15 分 2021年4月7日

            大波のチューブに乗るサーファー

ジェネラルカウンセル(最高法務責任者)が直面する喫緊の課題︓障壁をビジネスの⼟台に変える⽅法とは

執筆者 Cornelius Grossmann

EY Global Law Leader

Global Law Leader. Passionate about integrity and diversity. Father of five. Fond of classical music.

EY Japanの窓口

EY Japan Law リーダー EY弁護士法人 マネージング・パートナー

外資系ローファーム経験後、EY弁護士法人の日本代表に就任。専門はクロスボーダーのM&A・提携・再編。

15 分 2021年4月7日
関連トピック Law(法務) 税務

2021 EY Law Surveyでは、ビジネスの優先事項を達成する上で妨げとなる障壁が明らかになりました。鍵を握るのは、現在の取り組みの見直しです。

要点

  • 法務部門はビジネスの優先事項と連携して対処できるよう、運営モデルの変革に取り組んでいる。
  • 戦略に沿ってさまざまな取り組みを展開し、その効果を高めることで、法務部門の前進を妨げる障壁を克服することができる。

EY LawとHarvard Law School Center on the Legal Profession(ハーバード大学法科大学院センター・オン・ザ・リーガル・プロフェッション)は、法務部⾨が現在直⾯している機会と課題について理解を深めるため、2000名以上のビジネスリーダーを対象に、2021年の1月に聞き取り調査を実施しました。

Local Perspective IconEY Japanの視点

今回の調査には約50社の日本企業も参加しています。「業務量は増えているが予算は増えていない」「適切なリーガルテックを選択し実装するための知見がない」「契約管理・子会社管理がシステマチックに行われていない」など、日本企業の法務部門が抱える課題の多くが海外企業の課題と共通であることが明らかになりました。法務分野では、「外部弁護士への委託と内製化を組み合わせる」という従来型の業務手法に新たな選択肢が加わりつつあります。これらを活用することで、日本企業の法務部門は、高度なリーガル・リスク・マネジメントを実践しつつ、事業部門に寄り添ってビジネス推進に貢献することが、企業の競争力強化において重要な役割を担うと考えています。

EY Japan の窓口

木内 潤三郎
EY Japan Law リーダー EY弁護士法人 マネージング・パートナー
  • 2021年 EY Law Surveyの調査⽅法

    本調査は、世界22カ国にわたる17業種の2000名を超えるビジネスリーダーから得られた回答に基づいています。約50社の日本企業も含まれています。

    本調査では、1000名の法務部門リーダーからの聞き取りに加えて、調達、営業契約、事業開発、法人組織管理のチームのリーダーからの聞き取りを行いました。また、これと並行して、EYによる別個のより広範な調査であるThe CEO Imperativeにおいて、CEOに2021年とその先のビジネス目標について意識調査を行いました。

    3つのレポートの第1弾となる本レポートでは、これらを合わせた本調査の結果に基づいて、法務機能の拡大、法務機能が果たすべき全社的な役割と、大規模組織において法務機能がどのように認知されるかについて、あらゆる角度から考察します。

「聞き取り調査で得られたフィードバックによると、法務部門、調達部門、営業契約部⾨は、取締役会、CEO、CFOからの強まる圧⼒の下で異なる運営を求められています」とEY Global Legal Managed Services LeaderのJohn Knoxは述べています。「コスト管理が引き続き優先事項の1つとなっていますが、これだけが目標ではありません。成長を実現すること、より迅速な契約締結を提供すること、より適切なデータを供給すること、リスクマネジメントを変革することも、多くのビジネスリーダーにとっての重要な戦略的優先事項です。法務部門、調達部門、営業契約部門は、これらを達成するための運営モデルの最適化を確実に行わなければなりません」

