米国、対中追加関税の第4弾の詳細を発表 第2弾、第3弾の対象品目の一部に適用除外を承認

米国、対中追加関税の第4弾の詳細を発表 第2弾、第3弾の対象品目の一部に適用除外を承認


Japan tax alert 2019年8月22日号

エグゼクティブサマリー

米国通商代表部(USTR)は2019年8月13日、2,650億米ドル相当分(リスト4、または第4弾※1)の中国原産品に対して10%の追加関税を課すと正式に発表しました※2。この発表によると、リスト第4弾の関税は品目区分に基づき、2回に分けて発動するとされています。

また、健康、安全および国家安全保障などの要因に基づき、特定の品目がリスト4の対象から除外されたことも明らかになりました。リスト4Aに含まれる約1,550億米ドル相当分の品目は、2019年9月1日から追加関税の対象となり、リスト4Bに含まれる約1,100億米ドル相当分の品目は、2019年12月15日から対象となる見込みです。

現時点では、中国原産品の輸入のうち年間2,500億米ドル分に対して第301条に基づく追加関税25%が賦課されており、適用対象品目は3つの個別リストで特定されています。一定の基準を満たした輸入者には、適用除外申請手続きが設けられています。USTRは先頃、リスト2および3の適用除外品目を発表しました。USTRでは追加関税の適用除外申請の審査が続いており、今回初めてリスト2および3の双方について適用除外を発表しましたす。USTRの発表は次の通りです。

  • USTRは2019年7月31日に官報(以下、「FRN」)※3を発出し、25%の追加関税の対象であるリスト2※4の279品目(中国からの年間輸入額は160億米ドルに相当)のうち、69品目を適用除外とすることを発表
  • 2019年8月2日、USTRは25%の追加関税の対象であるリスト3※5の5,745品目(中国からの年間輸入額は2,000億米ドルに相当)のうち、10品目を適用除外とすることを発表※6

※1 https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/84_FR_22564.pdf

※2 https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2019/august/ustr-announces-next-steps-proposed

※3 https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/16-Billion-Exclusions-Granted.pdf

※4 https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/2018-17709.pdf

※5 https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/84_FR_20459.pdf

※6 https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/presidential-memorandum-actions-united-states-related-section-301-investigation/

詳細

リスト4に対する追加関税10%を発表

USTR は2019年5月13日、1974年通商法第301条に基づき、最大25%の追加関税を適用することになる3,000億米ドル相当の中国原産品の品目リスト案を発表しました。これにより3,805のHSコードが網羅されますUSTRはこの発表においてパブリックコメントを求め、後日聴講会を開催し、企業が追加関税により被るであろう影響や懸念について聴取しました。尚、本聴聞会の結果は、2019年8月13日に発表されたリスト4Aとリスト4Bに反映されました。

これにより、米国関税率表(Harmonized Tariff Schedule of the US、以下「HTSUS」)に記載されている多くのHSコードが2019年9月1日から10%の追加関税の対象となるリスト4Aに追加されました。また、USTRは、リスト4Bに含まれる品目への追加関税の実施を2019年12月15日まで先延ばしたのは、パブリックコメントや6月に開催された聴聞会の結果を考慮したためと述べています。

リスト4Aとリスト4Bは、HTSUSのほぼすべての類(上2桁)を網羅しています。リスト4(4Aおよび4Bを含む)には、これまで対象外とされていた、衣料品や靴、特定の玩具、スマートフォン、ビデオゲーム端末やノートパソコンなどの家電製品にまで及ぶ消費財が対象となります。このうち、特定の品目は12月に追加関税が賦課されるリスト4Bに掲載されたことで、輸入者が年末商戦前に商品の受注や入荷ができるよう、時間的猶予が与えられました。

また、当初のリスト4に掲載されていたいくつかのHTSUSコードが、今回新たに発表されたリスト4Aおよびリスト4Bからは除外されていることから、USTRがパブリックコメントや聴聞会を考慮し新たなリストを決定したことが伺えます。当初のリスト4から除かれた主な品目は以下の通りです。

  • 特定の魚のフィレおよび魚肉(0304.71および0304.81)
  • 天然の硫酸バリウム(2511.10)
  • 酸化アルミニウム(2818.20)
  • クレーン部品(8426.11および8426.12)

さらに、当初のリスト4ではHS4901.99.00(8桁レベル)に含まれる品目に追加関税10%を課すとしていたのに対し、新たに発行されたリスト4Aおよび4Bでは、対象となる細分類(10桁レベル)のHSコードが明瞭に記載されており、これにより聖書や祈祷書を含む宗教書の「4901.99.0040」は除外されています。

