法律として成立しました。同法により、移転価格に関する原則の成文化、移転価格文書化に対する3層構造アプローチの導入、並びに事前確認(APA)制度の提供が行われます。同法はまた、法的な紛争解決メカニズムの導入、現在の税額控除制度の強化、現行の優遇税制におけるリングフェンシング制度の廃止、特定の優遇税制に対するOECDの実質活動要件の導入等におけるBEPSミニマムスタンダードを実施するための規定も定めています。

発効日は各規則によって異なり、国別報告書については2018年1月1日以降に開始する会計年度、マスターファイル及びローカルファイルについては2018年4月1日以降に開始する会計年度、独立企業原則及びAPAについては2018年4月1日以降に開始する賦課年度、知的財産に関するみなし規定及び恒久的施設に対するOECD承認アプローチについては2019年4月1日以降に開始する賦課年度となっています。2018年7月13日より前に行われた取引又は発生した収益については経過措置があります。

同じく2018年7月13日、香港政府は、多国間税務行政執行共助条約(Multilateral Convention on Mutual Administrative Assistance in Tax Matters、以下「MCMAA」)を、租税に関する金融口座情報の自動交換、国別報告書の自動交換、並びに税務ルーリングに関する自発的な情報交換の基盤として利用できるようにする政令を官報にて公布しました。同政令は2018年10月10日に香港立法会に提出され、制定後に審議(negative vetting)という手順が踏まれます。MCMAAは2018年9月1日より遡及的に発効します。

マレーシア

2018年7月6日、マレーシアは、BEPS行動5ミニマムスタンダードに沿って、マルチメディア・スーパー・コリドー(Multimedia Super Corridor、以下「MSC」)・マレーシアの優遇措置を変更すると発表しました。現在、MSCマレーシア優遇措置制度では、情報、通信及びテクノロジー企業並びに高等教育機関に対し、さまざまな基準を満たした場合、5年間にわたって、法人税の免除(適格所得の70%もしくは100%)又は投資税額控除(100%控除)を認めています。法人税の免除は、当初の5年間からさらに5年延長することが可能です。新たな法令及び指針は2018年12月31日までに施行される見通しです。

その一方で、新制度への移行を容易にするため、以下が発表されました。(i) 2018年7月1日以降は、法人税免除期間の延長申請や新しいMSCマレーシア適格活動の追加申請を含め、MSCマレーシアの新規承認を取得することはできません。(ii) MSCマレーシア・ステータスをすでに取得し、税制優遇を受けている企業は、2021年6月30日まで現在のステータスを新法令の適用除外対象とするか、新制度に移行し新たな条件に従うかを選択できます。(iii) 現在のMSCマレーシア・ステータス取得企業に対する新規承認や法人税免除期間の延長が検討されるのは、新たな法令及び指針が発効してからになります。

ルクセンブルク

2018年7月10日、BEPS行動13に基づき、ルクセンブルクが国別報告書を自動的に交換する国・地域のリストを定めた法令が官報にて公布されました。同リストによれば、ルクセンブルクは、2016課税年度を対象とした国別報告書を50の国・地域と交換します。2017課税年度については、アルゼンチン、チリ、アイスランド、ウルグアイがリストに追加され、国別報告書の交換を行う国・地域の総数は54になります。 

ロシア

2018年6月25日、ロシア連邦税務庁の2018年5月30日付指令No. MMB-7-17/359がロシア連邦司法省に登録されました。同司令では、ロシアが国別報告書を自動的に交換する国及び地域のリストが定められています。リストによれば、ロシアは49の国と2つの地域と国別報告書を交換することになります。