BEPS update ~英国、オーストラリア、米国、ペルー~

BEPS update ~英国、オーストラリア、米国、ペルー~

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

Japan tax alert 2018年8月9日号

英国

2018年7月6日、英国は、2019年度財政法案に盛り込む予定の条項案を公表しました。他の条項案は、秋に予定されている財政法案(第3号)の発表前に、あるいは同法案の一部として、別途発表される可能性があります。条項案は2018年8月31日までコンサルテーションに付されます。多くの技術的注釈、コンサルテーションへの回答、その他の文書も公表されました。文書の中で取り上げられている主要分野には、英国がEU租税回避防止指令に基づく義務を履行するため、外国子会社合算税制、出国税、ハイブリッド規定の軽微な改正が含まれています。また、法律が確実に目的通りに運用されるように、法人の利子損金算入制限及び欠損金控除の制限に関するルールも若干変更されています。 

オーストラリア

2018年6月21日、オーストラリア税務当局(ATO)は、ハイブリッド・ミスマッチ・ルール及びアレンジメントの再構築における所得税法Part IVA(オーストラリアの一般的租税回避防止規定)の適用に関するガイダンスを示した実務コンプライアンス指針(PCG)2018/D4草案を発表しました。

PCG草案の目的は、納税者の意図がアレンジメントのハイブリッド性をなくす場合に、コンプライアンスリスクの管理において納税者をサポートすることにあります。具体的には、ATOが「低リスク」とみなし、1936年所得税法(ITAA 1936)Part IVAの適用対象としない再構築の概要を示しています。  

全体的に見て、PCG 2018/D4は、「バニラ(単純な)」再構築(例えば、単にハイブリッド商品を同一の相手方への通常のローンに置き換えるなど)はATOの注目の対象とはならないはずであるという既存の前提に対する裏付けを提供しているに過ぎません。しかし、再構築において複雑な要素が増加した納税者にとっては、PCG草案は、限定的ではあっても実用的な評価基準を示しています。そのため、再構築の実質的な分析を行い、所得税法Part IVAの適用対象となるリスクを適切に評価する必要性が高くなります。

PCG 2018/D4は、ハイブリッド・ミスマッチ・ルールの制定日に発効し、制定日以前及び以後に行われたアレンジメントの再構築に適用されます。PCG草案の適用や最終的な指針については、今後3年間にわたって引き続き検討される予定です。PCG草案に関するコメントの提出期限は2018年7月20日です。

米国

2018年6月28日、内国歳入庁(IRS)は、国別報告書の自動的交換のための当局間合意(Competent Authority Agreement、以下「CAA」)を米国と締結した国のリストにインドネシアを追加しました。IRSは、米国とすでにCAAを締結した国・地域、ならびにCAAの締結に向けて交渉中の国・地域の最新のリストをホームページに掲載しています。IRSは現在、他の7カ国とCAAの締結に向けて交渉を進めており、締結に至った際にはホームページを更新すると思われます。

またIRSは、ドイツと米国との間で署名された国別報告書の交換に関する共同声明(2018)を2018年7月10日に公表しました。共同声明では、両国が国別報告書の自動的交換を可能にするCAAの締結に向けて交渉を行っていると説明されています。しかし、税務当局は、交渉の結果を待つことなく、多国籍企業グループの2016年1月1日以後に開始した事業年度に関する国別報告書の交換を望んでいます。税務当局は、2016年1月1日以後2017年1月1日より前に開始した事業年度を対象とした多国籍企業グループの国別報告書を自発的に交換する方針です。

ペルー

2018年6月29日、ペルーの税務監督庁(SUNAT)は、納税者に対し、年に1度マスターファイル及び国別報告書を電子的に提出することを義務付けるルーリング第163-2018号を発出しました。2017年度を対象とした最初のマスターファイル及び国別報告書の提出期限は2018年11月中です。2018年度以降は、提出期限が翌年の10月までとなります。各納税者の具体的な提出期日は、納税者番号に基づく当局のスケジュールにより異なります。同ルーリングは、OECDによるBEPSプロジェクト行動13の3層構造アプローチに概ね沿ったものです。