米国、385条財務省規則のFunding規定緩和

米国、385条財務省規則のFunding規定緩和

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EY 税理士法人

2019年11月7日

Japan tax alert 2019年11月7日号

米国財務省は2019年10月31日、385条財務省最終規則(「最終規則」)の「Funding規定」に緩和措置を講じる旨を「新規則策定にかかわる事前通知(Advance notice of proposed rulemaking)」(「Notice」)という形で公表しました。

最終規則

内国歳入法第385条は、関連者間の「借入」をどのような条件下に米国税務上「借入」と認めるか、または「Equity(資本)」とみなすか(「Debt/Equity Classification」)という判断基準を策定する権限を議会から財務省に移譲する法律です。この権限に基づき、オバマ政権末期となる2016年10月に財務省が公表した最終規則は、肝心のDebt/Equity Classificationにかかわる判断基準には触れず、厳しい「文書化要件」と複雑な「Funding規定」を柱として構成されていました。結果として、Debt/Equity Classificationの判断そのものは、最終規則公表後も従来からの判例ベースの基準が適用されています。

Funding規定

Funding規定は、「分配、グループ内株式取得、グループ内組織再編に基づく資産取得等、特定の資本取引(「特定資本取引」)が直接もしくは間接的に関連者間の借入を原資として行われているとみなされる場合、当該借入を米国税務上はEquityとみなす」という規定です。関連者間借入を原資とする特定資本取引は、米国グループの資産を増額させることなく負債を増額させる(Equityを減額させる)という共通の性格を有しており、使用法によっては海外から米国への負債プッシュダウンによる支払利息の増額、すなわちBase Erosion(税源浸食)を可能とする取引です。

最終規則では、関連者間借入が行われた時点の前後3年、足掛け6年という期間内に実行される特定資本取引は、納税者の意図にかかわらず、関連者間借入を原資としているものとして、「反証不能なみなし事実認定」がなされます。さらに、最終規則には複数の適用対象除外取引が規定されているため、関連者間借入の前後3年間、計6年という長期間に亘り特定資本取引の有無を確認し、さらに例外規定の適用可否をモニターし続ける必要が生じ、納税者の実務的負荷が非常に高い規定となっていました。

トランプ政権による規制緩和令

トランプ政権発足後、2017年4月の大統領令に基づき、新政権下の財務省は、最終規則を納税者に過度の負担を強いる有害規則のひとつと認定し、その後、最終規則の文書化要件は実質撤廃されており、今回のNoticeと別途同時に公表されている最終規則で正式に撤廃されています。この結果、最終規則の文書化対象項目拡大規定、通常の借入以外の未払金等に関する文書化規定、同時文書化義務が履行されていない場合にその事実のみをもって借入を自動的にEquityとみなす規定等は撤廃されています。ただし、関連者間の借入に係わる文書化が一切不要になった訳ではなく、判例ベースに基づく従来からの文書化は引き続き必要となります。

一方、Funding規定はそのまま存続していましたが、今回のNoticeによれば、財務省は、対象取引を限定し要件を簡素化した「新Funding規定」を新たな規則草案として提案するとしています。

新Funding規定

2017年12月に成立した税制改正で多くのBase Erosion対策が講じられたことから、Funding規定の全面撤廃を期待する声もありましたが、財務省は負債プッシュダウンによるBase Erosion懸念が完全に払拭された訳ではないという見方をしており、大幅に緩和した形でFunding規定を当面存続させる意向のようです。

新Funding規定では、6年間のみなし事実認定規定は撤廃され、関連者間借入が特定資本取引の資金源とみなされるか否かは個々の取引の事実関係に基づいて判断するとしています。例えば、関連者間借入と特定資本取引が同一のプラン下で実行されているようなケースでは、当該借入が特定資本取引の原資とみなされ借入はEquityと取り扱われることになります。新Funding規定では適用対象が大幅に限定されることから、最終規則の例外規定のほとんどは不要になると想定されています。

適用開始タイミング

新Funding規定は、今後公表される草案が最終規則として公告された日以降に開始する課税年度から適用される予定です。