CEOの優先事項を達成するため、法務部⾨はビジネス全体の戦略と連携すべく、引き続き変化を受け⼊れ、機敏性を⾼めていかなければなりません。戦略的な法務部⾨は、テクノロジーを通じてコストを管理するとともに、ビジネスの成長を直接的に実現するための包括的かつ透明性の⾼いリスク管理のアプローチを⽬指して大胆な取り組みに着⼿しつつあります。中でも最も⾰新的な取り組みは、ポートフォリオアプローチを利用すること、すなわち、外部の法律事務所の管理、内製の最適化、テクノロジー、コソーシングの各戦略を組み合わせることです。本調査は、景気回復とその先の局面におけるビジネス⽬標の達成をより適切に⽀援するために利用可能な土台を法務部門に提供することを狙いとしています。

コスト管理が引き続き優先事項の1つとなっていますが、これだけが目標ではありません

CEOの優先事項とその法務部⾨への影響

法務部門とその他のビジネス部門はそれぞれ独自の優先事項を持っていますが、これらの部門がより幅広い全社のニーズを支えるためには、縦割りで運営してはならないことは広く認められています。2021年 CEO Imperative Studyの一環として実施された調査では、さまざまなトピックにわたるCEOの優先事項を掘り下げて検討しています。ビジネス戦略との連携の強化を重要な目標の1つに掲げた法務部門リーダーにおいては、これらの優先事項の多くが特に大きな影響力を持つと思われます。

優先事項1:リスクマネジメントの変革
データ主導型のリスクマネジメントのアプローチを積極的に採用したいというCEOの意欲は、突き詰めれば透明性の向上への意欲です
Heidi Stenberg
EY Americas Legal Function Consulting Leader

CEOは今後3年間に最も大きな変革の実施を見込む分野としてリスクマネジメントを挙げており、半数近くが戦略的な存続に関わるリスクにより重点を置きたいと述べています。ここには重要なリスクをより厳密に管理したいという意欲が見られます。世界経済と多くの企業が2020年に直面した課題を踏まえると、これは健全な姿勢であるように思われます。

しかしながら、ジェネラルカウンセルからの回答によると、リスクマネジメントを巡る状況は複雑です。良い点は、複雑なリスクを法務部門が管理する能力に対して、多くのジェネラルカウンセルが一定の自信を示していることです(下図を参照)。例えば、新たなプライバシーおよびデータ処分ルールの管理に対しては、83%が一定の自信を示しました。

しかし、多くの分野において、複雑なリスクを法務部門が管理する能力に対して「強い自信を持っている」と回答したジェネラルカウンセルはごくわずかでした。この状況は、リスク管理を巡るCEOの2番目の優先事項を考慮することで説明できるかもしれません。

リスクマネジメントの変革が優先事項の1つであると述べたCEOの61%が、自社組織においてデータ主導型のアプローチを積極的に採用することを望んでいました。ここには、より適切なリスクの識別、定量化、管理のために使用可能なデータや情報へのアクセスを拡大したいという意欲が見られます。

しかしながら、法務部門とビジネスリーダーの回答によると、この分野においてなすべきことはまだ多くあります。例えば、ジェネラルカウンセルの68%が、自社グループの各子会社に関する最新の正確な情報を持っていないと述べています。このように透明性が不足している場合、自社グループが直面する税務リスクやコーポレート・ガバナンス・リスクについて、法務部門は報告する能力を十分に発揮できません。

また、ほぼ同じ割合の65%が、データ漏えいに効果的に対応するために必要とされる全てのデータやテクノロジーを持っておらず、コンプライアンスとデータプライバシーに関するリスクが高まっていると回答しています。

さらに、法務部門とビジネスリーダーの回答によると、プロセス管理におけるギャップとテクノロジーの利用が不十分であるため、リスクに関する組織の可視性が制限を受けています。企業の69%が自社の契約作成プロセスは標準化されていないと回答し、71%が自社の契約は標準条件からの逸脱に関してモニタリングを受けていないと述べ、78%が契約上の義務は体系的に追跡されていないと答えています。このようなプロセス管理とテクノロジーを使ったモニタリングの不足により幅広いリスクが発生し、これは企業のサプライチェーンや顧客との関係を通じて波及します。