また、USTRは12月までの追加関税先延ばしの対象となる品目を決定する上で、2018年の輸入データを分析し、当該データ上で75%以上が中国産であった品目は2019年12月15日から追加関税の対象となるリスト4Bに、75%未満が中国産であった品目は2019年9月1日から追加関税の対象となるリスト4Aに割り振りました。

これにより、米国は引き続き関税率表の特定の類や重要品目(医薬品、特定医薬品原料、特定医療機器、レアアース、重要な鉱物など)をリスト4から除外しています。リスト3上のガイダンスおいても、これらの品目は追加関税の適用除外対象とされているため、当該措置はそれにならったものであると考えられます。また、USTRは、以前認められた除外品目について、今回の新たな措置の影響を受けないことを約束しています。

2019年5月16日付、EY Japan tax alertの米国、第4弾となる中国原産品に対する追加関税の検討開始、貿易摩擦が続く見込みで言及している通り、リスト4の品目に対する課税は、当初7月に発動する見込みでしたが、6月の20カ国・地域首脳会議(G20)でトランプ大統領と中国の習近平国家主席が会談したことを受け、トランプ大統領は米中間の協議が進展しているとして追加関税の発動を延期しました。その後、7月に上海における交渉を経た上で、トランプ大統領は9月1日から適用除外対象となりうる品目については触れずに、リスト4への10%の追加関税を実施することを発表しました。トランプ大統領は、追加関税の発動に踏み切る決定を下した理由として、中国が米国産の農産品購入などを交渉時に約束したにもかかわらず、実行していないことを挙げています。また、USTRは2019年8月13日に、追加関税対象となる品目の詳細や関連情報、実施日等を公表し、今後発布される官報では、さらなる詳細やリスト4に対する適用除外要請に関するガイダンスを掲載するとしています。

リスト4(リスト4Aおよび4Bを含む)の適用除外措置は、現段階では正式に発表されてはいないものの、リスト3と類似したものになると予想されています。下記はウェブポータルによる、リスト3の適用除外申請の詳細です。

  • 申請者は製品の詳細情報(10桁のHTSUSコード、用途や使用方法、当該製品と申請者の関係、年間の輸入量および価格などを含む)を提供しなければならない
  • 申請は各製品につき別々に行わなければならない
  • 当該製品は中国以外から調達が可能か
  • 申請者は過去に他国から当該製品の調達を試みたことがあるか
  • 申請者に対し、追加関税の実施がこれまでに、もしくはこれから経済的な損害をもたらすか
  • 当該製品が、中国製造2025などの産業政策に戦略的に重要、もしくは関係するものか

リスト2と3に対する除外措置

トランプ大統領は2018年3月22日、大統領令を施行し、米国技術の不公正かつ不当な取得に係る中国の措置、政策、慣行への対抗として、あらゆる措置を講じるよう米政権に指示しました6。その後、USTRがリスト1、2、3の対象品目に追加関税25%を賦課することを提案し、大統領がこれを命じました。

USTRが発布した2019年7月31日付官報および2019年8月2日付の発表により、除外手続きに係る通知に規定された基準に基づき、適用除外品目が決定されていることが確認できます。

リスト2に対する適用除外措置は、官報の附属書に記載された品名と一致するもので、米国東部標準時(以下、「EST」)2018年8月23日午前12時1分以降に消費するために輸入、または倉庫より搬出された製品に適用されます。

また、同官報で、新たに適用除外が認められた品目の輸入申告時に使用する10桁のHTSUSコード「9903.88.12」が追加されました。最新の適用除外措置は、特定の記述に一致する69品目に適用されます。除外品目のリストは官報に掲載されていますが、一例として以下の品目が含まれ、全品目されています。

  • プラスチック製フィルムおよびシート(3919.90.5060)
  • 気体または液体を送り込む機械部品(8424.89.9000)
  • 特定の電動機(8501.10.6020)
  • スピードセンサー(8543.70.4500)
  • 音響部品(8543.70.9960)
  • 特定のバイク(8711.10.0000)
  • ガス用計器(9028.10.0000)

リスト3に対する適用除外措置は、官報の附属書に記載された品名と一致するもので、2018年9月24日EST午前12時1分以降に消費するために輸入、または倉庫より搬出された製品のいずれにも適用されます。

