BEPS update ~OECD、英国、オーストラリア、シンガポール

BEPS update ~OECD、英国、オーストラリア、シンガポール

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2018年6月22日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年6月22日号

OECD

2018年5月23日、OECDは、BEPS包摂的枠組みの参加国による行動13(移転価格の文書化及び国別報告書)のミニマムスタンダードのコンプライアンスに関し、国内の法的及び行政的枠組みに焦点を当てた第1回目の年次相互審査報告書を発表しました。同報告書では、情報交換の枠組み並びに国別報告書の守秘義務及び適切な使用に関する一定の項目についてもコメントしています。

英国

2018年5月23日、英国は、2018年二重課税排除(税源浸食と利益移転)指令(Double Taxation Relief (Base Erosion and Profit Shifting) Order 2018)により、多数国間条約(以下、「MLI」)を批准しました。英国でMLIが発効するには、英国が批准の証書をOECDに寄託し、英国の最終的なMLIの採択状況を確定させる必要があります。MLIの規定は、MLIが両国において発効した日のいずれか遅い日を基準として、両国が対象租税条約と指定した租税条約に対し効力を生じます。英国は、最終的な採択状況に関する政府の現在の草案に基づき、留保事項と通告事項第2条における対象租税条約のリストに121の条約を含めると思われます。 

オーストラリア

2018年5月24日、オーストラリアは、2018年財政法改正(税の公正性及びその他の措置第2号)法案(Treasury Laws Amendment (Tax Integrity and Other Measures No.2) Bill 2018)(以下、「同法案」)を発表しました。同法案には、2017年11月及び2018年3月に公表された法案にすでに含まれていたハイブリッド・ミスマッチ防止措置が含まれています。2018年3月の法案と比べて実質的な変更はなく、全般的な変更点は法的仕組みの微調整にとどまっています。しかし、ハイブリッド・ミスマッチ・ルールに含まれているインテグリティ措置(integrity measures)に重要な変更がありました。変更点の概要は以下の通りです。

インテグリティ措置の目的は、MNEグループが、従来のハイブリッド商品や事業体を通じてオーストラリアに直接投資する代わりに、オーストラリアへの投資に事実上税金を支払わない導管企業を介在させることにより、ハイブリッド・ミスマッチ・ルールを回避しようとするアレンジメントを実行できないようにすることと記載されています。概して、インテグリティ措置が適用されるのは、最終親会社の国・地域とオーストラリアの間に介在する国・地域に所在する法人に対し、オーストラリアが損金算入可能な利子の支払(又は同等の支払)を行う場合です。

2018年3月の法案では、当該ルールを適用するには、介在国・地域に所在する法人が10%以下の税率の対象であることが要件でした。同法案では、かかるテストが若干変更されており、支払が1カ国以上の外国において外国所得税の対象となり、支払にかかる外国税の最高税率が10%以下であることが要件となっています。従来の法律では、スキームがオーストラリアにおける損金算入と10%以下の外国税率を可能にするように設計されていると合理的に結論付けられないとして、適用除外となる場合がありました。同法案では、「設計テスト(design test)」が「主要目的(principal purpose)」テストに置き換えられました。その結果、インテグリティルールが適用される条件は、オーストラリアにおいて損金算入すること及び支払に課される外国税の税率を10%以下にすることを唯一の主要目的もしくは複数の主要目的の1つとして、スキームが実行された場合になります。主要目的テストの適用を検討する上で、同法案は特に、介在する外国法人がオーストラリアに提供する資金の源泉、並びに介在する外国法人が銀行、金融、その他同様の事業の遂行において実質的な商業活動に従事しているか否かに配慮することを求めています。

ハイブリッド・ミスマッチ・ルールは、2019年1月1日以後に開始する課税年度から適用されます。2018年3月の法案と同じく、既存のアレンジメントに対する経過措置はありません。一方、ハイブリッド・ミスマッチとハイブリッド・ミスマッチ・ルールを有する国との間に1社以上の法人を介在させることにより、ハイブリッド・ミスマッチ・ルールの適用を回避しようとするアレンジメントの防止を目的としたミスマッチの輸入に関する規定は、適用開始が1年遅れ、2020年1月1日以後に開始する課税年度が評価対象となります。
同法は2018年6月下旬に制定される見通しです。

オーストラリア税務当局は、ハイブリッド・ミスマッチ・ルール及びアレンジメントの再構築に関連して、所得税法Part IVA(オーストラリアの一般的租税回避防止規定)の適用に関するガイダンスを公表することを非公式に示唆しています。当該ガイダンスは、2018年6月に公表される見通しです。

シンガポール

昨年2017年2月20日、IP開発インセンティブ(IDI)を新たに導入することが発表されました。同時に、2018年7月1日以降に承認される新規のインセンティブの付与と引き換えに、IP所得を既存のパイオニア・サービス・インセンティブ(PC-S)及び開発・拡張インセンティブ(DEI)の範囲から除外すること(IP所得除外規定)が発表されました。既存のインセンティブ受領者においては、かかる所得は、2021年6月30日まで引き続き既存のインセンティブの対象となります。

2018年5月4日、企業、税務アドバイザー、並びにOECDとの広範な協議を経て、シンガポールの既存のインセンティブ制度からIP所得を除外する法令が公表されました。IDI自体に関する法令はまだ公表されていませんが、企業にとっては、2018年7月1日から適用される上記のIP所得除外規定から生じる影響の評価を開始し、関係当局に説明を求めることが必要かどうか判断することが重要です。

また、BEPS包摂的枠組みは2018年5月9日に、シンガポールのIDIをレビューした結果、有害ではないことを確認したと発表しました。ただし、まだ公表されていない新しい法令が最終的に採択されることを条件としています。