EY Americas Legal Function Consulting LeaderであるHeidi Stenbergは次のような見解を述べています。「データ主導型のリスクマネジメントのアプローチを積極的に採用したいというCEOの意欲は、突き詰めれば透明性の向上への意欲です。CEOは自社組織が直面するリスクをより詳細なレベルで理解したいと望んでいます。法務部門リーダーは、この要求に応えることを最優先事項とする必要があります」

優先事項2:法務部門のコスト構造の再評価

効率性の向上の必要性は新しいものではありませんが、昨年生じた経済的な課題により、この必要性に対して焦点が明確に絞られました。CEOの53%が今後12カ月間に大幅なコスト削減策の導入を予定していると回答しており、これに際して法務部門が一定の役割を担うことになるのは明らかです。

実際に、ジェネラルカウンセルの88%が今後3年間にわたって法務機能の全体的なコストの削減を計画していると回答しました。その理由としては、CEOと取締役会からの圧力が1位に挙げられました。

目標コスト削減率の平均

18%

大企業の場合

14%

中小企業の場合

特に大規模組織(年間収益200億ドル超)における今後3年間の目標コスト削減率の平均は18%です。これは2019年EYReimagining the Legal Function Reportで明らかになった大企業の目標削減率である11%と比べて大幅に拡大しています。実際には、現在の法務部門の半数強が20%以上の削減率を目標としています。

法務部門が現在支出している金額の5分の1に相当するコスト削減を計画する場合、部門の運営方法の大幅な変革が必要になります。特に、多くのエコノミストが予想する今後12カ月間から24カ月間にわたる経済の「K字型」回復を踏まえると、この必要性は現実的です。この期間に著しい成長を見せると予想される業界がある一方で、一部の業界は向かい風にさらされる可能性があり、後者の業界では法務部門がリスクを管理しつつ成長を後押しすることがより強く要求されるでしょう。

優先事項3:プロセスのデジタル化

現在進行中のビジネスの変革においてテクノロジーが果たす役割の重要性については議論の余地がなく、CEOの優先事項にも反映されています。ビジネスモデルの変更を計画しているCEOの間では、デジタル化が優先事項の1位に挙げられています。61%はデータやテクノロジーへの多額の投資を見込んでいます。

ジェネラルカウンセルも、テクノロジーの利用の拡大により、法務部門に対して、ひいては組織における法務部門の評判に対して著しいメリットが生じる可能性があると考えています。ジェネラルカウンセルの59%はテクノロジーによりコスト削減の大きな潜在力または極めて大きな潜在力がもたらされると考えており、その他の機会を大きく引き離しています(下図を参照)。

ただし、法務およびリスクマネジメントのプロセスのデジタル化はまだ完了していないようです。例えば、過去12カ月間にテクノロジーの利用が拡大したと述べている法務部門は50%にとどまっています1。また、法務部門の約3分の1が、依然として業務のために必要なテクノロジーを持っていないと述べています2

同様の課題はその他の分野でも見られます。企業の94%は自社グループの子会社管理システムに関して課題に直面していると回答しています。契約締結においては、ほぼ全て(99%)の企業がプロセスの最適化のために必要なデータやテクノロジーを持っていないと回答しています。これらは重大な弱点です。

法務部門が新たなテクノロジーの導入に苦心していることには多くの理由がありますが、そのうちの1つは、CEOがこの分野を重視しているという事実を踏まえると、特に興味深く思われます。ジェネラルカウンセルの97%は法務テクノロジーへの投資の予算を確保するにあたってさまざまな課題に直面していると述べましたが、このような課題の1位に挙げられたのは、経営幹部が法務とリスクマネジメントへの投資を優先していないことでした。

EY EMEIA Legal Function Consulting LeaderであるRob Dinningは、次のような見解を述べています。「法務テクノロジーへの投資によって効率性が向上し、サービスが改善され、より高度なリスク管理が実現します。この点をCEOと取締役会に納得させることを、法務部門の最優先事項とする必要があるのは明らかです。説得の際にはデータに裏付けられた投資事例が必要ですが、これは多くの法務機能にとって難易度の高い分野であり、ここではリーガルオペレーションのスキルセットが大きな付加価値を生み出します」