同官報では、新たに適用除外が認められた品目の輸入申告時に使用する10桁の新しいHTSUS番号「9903.88.13」が追加されました。最新の適用除外措置は、特定の記述に一致する10品目に適用されます。除外品目には以下が含まれます。

  • ウェットティッシュの運搬用、包装用または配布用に成形または製造されたプラスチック製容器(3923.10.9000)
  • 射出成形で製造され、ウェットティッシュの分配用に使用されるポリプロピレン樹脂製キャップまたは蓋(3923.50.0000)
  • 特定のカヤック用ダブルパドル(3926.90.3000)
  • 600デシテックス以下のポリエステル製強力糸(5402.20.3010)
  • 特定の不織布(5603.92.0090)
  • スチール製のペット用ケージ(7323.99.9080)
  • ショッピングカート(8716.80.5090)
  • トレーラーのサイドスカート留め具(8716.90.5060)
  • カヤック、カヌーを除く特定の膨張式ボート(8903.10.0060)
  • 特定の膨張式カヤックおよびカヌー(8903.10.0060)

USTRはこの発表以前に、リスト2に関しては適用除外申請2,920件のうち50.82%に当たる1,484件、リスト1に関しては申請10,822件のうち62.48%に当たる6,762件を却下しています。2019年6月26日付、EY Global Tax Alertの USTR announces formal submission process for List 3; Mexico formally ratifies USMCA and India formally retaliates against US で説明している通り、USTRはリスト3の適用除外手続きを発表しており、2019年9月30日に申請が締め切られます。リスト4に関しては、適用除外手続きはまだ発表されていません。

適用除外は輸入日に遡って適用されるため、新たに除外された品目については、納付済み追加関税の還付申請をすることできます。リスト2の適用除外品目に関する追加関税還付申請手続きについては、米国税関国境警備局(Customs and Border Protection:CBP)より、Cargo Systems Messaging Service上に掲載されています※7。輸入者が還付を申請する場合、対象納税分の事後修正(post- summary correction:PSC)期間内(つまり、関税清算前)に事後修正を行わなければなりません。対象納税分がすでに清算された場合、かかる清算に不服を申し立てることができます。

※7 CSMS # - GUIDANCE: Seventh Round of Products Excluded from Section 301 Duties (Tranche 2)

企業に求められる対策

リスト4Aおよびリスト4Bの発動により、米国に輸入される中国製品のほぼすべてがすぐに追加関税の対象となります。中国に輸入される米国製品への追加関税を合わせて考慮すると、米中貿易に従事する企業は引き続き、追加関税の潜在的な影響を把握し、軽減策を検討することが求められます。関税制度が変われば、企業はその影響を精査することが必要になるため、通商交渉や政治的な動きを注視することが重要です。何らかの合意が形成されるとすれば、そこには特定の条件が含まれる可能性があり、それによって、先行きの見通しや、恐らくは適用期間にも影響が出かねないため、発表された段階で緊密に分析することが必要になります。

企業が早急に検討すべき対策は、以下の通りです。

  • リスト4Aおよび4Bを確認し、発表された追加関税がどの特定品目を対象にしているか、またそれらに対してどのような影響を及ぼすか把握する。これには、関税分類の再確認や、関税軽減策を図るためにサプライチェーンまたは製造工程の調整などが含まれる
  • サプライヤーや顧客との契約を再確認し、関税が引き上げられた場合に、誰がその関税を負担することになるか把握する。また、交渉の余地があるかどうかを確認する
  • エンドツーエンドのサプライチェーンの全体像をマッピングして、影響を受ける製品の範囲、潜在的コスト、代替的な調達先をすべて把握し、タリフ・エンジニアリングなどの影響緩和策を検討する
  • 保税倉庫、外国貿易地域(FTZ)、ドローバック制度、HTSUS第98類および中国の関税法令上同様の制度など、301条に基づく追加関税の繰延、節減または還付のため戦略を策定する
  • 関税評価額プランニングや米国のファーストセール制度の活用など、対中追加関税の対象となる輸入品の関税評価額を小さくする戦略を検討する

リスト4に記載されている品目を中国から輸入している企業は、USTRが発表する適用除外手続きに関する情報を注視し、関与していくことが必要です。また、追加関税発動後に適用除外対象となる品目が出てくる可能性を考慮し、その際に関税事後修正(PSC)手続きにより納付済み追加関税の還付を受けられるよう、現在リスト4の対象となっている製品に関する必要書類の準備を進めておくことも重要です。