BEPS update ~OECD、インド、オーストラリア、シンガポール、チリ、日本、ベルギー、ルクセンブルグ

BEPS update ~OECD、インド、オーストラリア、シンガポール、チリ、日本、ベルギー、ルクセンブルグ

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2018年9月27日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年9月27日号

OECD

2018年9月7日、OECDは、移転価格に関する国別プロフィール(Transfer Pricing Country Profiles、以下「TPCP」)の更新版を公表し、新たに7カ国の現行の移転価格法制及び慣行を掲載しました(コスタリカ、ギリシャ、韓国、パナマ、セーシェル、南アフリカ、トルコ)。さらに、シンガポールのプロフィールを更新しました。TPCPは、各国がアンケートに回答する方法で作成され、主要な移転価格上の問題に対処するための国内法制上の措置に重点が置かれています。具体的には、移転価格算定方法、独立企業原則、移転価格文書化、比較可能性分析、無形資産、グループ内役務提供、費用分担契約、紛争の回避及び解決のための税務執行上のアプローチ、セーフハーバー及びその他の実施措置が取り上げられています。TPCPはまた、各国の国内法令整備状況をOECD移転価格ガイドラインと比較し、各国がどの程度OECD移転価格ガイドラインを取り入れているかを示しています。今後さらに5カ国のTPCPが追加される予定です(アルゼンチン、チリ、フィンランド、アイスランド、イタリア)。

2018年8月30日、OECDは、BEPS行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)ミニマムスタンダードの実施状況に関して、第四グループ(オーストラリア、アイルランド、イスラエル、日本、マルタ、メキシコ、ニュージーランド、ポルトガル)の相互審査(ピアレビュー)報告書を公表しました。オーストラリア、日本、マルタ及びニュージーランドは、OECDに対し、行動14のベストプラクティスを採用したことに関するフィードバックも提供するよう要請していたため、OECDは、当該4カ国のベストプラクティス報告書も併せて発表しました。

全体として、報告書は、第四グループに属する国・地域の大半が行動14ミニマムスタンダードの要素のほぼすべて又はほとんどを満たしていると結論づけています。オーストラリアは行動14ミニマムスタンダードの要素の一部を満たしており、メキシコは当該要素の半分を満たしているとしています。相互審査プロセスの次の段階(ステージ2)では、ステージ1の相互審査報告書において指摘された問題点に対処するための各国・地域の取組みがモニタリングされます。

インド

2018年3月29日、2018年財政法が大統領の承認を得て成立しました。2018年財政法では、インドでの国別報告書の提出期限に関する現行法が改正されています(2017年4月1日より遡及的に発効します)。当該改正法に基づき、インドの居住者である全ての親会社又は代理報告会社(alternate reporting entity、以下「ARE」)による国別報告書の提出期限は、報告事業年度終了後12カ月以内となります。その結果、インドの居住者である構成会社による国別報告書の通知の提出期限も変更されます。したがって、親会社がインドの居住者ではない多国籍企業グループに属し、インドの居住者である全ての構成会社は、自らが多国籍企業グループのAREであるか否か、又は多国籍企業グループの親会社もしくはARE(存在する場合)の詳細並びにこれらの会社が居住者である国もしくは地域を、親会社による国別報告書の提出期限の少なくとも2カ月前までに、所定の税務当局に通知する必要があります。例えば、国別報告書の提出期限が3月31日である場合は、1月末までにフォーム3CEACにより通知を行うこととされています。一方、他の月が国別報告書の提出期限と見なされる場合は、国別報告書の提出期限と見なされる月の末日の2カ月前までに通知を行うとされています。

オーストラリア

2018年8月24日、オーストラリアにおけるハイブリッドミスマッチのインテグリティ措置法が女王の裁可を得て成立しました。ハイブリッドミスマッチルールは、2019年1月1日以後に開始する課税年度から適用されます。ただし、輸入ミスマッチルール(輸入する支払が仕組まれた取決めに基づいて行われる場合以外)は、2020年1月1日以後に開始する課税年度からの適用となります(EUにおけるハイブリッドミスマッチルールの導入に合わせるため)。