優先事項4:ビジネスの成長の実現

世界経済が現在直面している課題を考慮すると、CEOが自社組織の成長の見通しについて懸念していることは驚くにあたりません。実際に、CEOの66%が今年の自社ビジネスの成長を見込んでいないと述べています。より懸念されるのは、2021年の成長が2020年を上回ると考えていると述べたCEOがわずか19%にとどまったことでした。

これらの予想を踏まえると、収益の創出要因を支え、成長を促進し、ビジネスのより幅広い戦略を実現するために、組織のそれぞれの部分を最適化することが不可欠です。EYの調査では、法務部門と契約部門がこの分野を優先する必要があることが明らかになっています。

事業開発リーダーの90%が、契約締結に関連する問題を巡る調達チーム、法務チーム、営業チームとの連携において課題に直面していると回答しており、57%は契約締結プロセスが非効率的であるために収益の計上が遅れていると述べています。

プロセスの⾮効率性

57%

の事業開発リーダーが、契約締結プロセスの非効率性が原因で収益の計上が遅れていると回答している。

鍵となるのは、それぞれのアプローチの長所と短所を見極め、最大の機会を提供してくれる場所を選んで展開し、全ての戦略の最も効果的なバランスを見つけることです。

さらに懸念されることに、事業開発リーダーの半数はこうした非効率性が取引の喪失につながったことがあると回答しました。現在の経済環境において、あらゆる収益の喪失は重大な懸念材料です。

ジェネラルカウンセルはこれらの課題を認識しており、法務部門の日常的な業務がより幅広いビジネス戦略と連携しているとの回答は52%にとどまっています。法務部門はビジネスの付加価値を効果的に生み出しているとの回答も同じ割合となりました。

「成長の実現は、今後12カ月間にわたる決定的に重要な優先事項です」とJohn Knoxは述べています。「成長の機会を最大化するために、法務部門、調達部門、営業契約部門は確実に重要なリスクへの集中とプロセスの最適化を図る必要があります」

CEOの優先事項に対する法務部門リーダーの対応

法務部門リーダーと組織全体のビジネスリーダーは、2021年のCEOの優先事項に対応するために、新たな業務の在り方を受け入れる必要があります。実際に、法務部門の大部分(92%)がすでにさまざまなアプローチを使用して部門の運営方法を変更しつつあると回答しています。

法務部門の半数強(51%)は、具体的な問題に焦点を絞って開発された戦略的ソリューションを導入しつつあります。法務機能を再設計するためのプログラムを実施している法務部門も同じ割合に上ります。30%は、法務機能の各部分を管理するにあたり、外部の法律事務所やオルタナティブ・リーガル・サービス・プロバイダー(ALSP)とのコソーシングまたはアウトソーシング関係の構築を検討しています。

このことだけをもってしても、変革には万能の手段がないことが分かります。実際に、多くの組織は複数の戦略を並行して実行すること、すなわち外部の法律事務所の管理、インソーシング、プロセスやテクノロジーの最適化、コソーシング/アウトソーシングを組み合わせることを選択しています。しかし多くの場合、これらの間における調整、またはどの戦略をいつ使用するかについて、体系的な分析はほとんど行われていません。

外部の法律事務所の利用の最適化

多くの法務部門は、外部の弁護士を利用することにメリット(多大な法務の専門知識がもたらされることを含む)を見いだしています。しかし、一般にこれには多額のコストがかかり、法務部門の予算の大きな部分を占めています。現在のコスト削減環境を踏まえると、法務部門が外部の法律事務所の管理プログラムに目を向けていることは驚くにあたりません。この取り組みの鍵は、これを適切に支援し、全体的なバランスの取れたアプローチの一部として利用することです。

外部の法律事務所の管理プログラムには幅広い戦略が含まれる可能性がありますが、最も広く使用されている戦略は、弁護士報酬を管理すること(時間当たり料金の凍結など)、代替的な弁護士報酬の取り決めの利用を拡大すること、法律事務所との交渉によるより有利な弁護士報酬の獲得に注力することにつながっています。ジェネラルカウンセルの59%は、より有利な弁護士報酬の交渉への注力によって一定のコスト削減の機会が生まれると考えています。

