EYは、世界13ヵ国9,000名以上の消費者を対象に、通勤・日常生活・旅行における移動に関する意識や車の消費者購買動向の変化に関する調査「EY Mobility Consumer Index (MCI) Wave 2」を実施、電気自動車(EV)の販売台数は今後12カ月間で急増する可能性があることが明らかになりました。
本調査結果によると、一年後に車の購入を検討している回答者の10人中4人以上(41%)がEVの購入を予定しており、2020年11月発表のMCI より11ポイント高くなりました。すでにEVを所有している回答者も10人中8人近く(77%)が次も再びEVの購入を検討すると回答しています。概して、本調査に参加した消費者の50%が車(EVまたは内燃機関車)の購入を検討しており、昨年11月比17ポイントの増加となりました。そのうち65%は今後12カ月以内に車の購入を予定しています。
EVの購入理由として最も多かったのは、「環境への配慮」です。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大をきっかけに環境問題に対する意識と関心が高まったと78%が回答しています。EV購入意向者の53%は、個人の生活がもたらす環境負荷を軽減することは一人ひとりの責任であると感じており、54%がEVの購入がその責任を果たす方法のひとつであると考えています。
コスト面では、全体の66%がEVの価格プレミアムの支払いを厭わないと回答しています。次の買い換え時にEVの購入を検討している消費者に限ると、その割合は91%に上りました。一方、EVの購入を検討していない消費者においては、「車の保有コスト」が購入障壁のトップ(50%)になっています。
EY Global Advanced Manufacturing & MobilityリーダーであるRandall Millerは、次のように述べています。
「自動車業界は今まさに転換期にあると思います。EY独自の予測モデリングツール『EY Mobility Lens Forecaster』を用いた試算によると、早ければ2033年にはEVが世界の自動車市場の覇権を握ると予想されます。こうした最新の予測は驚くことではありません。COVID-19のパンデミックの影響による混乱の一年を経た今、自動車販売は世界的に回復傾向にあり、EVの需要も急拡大しています。ここで注目すべき点は、EV購入意向のある消費者の多数が、『環境への配慮』あるいは『長期的には割安になる』という考えから、価格プレミアムを支払うことを厭わないということです。こうした意識の根本的な変化は、最終的には消費者と社会環境双方にとって有益です」
充電網の拡充
EV市場が急成長する一方、充電インフラ拡充の見通しは依然不透明です。こうした状況は今回の調査でも消費者が感じる不安要素として表れ、「充電インフラに対する懸念」はEV購入を検討しない理由の上位3件(32%)に入っています。また、安心してEVの購入に踏み切るほど十分には充電スタンドが整備されていないと感じる回答者は、全体の47%を占めています。
EVの見込み購入者も同様の懸念を抱いており、38%が利用可能な充電スタンドが充実していないと感じています。そして、EVをすでに所有している回答者は充電インフラに関する主な懸念材料として、充電場所(84%)と充電時間(78%)を指摘しています。
Millerはまた、次のように述べています。
「『それを作れば、彼らはきっとやってくる』とよく言いますが、EV購入意向者はすでに増加傾向にあります。電力会社、政府、インフラ整備事業者も充電網整備の遅れを取り戻そうとしています。自動車メーカーにとってもこうした取り組みの一翼を担うことは有益でしょう。EVの普及には、地域社会のさまざまな場所やガソリンスタンドで主要インフラを提供できるEV環境を整備する必要があります。また、一般家庭に充電設備を設置してEV用バッテリーの充電・利用を可能にする革新的なサービスを提供することも不可欠です。EVの利用に欠かせない諸々の設備が整備されず消費者の要求を満たすことができない場合、EVの普及は進まず、状況を大きく後退させてしまうことになりかねません」
マイカー需要の巻き返し
今回のMCI調査によると、ヒトの全般的な移動量はパンデミック以前より5%減少すると予測されます。移動手段に関しては、公共交通機関での移動に対する忌避意識が最も高く(前回調査比11%減)、マイカーの利用を好む傾向が見られます。すでに車を所有している回答者と車の購入を検討している回答者の大多数が、私有車日常的に利用できることが重要(56%)であり、マイカーこそ安全と安心を担保する最高の移動手段である(52%)と感じています。
さらに、本調査結果によると、仕事関連以外の移動については、パンデミック以前の水準に回復すると予測されますが、仕事に関する移動は14%減少する見込みであり、リモート勤務の浸透が進んでいることが窺えます。
EY Japan Consulting Advanced Manufacturing & Mobilityリーダーである早瀬慶は、次のように述べています。
「新型コロナウイルス感染症(Covid-19)をきっかけとした「環境への配慮」への意識と関心の高まりは、EV購入のきっかけの1つになりますが、日本ではインフラ整備の遅れ、TCOや乗り心地等の訴求不足などにより、各国と比較して進展していません。HEVやFCV等のパワートレインや商用車との組み合わせで、消費者や事業者また社会にとっての最適解を追求することが求められます」