オーストラリア税務当局(ATO)は様々なガイダンスを発表する予定です。

同じく8月24日、「税源浸食及び利益移転(BEPS)を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(以下、「MLI」)が女王の裁可を得て、オーストラリアはMLIを正式に批准できるようになりました。オーストラリアでMLIが発効するのは、OECDに対してMLIの批准書を寄託した日から3カ月経過した翌月1日となります。2018年9月末までに批准されれば、オーストラリアでは2019年1月1日からMLIが発効することになります。

シンガポール

2018年8月24日、シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、シンガポール多国籍企業グループの最終親会社を対象とした国別報告書の自動的交換を行うための有効な二国間自動的情報交換関係の更新リストを公表しました。IRASのウェブサイトに掲載された更新リストには、現在、55の国・地域が挙げられています。国・地域の全リスト及び有効な課税期間は下記の通りです。今後、さらに自動的情報交換関係が結ばれる可能性があるため、同リストは今後も注視していく必要があります。

国・地域のリスト

2016年度より有効な自動的情報交換関係: オーストラリア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、ケイマン諸島、コロンビア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ガーンジー、インド、アイルランド、イタリア、日本、ジャージー、韓国、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ルーマニア、スロバキア共和国、 スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国

2017年度より有効な自動的情報交換関係: アルゼンチン、オーストリア、カナダ、チリ、コスタリカ、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、エストニア、ハンガリー、アイスランド、インドネシア、マン島、ラトビア、リヒテンシュタイン、マレーシア、ポルトガル、ロシア、ウルグアイ

2018年度より有効な自動的情報交換関係: モーリシャス、スイス

チリ

2018年8月23日、チリ行政府は税制改革案を発表しました。税制改革案では、複数の税制が提案されており、その中には次のような税制が含まれています。(i)非居住者がチリの個人に提供するデジタルサービスに対し10%の税率で課税する(サーバーが所在する場所は無関係)。また、電子決済管理者(クレジットカード会社等)を源泉徴収義務者として定める。(ii)BEPS行動7により修正された代理人PEの定義を取り入れたPEの定義を導入する。(iii)適法性及び選択権の自由な行使の原則に基づき、 一般的租税回避防止規定(GAAR)を調整し、法的確実性を高める。また、具体的租税回避防止規定(SAAR)との法律上の区分を強化する。チリ行政府は年内に当該法案を閣議決定する予定ですが、いつ議会によって承認されるかは不明です。

日本

2018年8月、国税庁は、新たな外国子会社合算税制に関するガイダンスをQ&A形式で更新しました。当初のガイダンスは2018年1月に公表されています。更新されたガイダンスでは、ペーパー・カンパニーでない外国関係会社に求める書類や、適格PMI(post merger integration)における株式譲渡益の免除特例等について、追加の説明を行っています。

新たな外国子会社合算税制は、外国関係会社の2018年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

ベルギー

2018年7月26日、ベルギー税務当局は、ベルギーの知的財産(IP)税制、すなわちイノベーション控除の適用に関するよくある質問(FAQ)のリストを公表しました。イノベーション控除は、OECDのBEPS行動5の要件を踏まえて、2016年7月1日に施行されました。この制度では、適格IP 純所得の85%が控除され、その結果、実効税率が4.4%(2018-2019年)及び3.8%(2020年以降)になります。FAQは、優遇措置の一般的な適用(適用範囲)を明確化するとともに、一連の具体的な質問を取り上げることにより、納税者がイノベーション控除を適用する上で有用なガイダンスと実践的な知見を提供しています。

ルクセンブルク

2018年7月3日、ルクセンブルク政府はMLIを批准する法案を議会に提出しました。同法案には、MLIの署名時に提出した暫定的なMLIの採択状況が含まれていますが、一点修正がなされています。同法案では、仲裁に関する留保事項が一つ追加され、スイスとの租税条約が当該規定の対象外とされました。法案が採択されれば、ルクセンブルクがMLIの批准書、受諾書又は承認書をOECDに寄託することにより、ルクセンブルクのMLIの採択状況が確定されることになります。