その他のアプローチとしては、外部の法律事務所に関するガイドラインを通じて外部の法律事務所をより厳密に管理すること、法律事務所やALSPの数を削減することによる支出の集約などがあります。ジェネラルカウンセルの72%は、法律事務所数の削減によってコスト削減が達成できると考えています。

しかし同時に、これらの戦略が大幅なコスト削減をもたらすと考えるジェネラルカウンセルは少数派にとどまっています。その理由は、外部の法律事務所の管理プログラムを巡る法務部門の課題から明らかになりました。ジェネラルカウンセルの83%は管理すべき法律事務所数が多過ぎると述べており、81%は既存の法律事務所を効果的に管理するためのリソースを持っていません。また、ジェネラルカウンセルの79%は自社のガイドラインに詳細な規定が欠けていると述べており、85%は法律事務所が自社のガイドラインに従っていないと回答しています。

外部の法律事務所数の削減は、運営の簡素化につながります

さらに、上記の戦略は一定のコスト削減を約束してくれるものの、リスクマネジメントの再検討、デジタル化の促進、ビジネスイネーブルメントの取り組みの拡大に関連した法務部門のその他の優先事項を達成するためには、これらの戦略が役立つ可能性は低いと思われます。

Stenbergは次のような見解を述べています。「外部の法律事務所の利用の最適化により、削減したコストを他の分野に振り替える機会が法務部門に生まれます。また、法律事務所数の削減は運営の簡素化につながります。この成果は両方とも法務部門にとって前向きなステップであり、その他の変革の取り組みを確実に成功に導いてくれます」

効果的な内製化の課題

内製化は過去10年間のリーガルマーケットにおいて特に活発に議論されてきたトレンドの1つです。業務を内部に移転させることで、外部の法律事務所への支出を削減することができます。また、より強力なマネジメントやビジネスとのさらなる統合の潜在力がもたらされます。しかし、多くの法務部門において、内製化は同時に課題も生み出しています。

社内への業務の移転がもたらす結果として最も明らかな点は、業務量の増加です。ジェネラルカウンセルは今後3年間に業務量が25%増加すると予想していますが、同じ期間に予想される人員数の増加はわずか3%です。この乖離から、法務部門の76%が現在の業務量への対処は難しい課題であると述べている理由が分かります。

もう1つの課題は、低付加価値とみなされる業務の増加です。法務部門リーダーは、社内弁護士の時間数の5分の1が低付加価値、反復的またはルーティンの職務に費やされていると回答しており、87%は法務部門がこれらの職務に費やす時間が長過ぎると主張しています。

その結果として、47%が低付加価値の業務の増加によって従業員の士気が悪影響を受けていると回答しています。法務部門における人材の維持と開発の重要性を踏まえると、こうした数値は重大な懸念材料となります。

また、法務部門が職務を社内に移転させ、人員数を追加してきたことで、部門の複雑性は増大しました。これにより、コスト管理に直接関連しないCEOの優先事項に対する取り組みは複雑化しています。リスクマネジメントの再検討とビジネスイネーブルメントに関するCEOの優先事項への対応にあたり、内製化は一定のメリットをもたらすものの、複雑性が増大することでこれらの目標に対してマイナスに働く可能性があります。

内製化が全体として良い戦略であったかどうかについては、法務部門リーダーの間で意見が分かれています。78%は内製化がコスト削減の機会をもたらすと考えており、今後3年間に人員数を大幅に増やすことを意図しているリーダーはごくわずかです。この課題に対処するために、法務部門リーダーは、法務部門の運営モデルの最適化に役立つテクノロジーやプロセスの改善に目を向ける必要があります。

