EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
税理士 左近司 涼子
1. 新規上場市場の概況
2022年1月~9月の国内株式市場は、年明け日経平均株価終値29,301円でスタートし、その後米国株式市場の推移に足並みをそろえる形で徐々に下落を続け3月上旬には一時24,000円台となるものの、その後は25,000円台から28,000円台の間を推移し、9月後半より下降傾向となり9月最終日終値は25,937円となりました。また、4月4日、東京証券取引所ではでプライム市場、スタンダード市場、グロース市場、名古屋証券取引所ではプレミア市場、メイン市場、ネクスト市場がそれぞれ始動しました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、67社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)となりました。前年同期(2021年1月~9月)と比較した場合22社減と大幅に減少しております。市場別に見ると、全体の59.7%にあたる40社がマザーズもしくはグロースに上場し、新興市場合計で全体の86.6%を占めています(表1)。
表1 最近5年間(1月~9月)の市場別新規上場企業数
2. 新規上場企業データの分析
業種別では、サービス業24社(昨年同期22社)、情報・通信業21社(昨年同期32社)となっており、それぞれ新規上場企業全体の35.8%及び31.3%を占め、他の業種社数との開きが昨年同様に見られます(表2)。
表2 2022年(1月~9月)の業種別新規上場企業数
本社所在地別では、全体の64.2%にあたる43社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です(表3)。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。
表3 2022年(1月~9月)の地域別新規上場企業数
赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)数はマザーズもしくはグロースに上場した11社、TOKYO PRO Marketに上場した2社あり、またTOKYO PRO Marketを除いた新規上場企業においては、初値が公募価格を下回った会社は12社ありました。
直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が12社(18%)、10億円以上50億円未満の企業が33社(49%)であり、全体の約2/3以上を売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています(図1)。売上高が200億円を超える新規上場企業は、東証1部1社、東証2部もしくはスタンダード2社、グロース1社の合計4社にとどまっています。
初値時価総額の分布を見ると、50億円未満の企業が27社(40%)、50億円以上100億円未満の企業が21社(31%)であり、全体の3分の2程度を占めています。500億円を超えた企業は1社(2%)あり、昨年同期(9社、10%)と比較して大幅に減少しています(図2)。なお、初値時価総額が最も高かったのは、ANYCOLOR株式会社の1,442億円でした。マザーズ市場とジャスダック市場及びグロース市場の平均初値時価総額は138億円と、前年同期の242億円と比較して大幅に減少しました。
図1 2022年(1月~9月) 新規上場企業・直前期売上高/ 図2 2022年(1月~9月) 新規上場企業・初値時価総額
監査法人別では、有限責任監査法人トーマツ13社(19.4%)、EY新日本有限責任監査法人12社(17.9%)、有限責任あずざ監査法人が6社(9.0%)となり3法人合計で50%に届かない一方で、中小規模等のその他の監査法人の割合が増加しており、新規上場において担う役割が大きくなってきていることがうかがえます(表4)。