- 要因3:ライフサイエンスセクターでは、細胞・遺伝子治療、mRNA、デジタル技術、データ分析の進歩など、イノベーションのルネサンスが進行しています。これにより、企業が将来の成長をもたらす製品を開発できる可能性が生まれています。
- 要因4:2021年から2022年にかけての市場調整に続いて「買い手市場」が進行する中、同セクターにおける評価額の低下が買収へのインセンティブを高めるとみられます。
- 要因5:IPOやSPACによる資金調達がさらに難しくなり、中小企業の選択肢が狭まるため、小規模のライフサイエンス企業についても公開市場の利用可能性が低下しています。資金を調達する必要のある中小企業がM&Aを選択する傾向が高まると考えられます。
さらに、ライフサイエンス企業は、セクター外の買収企業との競争を迫られる可能性があります。行動を起こさなければ成長機会を失うかもしれません。例えば、プライベートエクイティファンド(PE)も利用可能なファイヤーパワーを保有しています。医薬品開発などの研究開発分野への資金提供において、PEが伝統的なライフサイエンス企業の地位を脅かす可能性を示唆するアナリストもいます。
M&Aを成功させるために
最も効果的なM&A戦略を特定して実行する方法について、企業は真剣に、かつ戦略的に検討しなければなりません。M&Aから得られる価値を最大限に高めるにあたり、以下の3点が主に企業の取り得る方策といえるでしょう。
- ディールのリスクを可能な限り低減するよう努める。
- 過去の成功事例を分析する。
- 新たに取得した事業の統合に向けて、適切なプロセスを準備する。
M&Aを成功に導くのは、効率的に費用対効果の高い方法で取引を完結させることだけではありません。企業と人員の迅速かつ効果的な統合を達成できる、適切なチームとプロセスの導入が不可欠です。企業がM&Aを成功させるためには、一般的に以下の5段階の計画を実行するべきです。
- プロセス全体の整合性確保のため、ディールの価値推進要因と指針となる原則を明確に特定し、定義する。
- M&Aのプロセスの各段階を通じて自社を導くエンド・ツー・エンドの計画を確立し、ガバナンスと統合のリーダーおよびチームがプロセスの各段階に責任を負う。
- M&Aの実行前に、企業間の文化的コラボレーションの実現と、統合と独立性について適切な水準を特定することに注力する。完全な統合が適する買収もあれば、可能な限り独自の研究文化を維持することにより付加価値が増大する買収もある。
- 進捗状況の管理、ワークフローの監視、シナジー効果の特定と実現のため、ツールとテクノロジーを最大限に活用する。
- 共通の目的とビジョンへの賛同を得て組織連携の拡大を支援し、従業員の不安と意欲低下に起因するリスクを軽減するために、チェンジマネジメントとコミュニケーションに重点的に取り組む。
ライフサイエンス業界には、大きなトランスフォーメーションにつながるM&Aの波を2023年に再び起こすためのリソース、インセンティブ、機会が存在しています。しかし、適切なターゲットを特定し、獲得することは最初のステップに過ぎないという事実を忘れてはなりません。企業が望む長期的な成果を得るためには、M&Aのプロセス全体を最適化する必要があります。