業務量への対処

76%

の法務部門が、現在の業務量への対処は難しい課題であると回答している。

業務量の増加

75%

が、業務量の増加により予算超過になると回答している。

デジタル化および内部プロセスの最適化

法務部門の変革において、テクノロジーが果たすべき役割を軽視することはできません。「テクノロジーは、コスト削減を提供し、コンプライアンスを強化し、法務機能のリスクを低減できるだけではありません」と、EY Global Law LeaderであるCornelius Grossmannは述べています。「テクノロジーは、データ主導型のリスクマネジメントとビジネスイネーブルメントの改善に向けたCEOの優先事項の達成にも役立ちます」

多くの法務部門リーダーは、この分野において、新たなテクノロジーの導入、プロセスの自動化と標準化、ベストプラクティスに関するトレーニングの提供、業務フローの再設計などのさまざまな戦略を展開しています。しかし、これらの戦略の多くは全面的には使用されていないか、またはより幅広い変革の取り組みの一部として使用されていません。

実際に利用されているテクノロジーにおいても、同様の傾向が見られます。例えば、契約締結において、リーダーは幅広いテクノロジーを利用していると回答しています(下図を参照)。しかし、これらのテクノロジーを全面的に利用しているリーダーは少数派にとどまっています。

法務部門と契約部門がより幅広いプロセス改善戦略の導入をためらっている理由の1つに、これらの部門がさまざまな課題に直面していることがあります。例えば、90%が全てのユーザーをサポートするプロセスを識別することの難しさを指摘しており、77%が新たなプロセスの適用に苦心していると回答しています。

また法務部門は、テクノロジーの選定に過度な時間が費やされている、導入に時間がかかり過ぎる、所属する弁護士が導入されたテクノロジーを全面的には活用できていないと回答しています。

法務部門のデジタル化とプロセスの最適化の難しさの根底にあるのは、より幅広い課題、すなわちスキルの不足です。法務部門の83%がプロセスの自動化のために必要とされるスキルが不足していると回答し、41%が法務テクノロジーへの投資に関するケースを策定するためのデータまたは専門知識が不足していると回答しています。

デジタル化とプロセスの改善が法務部門の運営を変革する力を持っていることは広く認識されているものの、その導入においては明らかに障害(全般的な投資不足、スキルの不足、最も効果的なソリューションを識別することの難しさなど)が存在しています。従って法務部門は、テクノロジーとプロセス改善に向けて目標の最適な達成方法(それが社内であろうと、外部のプロバイダーを通じてであろうと)を検討する必要があります。

最も効果的なソーシング戦略の選定

以上の議論の内容から、外部の法律事務所の利用、内製化、テクノロジーの導入にそれぞれメリットとデメリットがあることは明らかです。そこで、多くの法務部⾨にとって、⾃部⾨の強みを⽣かし、対処できない場合により幅広いソリューションに⽬を向ける方法が合理的となります。

このようなソリューションには、自動化されたセルフサービスなどのオプション、ALSPの利用、コソーシング、国内外のCoE(センター・オブ・エクセレンス)の利用などが考えられます。

これらの各サービスの提供手法により、法務機能の最適化と自社組織への価値提供の最大化を目指すジェネラルカウンセルに、機会と課題が生じます。

ソーシング戦略の再検討は、コスト管理にとどまらないメリットをもたらします。新たなサービス提供手法の利用により、ビジネスイネーブルメントを改善し、リスク管理を強化することができます
Rob Dinning
EY EMEIA Legal Function Consulting Leader

セルフサービス戦略では、標準化されたリソースや自動化されたプロセスを利用することによって、要求された業務を依頼者個人が自ら完成させることが可能になり、内部または外部のプロバイダーとの協力を通じて管理することができます。このアプローチでは、部門の業務量を削減するとともに、内部のステークホルダーが必要に応じて活用可能なオンデマンドのサービスを作り出すことができます。現在のところ、大規模組織においてセルフサービス化されている法務サービスはごくわずかです。契約締結の分野では広く利用されているものの、セルフサービス化された契約は現在16%にとどまっています。

また、センター・オブ・エクセレンス(またはシェアードサービスセンター)も利用が進んでいないようです。企業の73%が法務機能の支援のために利用していますが、全面的に利用している企業は9%にとどまっています。しかし、センター・オブ・エクセレンスの利用には多くのメリットがあります。最適化された場合には、従来の法律事務所や社内弁護士と比べて低いコストでサービスを提供することができます。これは、低コストの国内外の地域にセンターが設置されている場合に特に当てはまります。

一部の組織ではその他のビジネス部門やチームから運営上の支援を受けられるとはいえ、効果的なセンター・オブ・エクセレンスの設置を検討している法務部門は、高水準の効果的なサービス提供を実現するために短期的に必要とされる多大な時間の投資を過小評価すべきではありません。センター・オブ・エクセレンスの管理は煩雑になり得るため、一部の法務部門は外部のプロバイダーを利用して人員やトレーニングを管理するとともに、効率性の継続的な向上を確実にしています。

ALSPは、プロセス管理とテクノロジーの能力を提供します。これらのプロバイダーは、従来の弁護士、技術者、その他の法務専門家、国内外の人材を活用した高度な人材モデルを利用しています。

ALSPの利用には実際の需要があります。法務部門においてこれらのプロバイダーのサービスを利用していると回答したジェネラルカウンセルは85%に上り、2019年の72%から増加しています。ただし、利用の程度は法務部門やサービスの種類によって大きく異なります。一部の分野(規制調査や文書化支援など)ではこれらのプロバイダーの利用が主流となっています。その他の分野(子会社の管理など)ではこれらのプロバイダーの利用はさほど一般的ではありません(下図を参照)。

ジェネラルカウンセルからの回答結果によると、法務部門はALSPの利用の拡大に関心を示していると考えられます。ALSPを現時点で特に全面的に利用している法務部門では、利用を拡大したいと述べる確率が高いことは重要です。

「ソーシング戦略の再検討がもたらすメリットは、コスト管理にとどまりません」とDinningは述べています。「新たなサービス提供手法の利用により、ビジネスイネーブルメントを改善し、リスクマネジメントを強化することができます。例えば、セルフサービスの手法はサービス提供の迅速化に役立ちます」

「ALSPによるプロセス管理とテクノロジーの全面的な利用により、リスクをより詳細なレベルで管理することが可能になります。また、データへのアクセスとプロセスの透明性が向上します。これにより、企業はリスクを新たな方法で識別・測定・管理できるようになります」

結論

2021年のCEOの優先事項が示すところによると、法務部門は、予見可能な未来を見据えた異なる考え方と行動を求める強い圧力にさらされると思われます。コスト管理がアジェンダに含まれることは間違いありませんが、CEOにとって最も重要なのは、組織における法務機能の価値の最大化であると考えられます。

今後18カ月間から24カ月間に世界経済が回復するにつれて、成長の実現とより幅広いビジネスイネーブルメントが極めて重要になるでしょう。また、企業が新たな現実に適応し、未来の困難から自社を守ることができるよう、リスクマネジメントの変革を支援することも極めて重要な事項です。

法務部門、調達部門、営業契約部門、その他の部門におけるリーダーからの調査結果によると、多くの法務機能においてすでに変革が進行中です。それらの部門の各部分を最適化するための高度な戦略を、すでに多くが採用しています。この取り組みを拡大し、その有効性を最大化することが、2021年とその先の未来における法務部門リーダーの主たる課題になると思われます。

こうした分野において法務部門が成功を収めることができるかは、最終的に、全体的なビジネス戦略との連携、リスクマネジメントの変革における成功、組織の成長の支援における成功が実現されるかによって判断されることになるでしょう。

現地の法規制により許可されている場合を除き、EYのメンバーファームは法律実務を行いません。

サマリー

ジェネラルカウンセルは、法務部⾨のあらゆる部分を最適化するために継続して取り組んでいます。今後数年間は、⾰新的なアプローチを⾒いだし、その有効性を最⼤化することが最重要課題となるでしょう。

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執筆者 Cornelius Grossmann

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Global Law Leader. Passionate about integrity and diversity. Father of five. Fond of classical music.

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